第26話 あれから10年…エルフ保護禁止法

 カツ丼(極・特上)パーティーを終え、まず私がさせられたのはレシピへのカツ丼バリエーションの追加である。

 上、特上、極・特上である。

 ちなみにアーニアに言われたバリエーションだけである。

 

 実は更に上位の究極・特上(未完)があるんだけど…それはまだ秘密だ。

 未完の時点で極・特上を超えてはいるんだけどなにかが足りない。

 私が行くべき世界へ行ったら、ノルくんに食べてほしいからその前には完成させたいな。


 う〜ん、時間あいたらアーニアに相談しよっかね。


 アーニアはなんだかんだワタシなので料理スキルやアイデアは私並なのだ。

 まあ1年ちょっと引き篭もったおかげ?でアドバンテージは私に分はあるけどやっぱりその辺は永年生きてきた要領の良さなのか、わりと聞くと頼りになるアドバイスはくれるしね。

 う〜ん、もう少し改良してダメなら相談してみよっかな?


 カツ丼の話は別にいいんだけどさ?


 私のカツ丼(極・特上)を食べたアーニアはやる気を出していた。

 朝、リナちゃんとツムギちゃんのいる郊外の宿へ向かった。

 ここからは私の出番はないだろう。

 ま、疲れたし少し今日はゴロゴロしてよっかな?な〜んて考えていた。


「ひゃっほ〜!」

 

 勿論、即実行である。

 あ〜昨日まではほんと疲れた疲れた。

 

 ラフな部屋着のまま泊まってる部屋のベッドにダイブ!部屋には防御結界!絶対に誰も入れないっしょ!改良に改良を重ねたからアーニアでも絶対破れないよ!

 お菓子!!エーテルネットに誰かが投稿した小説!今日は休むぞー!


「もう無理無理〜。2〜3日は何もしたくない!」


 こちらに来てから再現したワックポテトにハンバーガーに黒い炭酸飲料。

 は〜、毎日食べてたら身体に悪そうな味〜、うま!!毎日食べなきゃいいんだよ!なんでもそうなんだけど。

 ん〜!私特製ポテチも最高!芋ばっかりだな?


「久々の不摂生最高〜!このままなにもしたくな〜い」

 なんていいながら小説を読みながら優雅?で贅沢な時間を堪能していた。


「随分と最高な時間を楽しんでるね、ワタシ。私もたまにはダラダラしたいわ〜。」


 は!?結界貼ってるんだけど?っと声の先をみた。


「別綾子先輩!?」


「ハハハ、先輩ってなに?それより私もポテト食べたいな……」


 ポテトを嗅ぎつけてきやがった?しかも結界突破してまで?


「レイちゃんが持ってたのこの前、覗いてね……今の私じゃまだまだ作れないし…。」


「いいけど、代わりに私が次の世界に行く為に役立ちそうなこと教えてね。」

 対価は要求する。

 無償ほど高いものはないのだ。

 ママもよく言ってた。お金の話じゃなくてね。


「うん!いいよ!!」


 まあ、憑依されて別の世界に飛ばされたしね。

 別綾子は表にあまり出さないけどかなり溜まってるんだろうな。


「ひゃっほ〜。ん〜私も疲れちゃったよ〜。もうやだ〜。うわ!このポテト懐かしい!コーラ最高だね!」


 別綾子先輩もラフ着になりベッドにダイブ!不摂生女子会をした。

 別綾子世界のノルくんの事についてや別綾子の世界のことや何故か錬金術みたいなことを教えて貰った。

 別綾子世界のノルくんは少しワイルドみたいな印象だね。

 会ってみたい!


