第28話 苦く甘いまどろみの中で2
ただいま午前0時、ノルくんも寝たし女だけの時間である。
「いただだだだだ!痛い痛い痛い!もうしませんもうしませんもうしません!!ノルさんに抱きついたりしません!」
シズルちゃんが頭を押さえて床をゴロゴロ転がりながら左右に往復している。
私は痛覚オフってるから大丈夫なんだけどね。
「ハァハァハァハァ……死ぬかと思った」
ノルくんに抱きついてしまった故に、お仕置きタイムなのだ。
「でもアレ、シズルじゃないでしょ?中にいるその子と話がしたい。エーテル通信は遮断されたみたいだし。」
別綾子が私を指名する。
でも、あれはシズルちゃんが抱きついて、私がエスカレートさせたんだけどね。
『綾子、どうする?』
『う〜ん、私は構わないよ。さすがにやらかし過ぎたかも……アーニアの方は半泣きでムスっとしちゃってるし、説明した方がいいかも。』
『じゃあよろしくお願いします!』
私が表層に出た。
「雰囲気変わったね。」
「まあ、シズルちゃんと私、キャラ違うしね」
「やっぱり、貴女は…ワタシ?」
「別綾子、そうだよ私は貴女達と同様に篠村綾子。」
別綾子はやっぱり、みたいな顔をして、アーニアはぽかーんとしている。口をあけてボケ〜っとしてたら、だらしないぞ?私のアーニア像が崩れたぞ?別綾子の方がアーニアしてるぞ?
「まあ、別綾子って呼ばれてるけど私もアーニアだから」
別綾子に心を読まれた?顔に書いてたのかな?
「なんのこと!?」
アーニアは困惑している。
別綾子にアーニア、途中からアヤとツムギちゃんって人が加わり私はこの世界にくるまでの経緯を説明した。
みんな、なんとも言えない顔をしてる。
「そっか、枝の消滅とかあるんだね」
「ツラかったねワタシ……そりゃノルくんに抱きついちゃうわな……でももう抱きついちゃダメだよ?」
ワタシ達2人は同情してくれた。
「まあでもアヤネって詐欺師に騙されたおかげでここにいるってのは幸いかも?こっちはこっちでエルフ殲滅してたら消し炭にされそうになったけどハハハ」
「だから想定より数少なかったのか〜。ごめんね。あのワタシがあんな弩級な殲滅攻撃すると思わなかったわ」
あれはオーバーキルだね。
無言で聞いていたアヤが近づいてきた。
「エルフの綾子、ほら疲れたでしょ?横になりなさい?」
「え?アヤ?どうしたの?」
アヤの膝枕である。そんな子供じゃないし……あれ?気持ちいい〜!なんで?まるでママに膝枕してもらってるみたい!懐かしい〜!!
私は、ものの数秒で寝てしまった。
◇
『綾子、おはよう』
「シズルちゃんおはよ」
ひさびさにふかふかのベッドで寝た。
朝、起きると朝食がある。食堂なのだけど。
食堂のごはんおいしくてついつい色々頼んじゃったよ。別に大食いってわけじゃないんだけどね。
はあ、これからどう生きていこうか…。
別に平和な世界だし、ひとまずは仕事でもする?
ん〜どうしよ。
「そいえば身体、私が動かしてるけどいいの?」
『この身体は綾子のだからねえ、私はハイエルフの空の身体のツテがあるからそっちにするよ。だから少しの間だけ居候させてもらうね〜!』
「あ、いいの?それにアヤネを消してくれてありがとう、遅くなっちゃったけど」
『嫌いな子だったので消したまでですよ〜。えへへへどういたしまして。』
私はこの身体を貰えるみたい。
やったー!!耳が尖ってたり目が紅い程度は些細なことだ。
でもこの世界のノルくんにはアーニアいるしそこは諦めるしかないか。
見習い綾子について新しい世界に行くとか?そこのノルくんも見習い綾子がセットだし。
やはり、私は亡霊なのだ。どうしたらいいんだろう。
branch of originateまであと10年くらいみたいだし考えよう。
◇
次の日になっても結社見習いのワタシは目を覚まさない。
未だに猫耳である。
だから別綾子とアーニアに呼び出されたのである。
お仕事ですね!?働きますよ?
しかし、この見習いのワタシの部屋、凄いな!?ノルくん人形?がいっぱい!?デフォルメデザインのかわいいマスコット人形みたいな感じだけど。私も欲しいなあ。
「あれ?エルフなワタシも興味あるの?」
アーニアである。ジッと人形見てたからね。
「この人形は私が作ってるんだよ?欲しい?」
は?アーニアが作ってんの?かわいいな!私の知ってるアーニアは鬼教官みたいな人だったからなんか拍子抜けである。
もちろん、頷く。だって欲しいもん。
「わかってるね〜ワタシ!抱きマクラタイプを後で渡すね〜。」
やった〜!!
「綾子が目を覚まさないって聞いてきた!綾子大丈夫!?」
この声、レイちゃん!?
「大丈夫かニャー!?またカツ丼つくってニャー!」
ナッちゃんまで
「うわあ〜ん」
「「!??」」
「レイちゃ〜ん、ナッぢゃ〜ん、会いだがっだよ〜、うわあ〜ん。」
2人を抱き寄せてしまった。いや抱きついて泣いてしまったというか。
「ハイエルフ?だけど綾子?なのか?ハイエルフだけど魂核が、ある?」
「ぐすっ、うん話せば長いけど……あ、それよりも猫耳のワタシが起きないの」
「リナが良くなったと思ったら、次は綾子か」
「魂と精神体のつなぎ目になにかあるようなって別綾子がいってたけど、確かにゆらゆらなにかがあるかも?ただ表層からだと少し見えないから誰かが開けないと。」
「エルフの綾子、詳しいな――確かにゆらゆらなにかあるかも、別綾子わかる?」
「エルフのワタシと同じかな?誰かがあけないと誰かが。この世界のレイちゃんいたらそういうの得意なんだけど出払っちゃっててね。」
まあ、シズルちゃんか私が適任かな?
「シズルちゃん出来る?私より多分うまく出来るよね?」
『許可さえ貰えたら出来ますよ〜。ステップ1は精神体を少しめくって、魂との癒着部分の確認、ステップ2はそれが剥がせそうなら剥がす、または別の対処ですね〜。それを一瞬だけあの綾子に入って、戻ってを繰り返す。って感じかな〜。』
私もそんな感じで考えてた。
「みんな、それでいい?」
みんな頷く。
「じゃあシズルちゃん、おねがい。私はなにかあってもシズルちゃんがすぐも戻れる様に命綱役をするよ。」
命綱であり手綱でもあるけどね…。
『綾子、優しい……ラジャー!であります!それじゃあ早速』
猫耳のワタシがビクっと痙攣する。大丈夫?
『うわあああ〜!ダメです!綾子ひっぱって!』
シズルちゃんを引き戻した……シズルちゃんに異物はついてない、大丈夫だ。
「大丈夫?どうしたの?」
『ありがとう!精神体をひっぺがしたら何かいました!お前じゃないと言われて怖くて動けなかった。』
「対処方法はわかる?」
『いやあ、あれはなんだろう?綾子の様ななにか?私じゃお呼びじゃないみたいでダメみたいです。』
「それじゃあ私がいく……シズルちゃん、私が戻ってこれるように押さえてて」
『ガッテンです!』
私はこの猫耳のワタシに憑いてるなにかが何なのか、大雑把に予想がついている。なら、私じゃないとダメだろう。
篠村綾子をベースとした何かだろう。
シズルちゃんが見たものがダイレクトに伝わってきているのだ。
目的はわからないけど私に似た哀しい感情をしているのは伝わった。
加えて憎しみも折り重ねている。
『猫耳綾子のワタシに憑いてるアナタ、誰?』
『はあ、やっと来た……初めましてかな?同類さん?』
『ん?話がみえないや……貴女も篠村綾子なの?』
『ん〜そうだったのかもね〜。ま、貴女もお仲間なんでしょ?』
仲間?