 別綾子はもの作りが得意みたいで刀や武具、防具といった戦闘に特化したものをよく作るみたい。

 武闘派なのである。

 薬学にステ振りしたアーニアよりも強いのはこの辺からなのだろう。

 パラメータの差の様なものでなんでも出来るという点ではアーニアも別綾子も、その辺は共通である。

 ちなみに私はかなりピーキーらしい。

 まあ生きてきた年数が違うので当然といえば当然である。

 防御結界術式についてはアーニアや別綾子よりも大きな差をつけて私が上なのだけどね。


 別綾子の錬金術式?の極みみたいなものだと何にもないところから剣が発生したりとか無茶苦茶だ。

 異空間から取り出したわけでもないらしく、瞬時に創り出したようなのだ。

 自身の【身体】を作り替えるコンバートの応用らしいのだけど全く意味がわからなかった。

 けど初歩的な武器作りの理論は教えて貰った。


「まあ武器使うよりは殴った方早いけどね」

「それわかる〜」


 別綾子自体も殴った方早い派なのでこの術式はあまり使わないみたい。

 剣を振って稼いでいる冒険者の皆さんがみたら泣きたくなるような発言である。


「まああっちの世界にいったらノルくんになにかプレゼントする場合の候補に武器とかもいいんじゃない?貴女は料理が出来るから順位は下がるかもだけど」


 そうだよね〜、ノルくん誕生日になる前に消えちゃったからプレゼント渡してないんだよね〜。

 毎年渡してたから会ったらなにか渡したいなあ。


「武器か〜、いいかもなあ。形にも残るし。でもどんな武器いいんだろう。この世界だとノルくん両手ダガーとか刀みたいだけど」


「あ〜、そうだね〜。刀とか剣がいいんじゃないかな?ノルくんその辺好きでしょ?」


「そっか〜、う〜ん。なににするかあと10年は考えておく!」


「ハハハ!10年なんてすぐだから!」


 まあ、この世界に来てあっという間の10年だったなあ。

 あれ?そういえば


「別綾子の世界のみんな、心配してない?大丈夫なの?」


「あ〜、一応、世界の穴を通して連絡は取れたから定期的に連絡はしてる。ただ貴女達の通るbranch of originateの穴に影響あるかも知れないからあと10年くらいは帰れないかも……」


「あ、まじか、それはツライね。」


10年もノルくんに会えないのか……私ならどうにかなっちゃいそう。

 ――って私は10年以上あってないや!私、もうどうにかなっちゃってる!?


 あ、そもそも引きこもってたわ!


「うん、まあ、連絡は出来るし大丈夫かな?それまでよろしくワタシ」

「うん!よろしく!で、憑依してる子は?」

「ずっと痛覚だけ刺激してたら静かになっちゃった。消えちゃったのかな?」

『う……いい加減に止めて……痛いの…この状態じゃ……気絶も出来ないし……鬼…』

「反省した?」

『反省してます!もうやめて?あとポテト食べたいから味覚をオンにして、いだだだだだ!やめて!痛い!痛い!反省してます!反省してます!』


「ねえ別綾子、この子ってなんなんだろうね。でも前に私もなんかに憑かれたことあるような?ないような?」

「この世界で?」

「いや、前の世界で。」

「気のせいじゃない?日本があった世界だとそもそも魔力なんて活性化難しいらしいから夢とかじゃない?」

「そっか〜。」


 日本に住んでいた頃、私も自分が自分じゃないような?感覚で朧気なよう状態になった記憶がうっすらとある。

 まあでも別綾子の言うとおり夢だったのかな?いつの話だっけ?アーニアも別綾子も16歳まで私と共通して同じ人生過ごしてきてるっぽいんだけどな……

 だから引きこもり後なのかな?それとも私だけ?そもそも私の気のせいなのかも?


『身体を所望します。悪さ出来ないように制限していいから!お願い!』

 憑依してる子、なんて呼ぼう。あと話してる雰囲気とか誰かに似てんだよなあ…。誰だ?


「身体って、貴女は魂がないでしょ?どうやって?」

『それが出来ちゃうんだなあ…、私が憑依出来るのは綾子達と龍の子達と、あとね〜、アヤ……って人とツムギ……って人かなあ、あと何人かいるけど?』

 なに?その人選は…共通点?綾種?いや…リノアちゃんを綾種に入れていいのか微妙だしツムギちゃんもいるしね。


「その誰かに憑依するってこと?させないよ?」

『違う!違う違う!この世界にハイエルフっているでしょ?貴女達が侵略者と呼ぶもの達に改造された新人類の。魂は別綾子にリンクしたままでいいからその身体を紐付けしてくれたらいいよ。ハイエルフってそういうのだって別綾子の知識で知ってるよ?まだ生きてもいない試験管ベイビーならいいでしょ?』

 え?ハイエルフって魂ないの?


「ハァ…目ざといね。そこに目をつけるなんて。ハイエルフは確かにそうだね。でもこの世界の私の許可なしでは無理だね。それに私じゃ紐付けできないよ。」

 エレナも?セレナも?他のハイエルフのみんなも魂が……ない?


『そんなあ。絶対無理じゃない?』

「私でも無理だよ。」

『魂の紐付けは私の精神体なら逆に綾子達かアヤが一番できると思うよ。』

「なんで?」

『なんでって、そりゃあ貴女達はそもそも写し「ハイエルフって魂ないの?わわわ、ごめん話わりこんじゃった?」


「いいよ、多分大した話じゃないよ。ん〜、ハイエルフはね……」


 聞いたところハイエルフは過去の侵略者が人類を改造し生み出した新人類の一つなのだそうだ。

 【魂核】を別人のものに紐付けし、その別人の魂をリモートで代替えし【身体】【精神体】のみで生きられるのだ。

 またその別人が死ぬとそのハイエルフも死んでしまうがリンクの書き換えで生き延びることも可能。

 侵略者は【魂核】をハイエルフとリンクし都合よい下僕を量産する為にハイエルフを生み出したそうなのだ。

 後から知った話だとエレナやセレナはノルくんに、ミーナちゃんはリリスちゃんと魂がリンクされているみたい。

 アーニアは何故か紐付け出来なかったみたい。

 別綾子の世界のハイエルフも別綾子とはリンク不可だったらしい。

 理に抵触しないのか?という点についてはギリギリのラインでセーフらしい。

 まあ一応、筋は通っているらしいし、レイラインシステムがそもそも、こちレイちゃんの半分の精神体が管理していて同じ原理らしい。

 レイちゃん……レイライン……、あれ?そういうこと?


「でも、魂がない=心がないじゃないから、みんなちゃんと生きてるよ。精神体が心だしね。」


「そっか〜。少し倫理について考えてしまったわ。」


「ハハハ、まあそうなっちゃうよね。まあでも私の中に憑依してるなにかがずっといるのもアレだし検討はしておく。」


『ほんと!?ありがとう!元の本体に私を反映する為に消えよって思ってたけど美味しそうなものいっぱいあるんだもん!ようやく食べられる?』


「考えておくね〜」


 そんなことをいいながら、別綾子は6個目のハンバーガーを頬張った。食いすぎじゃね?私はそんなに食べれないよ?よく太らないね。



「そういえば、アーニア上手くやってるかなあ……」

「う〜ん……まあ、デリケートな話っぽいしね……」

「様子、こっそり見に行く?」


 別綾子が頷く。

 まあ、めっちゃ気になるしね。


「こっそり行ってみよう」


 邪推?

 違う。


 干渉もしないし傍観するだけ。

 他人の覗きは今に始まったことではないし本能が何故か見にいけと煩いのだ。

 これは篠村綾子の本質なのだ。


 まあ、人には言えないけどね。


 そんなこんなで郊外のとある街へやって来たよ!


「来たことの無い街だから楽しみだわ〜」

 何故かアヤもいる。

 別綾子オリジナルの気配魔力隠蔽術式でこっそり出て来たのにだよ?

 アヤが普通に現れ「私も行くわよ〜」って着いてきた。


 一体アヤはなんなの?


「引率よ引率。綾子が2人もいるなら引率が必要でしょ?」

「「は〜いママ」」

「私は貴女達のママじゃないわよ!」


「わかってるよアヤ、でもママみたいだし。ね〜別綾子」

「すごいわかるわ〜。アヤってママみたい。ママの顔あんまり思い出せないけどママって感じ。」


「こっちの綾子はともかく貴女達より4000歳は歳下なのよ?それに私、男の人と手も繫いだことも無いし、あ、でもノルくんになら抱き抱えられちゃったことあるわね」


 ぴきっ


 脳内の血管が反応した、ような仕草をした。わざとだよ。


「あ、綾子達冗談よ……冗談!怒っちゃ嫌〜!」


 ぷっ…吹き出してしまった。


「なんか本当にママみたいな反応だったし面白かった。でも貴女はママじゃない。だってママはアホ毛以外は私とそっくりだって記憶はあるから。アヤは似てる程度だしね。」


「そうよ!未婚で男性経験もないシングルマザーなんて伝説なのよ!」


「「…」」


 ママもそんなこと言ってたね……。

 アーニアから聞いたのかな?まあいいや………。

 だってママ料理出来ないし得意なの裁縫くらいだしドジっ娘だしアヤみたいに里の長みたいなの出来ないし……て、おや?なんか引っかかるな……

 でもアヤの近くでママのこと考えるとなんかすぐ、いつも以上に他のことより「まあいっか」ってなるんだよね。

 まあいっか。


「まあ、いっか」

 別綾子もそう呟いていた。


 それよりもアーニアとリナちゃん大丈夫かな。


「居場所特定マップだとこの辺に……」


 あ、いた!


 アーニアとリナちゃんでご飯食べていた。

 ここは食堂かな?聴こえないな〜…。音声出力、最大!


「姉さん、ここのご飯悪くわないけど普通だね。」

「そりゃあ結社食堂に比べるとね。」

「綾子姉さんのせいで舌が贅沢になったよ」

「あ〜わかる。でも最近あの子も隠居しはじめたからね……もっと隠してるレシピをほじくり出させないと」

「隠居って……、同じ姉さんとは言え、まだこっちに来て10年でしょ?早くない?」

「う〜ん、総合的にはまだまだなんだけど私よりだらしないからね……」

「ハハハ、なんとなく伝わる」


 わ、私の自堕落な話をするな?泣いちゃうぞ?

 別綾子が肩にポンっと置いてきた。

 慰めか?


「でも防御結界が異常なほどに発展しててね、そこは凄いよ。未だに解析出来ないし。正直10年であそこまでピーキーに強くなるとは思わなかった。」


 褒めるなよ、褒めるなよ!へへへ。それほどでも、あるかなあ!?


「へえ〜そうなんだ。それならギルドの特務依頼も大丈夫そうかも。」

「あの子によろしくね。」

「わかった姉さん」


 ひとまず大丈夫そうだね、でもなんか普通すぎてつまらん!