『どういうこと?貴女も行くべき世界の枝まるごと消滅しちゃった感じ?』
『は!?消滅!?え……ツラくない?』
『ツラいよ、いまだって思い出して苦しいよ!でも、まだどう生きようって考えられる。いや、木の外側にいって永いこと時間があったからかな?』
今の私、実質何歳なんだろ。
『え!?木の外』
『なにそれ!?』
『え!そんなワタシ、いままでいた?』
ザワザワと人数が増えた感覚だ…。
1人じゃないのか……だから『仲間』か。4人か
『はあ、で?貴女達は?どんな哀しいことが……――』
一応、聞いておこう。こういうのはお話を聞いてあげるのがいいのだ。無闇に貶すと癇癪をおこして理不尽に怒るからね…。
『私は目の前でノルくんが死んじゃった……生きる意味を失くしちゃって』
『私は惑星が滅亡しちゃった。私だけを残してだから私も……――』
『私はノルくんがノルくんが……うわ〜ん』
『…』
そっか、このワタシ達もツラい経験しているのか。程度に差なんて意味はないし比べることなんて出来ない。一人だけ無口だな。
『そっかー、貴女達もツラかったんだね』
『そうそう、だから、貴女も私達とこの身体の綾子についていこうよ。あ、でも貴女は身体があるんだね、エルフだけど。』
あ〜、なるほどね〜。妙案だね!
でも……
『いい話だけど……、貴女達のせいでこのワタシ、目を覚まさないんだけど?』
『え!?マジ?』
『マジだよ』
『でも、魂核と精神体の間のここに潜伏しないと、融合しちゃうじゃん?自我消えちゃわない?』
あ、こいつら詳しくねえな。同じ篠村綾子だから同化、いわゆる融合はありえるけどね。でもやり方次第なんだよなあ。
『というかどうやって貴女達来たの?』
『あ〜私自身が死んで……、気がついたら、私に似てる人が現れてさ。日本でひきこもってて出遅れた篠村綾子がいるからそこにいなさいって無理やり入れられた。私は別にそんなこと望んでもなかったんだけどさ』
ちょっ!!それ詐欺師?ともまた手口は違うけど自称女神のなんかっぽくね?
『それまでジッとしてたの?』
『いや、ママがいやこの身体のワタシのママがなんかして……それから意識がなかった。ここ2日くらいかな?気付いたのは。』
ママ?ママは霊媒師かなにか?
『ふ〜ん、じゃあまた意識を落とすか、消滅するかを選びなさい。この身体のワタシには未来がある…それを奪うことも邪魔もしちゃいけない。融合するにしても許可は必要だし。』
『それは……そうだね、でも、ノルくんにまた会いたい』
はあ、溜息が出るけどものすごく共感する。
仕方ないな〜。シズルちゃんには謝んないとなあ。
『まあそうだよね。私達のノルくんはいない!でもエルフになれば果たして私達は篠村綾子なのでしょうか?』
『まさか?』
『そう、まさかだよ。精神体に詳しい私で良かったねえ!みんなを融合しないようにしてあげるから、私の身体においでよ。』
どうする?とか話あいがはじまったけど、この身体のワタシには迷惑かけたくないというのは同じ様だ。まあ私達は亡霊ですからね。
とまあシズルちゃんにも説明して難民綾子ズの亡霊を受け入れることにした。シズルちゃんは問題ないみたい。
『シズルちゃん、いまからワタシ達を送るね。』
『アイアイサー!』
1人、2人、3人目、残りはあと1人。
『さあ、最後は貴女だね。』
『…』
『どうしたの?』
『嫌、私、この身体にいたい。』
『わがままいわないの、じゃあ融合するかどうかこの身体のワタシが起きてから確認するから。今は私の身体に退避して』
と、手をとり引っ張ろうとしたら…。
『嫌〜!!!!!!!』
うわ、弾きだされた!!
元の身体に戻った!今は私が表層か。
「猫耳のワタシは!?」
あ、起き上がった!!でも…
「あ、私、身体が手に入っちゃった!?」
あ、さっきの駄々こねてた方のワタシか。
あまり詳しくなさそうだけど勢いだけで乗っ取っちゃった感じかな?元々の身体の持ち主の自我に上書きされる前に引きずり出さないと……
「あ、逃げるな!!て…――速い!?」
別綾子さん!アーニア!
「なんで固まってんの!?別の篠村綾子に篠村綾子の身体のっとられちゃったよ!?あの猫耳綾子の自我が別の綾子で消えちゃうよ!?」
「え!?別のワタシって?でもそれはマズい!」
「私達も猫耳に!」
なんで!?
『猫耳だと敏捷性があがるらしいよ』
そうなの?私も猫耳生やそ…エルフに猫耳って盛りすぎ〜!
え〜と、どこに逃げたんだろ?一応ホテルに網の様に検知結界張ったから外に出たらわかるんだけど。
結界中からあのワタシの魔力パターンを割り出すと食堂かな?ああ、お腹すいたのかな?気持ちわかるぞ〜
「食堂にいるみたいだよ」
「はあ」
食堂にいくと入口前でメニューみてしゃがんでた。
「これ食べたい……」
「食べたらいいじゃん」
お腹空いてるんでしょ!
「あ、みつかった!ヤベ!」
あ、そっちいっても……
「残念だったね、カツ丼でも食べよ?」
「あわわわ……お願い……消さないで」
だから
「消さないって言ってるじゃん!ほら、じっとしてな……別綾子さん押さえてて」
「わかった……あれ?貴女もさん付け?」
よし、引きずり出せ〜!!
「ふい〜、終わった〜!あとは元のワタシが目覚めれば」
猫耳のワタシ、って全員猫耳だわ、え〜と結社見習いのワタシがそのうち目覚めるはず。
異物共?私の中で大人しくしてるよ。
「ひとまず終わったかな?お腹すいた〜ごはんでも食べにいこー」
お腹すいちゃったし中にいるワタシ達もアレが食べたいこれが食べたいとうるさい。
「ちょっと待って!何があったの!?」
別綾子さんとアーニアに止められた…。
そうなるよね…
「ここだとなんなので…ご飯でも食べながら…」
「それは賛成だね!わかってるじゃん」
別綾子さん!?昨日から思ってたけどやっぱり大食いだよね!?
ご飯を食べながらあの見習い綾子に潜んでいた亡霊達について説明した。
今は私の中で融合しない様に処理してご飯を楽しんでることも。
ハンバーグにパスタとカツ丼、あとは生姜焼きにトンカツ食べたかな?締めに私特製のドラゴントン汁でも出すか〜。ズズ、あれ?やっぱりこれ美味しいよね…。
別綾子さん食いついて見てくるが?トン汁飲む?あ、飲むんだ……そですよねー
「美味しいじゃんこれー」
『美味しい!綾子凄い!』
えへへ、サバイバル料理だけどねー。
とまあそんな話をしているうちに見習いの綾子が目を覚ましたようだ。
「おはよう綾子、気分はどう?なにか飲む?」
レイちゃんが見習いの綾子に声をかける。
「そ、そうですわねー!私は紅茶なんかが飲みたいですわね〜!」
ん?
「どうしたの?綾子、お嬢様ごっこか?ではお嬢様、こちらがメニューです。紅茶はこちらからお選びいただけます。どちらになさいますか?」
レイちゃん、多分、お嬢様ごっこじゃない――まだ中にいる何かだ…――口調から8割方は篠村綾子ではないだろう。
「このピーチティっていうのがよいですわね。」
「かしこまりました。」
まあ逃げないならガッチリ逃げ場を埋めてしまおう。流石は私達、意思疎通もなく包囲した。
さて、こいつはなんなんだろう。ワタシが頭おかしくなっただけ?いや、可能性としては低い。だって魂と精神体の間のゆらめきが増している。
「ワタシさ〜、紅茶なんて進んで飲むほど好きだっけ?飲むには飲むんだろうけど好きなのはポテチにコーラでしょ?それ以外は緑茶か烏龍茶派でしょ?」
アーニアが切り出し私含めた綾子ズが頷く。私の中でも亡霊綾子組が頷く。
「別に私が何飲もうと勝手ですわ!本当失礼しちゃうわ!」
まあそうなんだけどさ、ワタシの篠村綾子の身体で勝手なこと言われると腹立つな〜。
『腹立つね〜こいつ』
『本当あからさまな成りすましじゃんかね』
『演技する気もないのか』
『お嬢様口調がキモい』
エーテル通信回線をつないでの綾子ズによる悪口大会である。まあそりゃそうだ。身体は本物、心は偽物。そんなの私達の前で堂々とやられるとムカつくわ。
『別綾子、取り押さえちゃおうよ。』
『シズルとエルフのワタシ、この中でその辺出来そうなの私達くらいだから、あの中でゆらゆらしてるヤツ、追い出そう。』
その辺とは精神体の制御である。
まあそうだね、普通は精神体と魂核がセットで憑依が出来る。
よって綾子の処理は綾子にしか出来ない。
シズルちゃんやアヤメの例外については謎。
まあ、シズルちゃんの顔を木の外でみたからなんとなく、予想はついてるけど。
『じゃあ別綾子が取り押さえ役で、エルフ綾子があの綾子の精神体をプロテクト、私シズルがあの何かを捕縛、または消滅させる。それでいい?』
『うん、それでいこう』
早くしよう、自分ではないとは言え、ワタシの未来を奪おうとするヤツは許せない。
『よし!取り押さえたよ!』
『綾子!精神体にプロテクトして!』
『オッケー!』
この綾子の精神体は、どこだ?あ!いた!プロテクト!これで大丈夫?トラップとか…ない?大丈夫そう……かな?