 あ、いや、ちがうちがうよ、良かった〜。

 なんか大丈夫そうだね、良かった良かった。


「良かったね〜あの2人大丈夫そうで、どういうくだりでリナちゃん落ち着かせたのかわからなかったけど。」


「綾子が泣きそうになったり気持ち悪く笑ったりつまらなそうな顔にころころ変わるから面白くて全然聴いてなかったわよ。」

「私も」


 気持ち悪い笑い方なんてしてないよ!?


「まあ、それはそうとリナちゃん着てるの私の服じゃね?あと髪のびててみつ編みなんだけど?私のコスプレ?」

「それは私も思った。」


 なんで?


「はあワタシ達にアヤ。なんでここにいるの?なんとなく想像は出来るけど。」

 あわわわ!バレた!いつのまにかツムギちゃんもいるし。


「姉さん、それにもう1人姉さん…それにアヤ姉さんまで。はあ私が悩んでたことがますます子供みたい」


 あ、そういえば全員綾種だね、それも同じ顔3人にそっくりさん2人。

「これで、綾レンジャーファイブ揃ったね!あ、それともアーニアだけ司令官でそれ以外は四天王?」


「「「「……」」」」


 なんで?アヤはいつもみたいにノッてくれないし、綾子ズ2人はなんとも言えない顔!


「綾子姉さん、私は参謀がいいな」


 リナちゃん!良い子!


「その服を着ているので私の代わりにがんばってください。」

「あ、これ綾子姉さんの服?」

「いや収納異空間には私のがあるからレプリカじゃないかな?ね?アーニアさん」

 なんで私と同じ服?持ってるの?それ、私が作ったものだから一着しかないはずだけど?


「ちょっとさ、リナがさ……そうそうどれくらい似てるのか客観的に見たかっただけだし?ほんとだよ……」


 たまに私の格好してるとかじゃないよね?なんのために?まあいっか…


「まあこう観ると確かにパッと見は私だね」

 そこまでにリナちゃんは似ている。しかしアホ毛がないからね…


「「「理不尽だ」」」

「姉さん達!なんで!?」


 このアホ毛は縮毛矯正しようがなにしようがハネてしまうのだ。

 どうして。

 

 私のコンプレックスはみつ編みでしか誤魔化せない。


「まあまあ、みんなそんなの些細だから、みんな可愛いわよ〜。」

「「「ママ……」」」

「ち、違……うわよ!」

 アヤの返し今回は少し間が長かったな…キレが悪い。


「まあリナちゃん元気なら帰ろっか」

「姉さんやみんな、昨日は飛び出して逃げてごめん。アーニア姉さんとは話して解決したから。」


「いいよ。リナちゃん元気なら。」

「リナ、初めましてだけど、私のせいで大変な思いさせてごめんね。」

「もう1人の姉さん?ううん話は聞いたから仕方がないよ。それにこの姿でいられる良い機会だったから。」

「そう言ってくれると救われる。ありがとう」


 なーんて優しい世界の匂いを醸し出しながら帰ろっか〜なんて言ってたら。


「あ、ここから例の場所近いしリナからの冒険者ギルド特務、そこのワタシに出しちゃったら?」

 こらアーニアさん!私を指さすな!


 というかまじで?お仕事?今日はオフがいいなあ


「姉さん、そうだね……そろそろ増えちゃったし。ではギルドマスターとして特務を言い渡します。郊外にエルフの里が発生し数も増えています。エルフの里を滅ぼしてください。」


 ハっ!?え!?今なんて?

「まじで?」

「まじです」

「エルフって確か」


 『エルフ』

 それは森の妖精、緑の守人、容姿端麗、魔法が得意、倹約質素、その麗しい見た目は人を魅了し争いは好まず森の奥深くで静かに暮らす……と言った説明で多くの人がそんな感じと頷くだろう。

 うちにもハイエルフのエレナ、セレナ、ミーナちゃんと他数名ハイエルフがいる。少しだけ特徴的な性格はしているもののまさに所謂エルフって感じだなあ、といった印象。

 別綾子にハイエルフについて前に教えて貰ったけど本来は侵略者が作った手駒なのだそうだ。

 うちにいるハイエルフはみんな試験管ベイビー状態で無垢な状態であった為に保護したそうなのだ。


 じゃあ、エルフは?


 ハイエルフを創った侵略者がプロトタイプで同様に創ったのがエルフである。

 しかしこのエルフ、魂核がある。

 そう、ハイエルフと違い魂があるのだ。

 ただし魂は穢れきっている魔モノなのだ。


 魂が穢れる。


 いままでそんな話を耳にしてきたけど、魂が穢れていると侵略者または魔モノに分類される。

 ただし魂の解析はそこまで進んでいない為に、結構曖昧だったりする。

 リノアちゃんを見れば一目瞭然である。

 定義としては侵略者、魔モノではあるけど特に共存は出来そうではある。

 では魂が穢れるとは?


 実はこの世界の女神が創ったこの木の中の宇宙で発生した生物かそうでないかの違いであることがおおまかにわかっている。

 更にはその穢れにも色の様なものがある。

 例えばこの木の中の世界由来の生物だとすれば魂の色は白ベースのバイオレットに碧みがかったスペクトラムをしている。

 現在の定義ではそれ以外は侵略者、魔モノに位置づけられている。それらは別の木の女神からの使徒であり侵略者、または侵略者が理を冒して生み出したモノ達である(だいたいがアヤとツムギちゃん談)当然、魂の色も違う。

 リノアちゃんの場合はうっすら灰色にバイオレットな色をしている。

 ニアリイコールな種族のリナちゃんやノアは違う。

 リノアちゃんがこの世界の理の範囲で生み出したのかこの木の世界由来のスペクトラムである。

 このこともあって、多少色はちがっても侵略者の定義に見直しが必要なのでは?という声もあがっている。


 では、エルフは?


 真っ黒くろすけらしいのだ。


 これはエルフを創った侵略者自体も相当エルフには手を焼いたらしく失敗作だと言っていたらしい。でも倫理的に考えると、生み出しておいて失敗作はひどいよね…責任とれよ。

 なーんて思ってるけどこの世界のエルフを見たことないし物語に出てくるエルフの先入観があってぶっちゃけよくわかってない。

 エルフでしょ?私、その人達を殺すの?エルフの里ってことは暮らしてるんでしょ?


「アーニアさん質問なんだけど、エルフって耳が尖って容姿端麗なイメージのあのエルフ?」


「そうだよ、この世界にいるエルフもそんな感じ。見ためはウチにいるハイエルフ達と変わらないかな?見ためだけは。」


「はあ、それを私が滅ぼすの?殲滅?」


「そうだね。滅ぼしても滅ぼしても生き残りがどこかにいて、増えるんだよ。あれは理を冒しすぎてレイラインの魂浄化完了を3000年は遅らせている要因だから。しかも1人1人が魂真っ黒だからねえ……レイラインの負荷が凄いの。リソースは確保したからやるなら今かなあ……エルフが害獣魔モノに指定されてるって話は聞いてるでしょ?」


 人型の魔モノについては私も倒したことがある。

 でも人外といったモンスターじみたもので、それはまあなんとかなった。

 怖かったけど。


 エルフかあ。


「話は出来ないの?」

「言語は喋るよ、会話は成立しないけど」

「そうなんだ、いまいち想像できないけど」

「まあ、気持ちはわかるよ。行ってその目でみなよ。」

 どうせやらなきゃいけないことなんだ。

 ひとまずエルフの里に行ってみよう。

 しかし、綾種が5人も並んでるとなんかすげえな。

 私は綾種の中でも最弱。


 ちなみにリナちゃんは元の髪型、自分の服装に戻ってもらった。

 

 ややこしいからね。

 あれ?ツムギちゃんは?帰ったみたい。

 

「あの辺だよ、エルフの里は」

「フラッピンクエーテルのドーム?これは防御結界?」

 森や山を魔力の膜で覆うドーム型の光があった。


「そうだね、エルフを集団で見つけたらそこから出られない様にして殲滅してる」

「エルフって結界ないとこじゃどうするの?」

「もうエルフ保護禁止法が世界にあって、エルフみたら討伐ってことになってる。保護しても匿っても繁殖してもだめ。」


「え、かわいそうじゃない?」

「ま、わかるけどね。この世界の正義は向こうにとっての正義とは限らないしね。でもエルフはこの世界にとっては害でしかない。行動も存在も……」

「そうか〜」


 なにかモヤモヤするなあ〜。大丈夫かなあ。


「大丈夫よ、綾子。みたらわかるわよ。」

 アヤが撫でてきた。


「わかった、ママありがと!」

「ママじゃないけどがんばりなさい」

「うん!」


 森の奥に進むと集落があった。家を建て、狩りをして作ったらしい干し肉もぶら下がっていた。

 人としての営みを感じる集落だ。

 家といっても小屋みたいな?感じ。エルフは?見当たらないなあ。


「逃げられた?気配とかは今私達だだ漏れでしょ?だから?」

「いや、結界で逃げられないから」

「そっか〜、探してみるか〜」

「いや、そのうち現れるよ。」

 なんてアーニアさんがいった途端、無数の風切り音が聴こえ、雨の様な矢が私達目掛けて飛んできた。


 ガキン!ガキン!ガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキン!


 私の防御結界に弾かれるんだけどね…。

 女の子が出て来た。エルフって感じだけど格好が――原始人?他にも数人


「貴様ら何者だ、ここは我らの里!静かに暮らす我らを脅かすものか!?」


 知ってるよ!そのあと「立去れ!」とか言うんでしょ!?


「ふむ、女だけか!ならば食料だ!みんな今日はごちそうだぞ!」

「まあ!でも男なら繁殖の種で楽しめるかなって思ってたのに残念だわ!」

「私は丸焼きがいいなあ」

「腸は私が貰うよ」

 え、え〜?