『シズルちゃん!こっちはオッケー!』
『綾子!大丈夫!?プロテクトは!?』
『ん?オッケーだよ!』
『綾子!?綾子!?どこ?身体の中に綾子がいない?綾子!?聴こえる!?綾子!』
え、なにいってんの?確かにこの見習い綾子の中にいるけど…――って、あれ?
『シズルちゃんと繫いでた身体とのリンクが切れた!?』
『マズいね、エルフ綾子が囚われた……しかも中からガードされて弾かれた。』
――そのうち、別綾子とシズルちゃんの声も聴こえなくなった……。
『やばくない!?なんで?』
『なんでもなにもその精神体にトラップしかけたのですもの。』
『誰?』
『誰って、貴女の想像の通りですわ?』
いや、想像できてないけど?
『亡霊達をこの中に導き、盾にして隠れて頃合いとタイミングが合えば私が目覚める様に計ってたのですわ。』
『いつから憑いてたの?』
『まあ教えて差し上げましょう。日本という国に住んでたこの綾子の世界の枝にチョチョイと忍びこんだのですわ。まあそこでも邪魔されましたしプラン2なのですけどね。』
話に聞いたママか…ママって実はゴーストバスターなのかな?まあいっか
『ふ〜ん、この身体のワタシの精神体を消さなかったのは幸いだね、というか消せなかったのかな?もしかしてシズルちゃんより得意ではない?』
『なにを仰るのかしら?記憶を覗いたりと有効活用出来るじゃないですか?それに、貴女方をこの中から消滅させるなんて容易いのですわよ?』
くそ〜!出来るのか…でも…してない。
『まあ貴女も有効活用しようと思って囚えたのですけど?1人には逃げられましたけど。まあ2人もいれば十分。連れてきた4人は取られちゃいましたけど』
私はドジった!?いや、多分これでいい。
『それ聞いて安心したよ。この中には私と貴女しかいないわけだね?なら貴女を消滅させたらいいわけだ。』
なんだ〜簡単じゃんか?焦ったわ!精神体を分解するあれ、シズルちゃんがやったみたくすればいい。
朝に聞いといたし。
今の私ならそれが出来る。
そう、『今の私』なら。
『ふん!フラッピングエーテルの権能を使えない者風情が!おっと口調が乱れましたわ?貴女方は術式使わないとフラッピングエーテルを扱えないのでしょう?』
え?まあ大概のことは術式ないと無理かな?
でも――
『シズルちゃん、自称静寂の女神がいうには、私、デミゴッドらしいよ?強制力の人みたいな。』
『静寂の女神……――も〜!またあのお邪魔虫…!おっとまた口調が乱れましたわ?デミゴッド?貴女は強制力ではなく篠村綾子でしょう?そんなワケ……本当にデミゴッドですの?』
そうだよ、だって
『私、木の外に永いこといたからね……永いこと永いこと、そこで術式なしでも発現してたなあ……シャワーとか生活の為に水だしてただけなんだけどね。その応用でしょ?精神体学の理論を権能に転用すれば理論に詳しくない貴女よりはそこそこ有利なはずだよ?』
シズルちゃんは詳しすぎるけど…
『そんなワケ……』
『まあ一応聞くけど、この枝の世界でどこかの枝を消滅させたことはある?』
『なぜそんなつまらないことする必要があるのです?あの人まで巻き込んじゃうじゃん……ですわ』
あの人?まあ、こいつじゃないのか、じゃあもういいや
『じゃあね、さようなら』
『何を仰るのかしら?貴女程度の力量では……え?うそ……!なんで私が消え…これじゃ本体に反映でき…――』
うわあシズルちゃんに教えて貰ったこれすげえ。まあでも、これで一安心かな?一応、隅々異物チェックしよう。
『まあ、大丈夫かな?シズルちゃ〜ん!』
『綾子!大丈夫?どうなった?』
『こっちの綾子も無事!異物は消滅させたよ〜!!』
『ワタシ!よくやった!』
えへへ、別綾子に褒められちゃった、えへへ。
ん?あれ?私…別綾子に褒められて嬉しいの?シズルちゃんならともかく。別綾子のことよく知らんし。
あれ?まさかのまさか?あ、この綾子の精神体が活性化しだしたか。
別綾子に褒められてうれしいって気持ちもこの身体の綾子の気持ちか。
それにしても融合していくの早すぎない??