「これは教育とかでなんとかならないの?アーニアさん」

「どうやってもなにをしても無理だった」

 あ〜倫理とは、を考えたけどこれは危険生物だね……私達の感性や道徳、大雑把に感覚からは食人は無理だね、しかも女の子しかいない?

 聞いたら女の子しか生まれないらしく、人間の男性とエチチチなことして増えるらしい。

 男性は攫ってくるか、馬鹿なのが特攻するらしい。

 攫われたらだいたい殺されるらしい、特攻したものは死刑となる。

 そもそもエルフにあって生き延びるには討伐するしかない。

 またエルフとエチチチなことすると魂に影響が出て精神体が侵され頭がおかしくなる為に、法律では死刑か安楽死である。


「族長!この5人は……!言い伝えによるアーヤフォンでは!?」

 アーヤフォン?スマホかなにか?


「確かに、さっきから頭の奥から何かざわめくものが……この顔をみたら真っ先にコロセと、ううぉおおおー!!」


 族長さん?が光みたいなオーラを放ち強そうな覚醒感を出した。

 なにこれ魔科学?なんか怖い!


「死ねー!!」

 あ、私?私を真っ先に狙った?ガキン!


「う、くっ…!」

「……大丈夫?」

 私に攻撃してきた族長さん、私の結界に弾かれて腕が変な方向に曲がっちゃった。

 あぁ…見ためは可愛いのになあ、可哀想


「あのさワタシ…可哀想とか思っちゃダメだよ?」

「アーニアさん…でもねえ…。」

「食人鬼だし、他のみんなの暮らしが脅かされるんだ…優先順位は考えて。ヤラなきゃみんながヤラれる。」

 そっか…そうだよね…。


「私からもワタシには伝えておきたい。こういう状況で躊躇してノルくんに被害が出たらどうする?ちなみにノルくんもエルフだけはどうしてもダメだから…。この特務はいざと言う時に躊躇しない為の経験だと聞いてる。」

 別綾子さんがいう。

 ノルくんに被害あるかもってことか…かそれはやだなあ…。


「姉さん、私が見本を見せるよ。」

 リナちゃんがそうやって前に出て龍化?人の姿だけど龍の様なパーツが手足から頭から角、お尻からは尻尾が出たいた。

 かっこいい!

 っで咆哮?みたいなのの手から出る版みたいな構えで項垂れてる族長さんに向け放った。

 これアーニアの凄いパンチの術式に似てるね。

 族長さんが消し炭になってしまった。


「族長!おのれ!食料のくせに!」

 食料って…あの干し肉って…まさか?


「綾子姉さん、気持ちはわかるけど…がんばってみて、こいつらは人を食べるただのモンスターだから。人の形をしてるだけ、人に擬態してるだけって思えば…大丈夫。」


 まあ…確かに人の形しただけのモンスターだね。

 家畜や狩りを業としてる人間も見方かわればだけど…。

 そこは答えが出ない。

 どっちの側にいるかでわかり合えないものはわかり合えない。


 グロテスクにならなきゃ多少は…精神的に大丈夫かな?

 ちなみにエルフさん達はさっきから矢を射ってくる。

 弾かれるけど。


 リナちゃん、半龍化して思いっ切り熱で蒸発させてたね…真似してみよ…。

 え〜と…コンバートで猫耳だして、尻尾を出してと…


「え!?なんで猫耳?」

「ナッちゃんにコンバート教わってるけどまだこれが限界…」

「いや…猫耳出す必要はあるの?」

「見た目は猫耳と尻尾だけなんだけど、動きはかなり素早く直線的ではなく靭やかになるんだよ。」

「あ〜なるほどね。」

 それで?リナちゃんの真似するならえ〜と…アーニアパンチの術式をフラッピングエーテル放出に少し換えて、それからえ〜とえ〜と…防御結界の応用で硬さを熱量に書き換えてっと…これで大丈夫かな?

 人を殺すのかぁ…でも…エルフだもんなあ…

 放射、あ、やべ、強すぎたかも。


 ピキーン!ドゴオオオオオーン

 近距離だからこんな強くする必要なかったかも!?


 目の前にいたエルフは消滅…。

 3キロメートルくらい先かな?キノコ雲が出来てた…

 やっちまった…


 あんまり攻撃系の術式得意じゃないんだよね…。


「あ、いまので殲滅完了かな?350体くらい一気に消えたね」

 え!?いまので終わり?


「猫耳になる必要あった?」

「まあ…確かに…。白兵戦なら結構いける形態だったんだけどなあ…」

「綾子姉さん、いまアドリブで術式書いてなかった?」

 ん?元々あった術式少し変えただけだよ?


「あ、姉さん方、まだ1人残ってるね…強い個体なのかな…?瀕死っぽいけど…」

 確認にしにいこうっていって見に来た。


「う…」

 見るんじゃなかった…火傷でただれ溶け、髪もなく焦げていて酷い状態だ…。

 あの攻撃でまだ形だけは保ってるのが凄い。

 すぐに介錯してあげるから…と私は刀を出した。


『あ!あ!あ!待って!?来た!これ!私が憑依出来るタイプですよ!?別綾子さん?私には制限かけていいからこの子に憑依していい!?ダメ?魂は浄化してスペクトラムをこの世界に合わせればいいんでしょ?』

 あ、身体欲しがってたもんね…。


「ちょっとまって!?生きた状態で魂の浄化や色を変えられるの!?」

 アーニアさんがいきなり大きな声で問いただした。びっくりした…


『出来るよ〜!あれ?もしかして…ご存知ではない?ぷぷぷ〜、どうしよっかな〜ふふ〜ん、あ!いだだだだだだだ!いだだだだだ!や、やめて!うそ!教えてあげるから!原理は説明しますから…!エルフはどやってもダメだと思うけど、この子は大丈夫な魂の色をしてる。』


「私は許可するけど別綾子は無茶苦茶しないようにその子の精神体の制限は出来る?」

「大丈夫だよ。私もそろそろ中で話かけられて鬱陶しかったしね。」

『え?じゃあこの身体に憑依していい?ならこの身体を回復してください!』


 ってことでアーニア印のポーションを飲ませた。

 ちなみ最近、帝国のお偉いさんの間ではエリクサーと呼ばれ始めている。


 うわあ…みるみる回復していく〜、すごいねこのポーション…。

 髪も生えていく〜…。

 うわあ、あんな酷い状態から治っちゃった。

 古い皮膚が邪魔だし洗浄術式で洗って綺麗にして、服くらい着せとこうかね…私の服だけどね…背丈は同じか…ぴったりだね。


 うん?耳が尖ってるけど?瞳孔確認したら瞳が紅いけど?

「これ…エルフの私じゃん…?」


 エルフで綾種発見!!またかよ!!

 まるで私のバーゲンセール?

 違う!私は私だけだよ!


「確かに魂核も黒ではなくバイオレットに黄色かな?エルフなのか微妙だね…。魔モノじゃなく侵略者?定義が曖昧でよくわからんけど…。でもエルフを創った侵略者は倒したはずなんだけどなあ…私達にこんなにも似た顔してなかったし。」


 アーニアさんが難しいことをブツブツ言ってた。


「そっか〜。なんなんだろね。この子。」

 別綾子さんがおもむろにエルフ?のその子を往復ビンタしだした。


「別綾子さん…」


「い、痛い!なに!?え!?げ!アーニア!?それに…アーニアがいっぱい!?」


 え?知り合い?


「いいよ、憑依して」


 え?話きかないの?


『ガッテンです!』


 あれ?なにか重要キャラじゃないの?それともモブ?


「やめろ!入ってくるな!お前、静寂の女神の写し見か!精神体だけって卑怯だよ!」


『おやおや、そんな呼ばれ方してたのか〜、私はコミュ障なんで1人で「混沌の女神」の木をこっそり観察して楽しんでたからね〜。貴女方みたいに徒党をくんで嫌がらせとか嫌いなので。指図め「強慾の女神」か「秩序の女神」辺りですか〜?同じ自分なのに哀しいですね〜。では、さようなら。』


 色んな女神いるんだね…このエルフの子も女神の写し見…


「ちょ!なんでそんなことが出来るのよ!?これじゃ本体にも反映できない!や、やめ…!あ、」


 終わったの?あれ?死んだ?と思ったら紅い目が見開いた!


「プハーッ!憑依したついでに乗っ取り完了!自我も消してやりました!嫌いな子だったので。これで私の身体です!やったー!いだだだだだ!痛い!痛い!」

 

「一応、テストで。大丈夫そうだね。」

 別綾子さんの制御、制限も問題なし…。


「別綾子…ひどい…」


「で、また1人綾種増えたじゃん?エルフだけど…それにまた女神の写し見…って…」

「確かに…私達もさ…もしかして…」

「あれ?私達綾子ズみんな目が光ってない?みつ編み解いたらアホ毛、今…真っ直ぐじゃない?あ、なにか思い出しそう」

 そう考えざる負えない…私達は…いや私はどこかでこの世界を見守って自分勝手に…ノルくんの為に…あれ?なんだっけ?


「は〜い!綾子達もみんなも!余計なことを考えない!考えない!ツムギちゃん!お願い!」


 アヤ?それに…ツムギちゃん帰ってたんじゃ…?なんの術式?あれ?