亡霊や異物に取りつかれすぎてた反動かな?
『あ〜シズルちゃん、私、そっち戻れないかも……』
『え〜!?どうしたの!?』
『この綾子が起きはじめたから融合はじまって混ざっちゃった。今なら色々な料理も作れそう。』
『え〜!切り離せないの!?料理食べたい!』
『ここで切り離すとどっちがどっちの綾子かわからなくなると思う、多分いびつな形で……』
『そっか〜……私寂しい』
私も、はあ、身体手に入ったんだけどなあ。まあ所詮は亡霊だ。
『私はこの綾子じゃないから自我はほぼ残らないと思うけど……このワタシをよろしくね!シズルちゃん!短い付き合いだったけどありがとね!』
まあ、アテはあるから分離は出来るかも?
この綾子が動いてくれるかは賭けだけど。
まあ分離しなくてこのままでもいいけどね。
『あ!そっちいる亡霊綾子ズよろしくね!たまには身体貸してあげてね!』
『わかった!じゃあ、綾子またね!ドラゴントン汁また食べたいな!』
『うんわかった!またね!』
ああ、溶けていく、混じっていく。
まあこのまま融合してやり直すのもいいかも?それなら公的に新しい世界でノルくんに会いにいける。
この篠村綾子として。
私はこのワタシの未来を守れたし本望だ、私を一緒に新しい世界へ連れて行ってね……
よろしくね、『私』
◇
「というお話だったの」
ツムギちゃんがみんなを呼んでエルフ綾子との融合までになにがあったかを説明させられた。
「1年寝てようやく起きたと思ったら序盤のエルフ綾子、スケールが大きい話しだった。」
アーニアが言う。
うん、私が体験した話じゃなくた記憶をほじりだしただけなんだけどね。
1年寝たのは融合の精神体処理なんだと思う。
思ったより早かったね。
アーニアとは入れ替わりだったけどアーニア目覚めるの2年かかったもんね。
「今の貴女はエルフだった綾子って自覚はあるの?」
「いや……まったく」
他人の記憶を見ているような感じ。
アーニアの記憶もちょっと混じってるし。
なんというか頭の中に図書館があってたくさん本がある感じかな?
そんなに本あっても全部読めないでしょ?他人の記憶なんて自由自在に思い出せないっていったら伝わるかなあ。
いまも思い出しながら話すの大変だったし。
私は私なんだよ。
「なんか貴女だけ他のワタシより少し特種なのってもしかして日本にいた時から亡霊綾子や異物が入ってた影響じゃない?」
いや、アーニアさん、特種ってかいて変って読むんでしょ?嫌だな〜もう。
まあ、その可能性はあるね。
「貴女と入れ替わってたから私の精神体も隅々までチェックしたよあのあと。大丈夫だったけど」
そういえばそうだね。
「あ、ノルくん抱きマクラくれるって言ってたよね?」
「え、貴女には言ってないけど……欲しいなら、あげるけど」
あれ?夢?あれ〜?でも
「やった〜!ありがと!」
「綾子!久しぶり!」
「シズルちゃん!いやーあの時はシズルちゃんに権能の使い方教えて貰ってなかったら危なかったよ!ありがとね!」
「え?綾子、エルフの綾子?」
あれ?いま素直に実体験したかの様に話しちゃったぞ?
「いや元々のワタシなんだけど……いま自然と話ちゃったねハハハ怖いなあ、ワタシはエルフの綾子じゃないよ?」
分離する方法を考えよう。
こちレイちゃんは分離出来るっていってたし私も出来るはず!
出来るよね?こちレイちゃんは元々1人を2分割だけど、私は2人を元に戻す感じかな……――あれ?無理なんじゃね…?
それにしても私、防御結界を本部にかけたらしいんだが?それについては全く記憶にない……
まあでも、特段いまは困らないし、当分はいっか〜!
よーし、みんなに迷惑かけちゃったしドラゴントン汁でも作って振る舞うかあ!
シズルちゃんとの約束だしね!
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