「あれ…写し見がどうのこうのって…まあいっか…」

「まあその話はいいよね…」

「うん、まあいいよ…」

 まあ…なにか思い出した気がしたんだけど…いっか…どうでもよくなっちゃった…。


それよりも

「なんて呼ぼうか…」


「私は静寂の木の女神ア………?え?なに…わかった…シズルです…」

「シズル…はその身体の名前?」

「あ〜、クソダサい名前だったし勝手に名前つけちゃった…」

「え、なんて名前だったの?」

「あ〜なんというか…ねえ?アヤ」

「ん?なんでアヤ?」


「貴女の名前はシズルよね。最初からシズルよね。」

「そうです。貴女はシズルです。それ以外はありえません。」


 アヤとツムギちゃんに詰め寄られるシズル…ちゃん…。

 アヤ、なんか怖いな…怒ったママみたい…


「そうです。私はシズルです…。それ以外の名前は…ないよ…」


「あ、まあ…わかったシズルちゃん」

 ただならぬ雰囲気であるが触れてはいけないのだろう。まあいいや…


「ふ〜ん、この子の身体は【大聖女】か〜。エルフって淫乱だからまさかって思ってたんだけど意外だわ〜。私に似た顔でもし淫乱だったら消し炭にするとこだったわ。」

 アーニアさん…なんの話?


「あれ?アーニアさんや、これは理を冒したりってことにはならないの?シズルちゃんの身体乗っ取りとかさ」


「浄化って考えたら大丈夫だと思う…多分。それにNGならツムギちゃんがすぐに手をバッテンにしてなにか言ってくると思う。」


 あ〜、そういうもんなのか。


「ところでさ、綾子」

「なに?シズルちゃん」

「なにか食べたい…この身体…多分お腹空いてる…めちゃくちゃお腹のあたりがモヤモヤする…」

「あ〜…」

 別綾子さん…いいのかな?食べさしても


「どんどん食べさしてあげて、これからこの子には色々聞かなきゃいけないしね。」

「そうそう、レイラインの浄化機能アップに貢献してもらわないと…」

「がんばる!」


 というわけで6人でピクニックである。

 サンドイッチとか軽めなものだけどね。

 

 なんというか…ちょっとさ…思ったんだけど

「私と似た顔どころか…私が増えたみたいだね…口調とかさ…私は別綾子やシズルちゃんみたいに大食いじゃないけど…」

「私はそんな大食いじゃないし」

 別綾子さんからクレームが入る。


「これ美味しい!永い間、食とは無縁だったから食べ物はいいねえ!でも私もお腹空いてるだけだし〜。大食いじゃないと思うよ〜。まあでも似てるといや似てるのかもね、だって…いだだだだだだだだ!って痛い!別綾子いきなり何!?」

「私、なにもしてないよ…。」

「じゃあ…アヤ!?」


「なにかしら〜?シズル?」

「ひっ!?え……?うん…わかった…。」


 アヤがなにかして、通信でなにかを伝えたらしい…。

 この辺は関わらないでおこう。

 なぜかそう考えてしまうしアーニアも別綾子も別の方向をみている。

 同じく思うところはあるのだろうが…。

 まあいっか、という感じである。なぜか、どうでもよくなってしまう。


 まあ…いっか。


「ひとまずは特務はこれで完了?でいいの?思いの他、すぐ終わっちゃったけど…。」

 リナちゃんに完了を報告?する。

「うん、これで完了でいいよ!ただ他の地域のエルフ達もなんとかしたいなあ…エルフ被害も増えてきたし完全に絶滅させたい…それは綾子姉さんが旅立つまでにやりたいなあ。あと綾子姉さんの攻撃力にはびっくりしたけどね?アドリブで術式書くの凄い速かった!」

 えへへへ!褒めるなよ!


「でも、まだ猫耳?」


「あ、忘れてた…!え〜い!猫耳解除!」

 これでよしっと!

 ん?みんなどうしたの?むしゃむしゃサンドイッチ食べながらこっちみて…食べるか私を見るかどっちかにしなよ…


「綾子…猫耳と尻尾…解除出来てないわよ…」

 え?


 自分の頭とお尻を触ってみる。

「あ、ほんとだ!解除!解除!解除〜!」


 あっれ〜…


「解除できなくなっちゃった…」

 どうしよ!どうしよ!どうしよ!


「ま、可愛いからいいんじゃないかしら?」

 そう?

「ならいっか…そのうち解除出来るでしょ…そんなに困らないし…」

「まあワタシがそれでいいならいいけど…ナッちゃんに一応なんで解除出来ないのか聞いときなよ?」

「うん、わかったよ」


 う〜ん、なんでだろ…すぐ解除出来てたんだけどなあ…。

「私もやってみよ〜」

 別綾子さんが猫耳と尻尾を出す。

 なんですぐ出来ちゃうの!?まあ別綾子さんだしね!?

「私も〜」

 アーニアさんまで!?


 別綾子さんは少しフサフサしてて、アーニアは毛は短いけど艶っとしてる感じか。私は中間で若干癖っ毛である。

 同じ篠村綾子てもコンバートだと差が出るんだね。

 まあ、リナちゃんとリノアちゃんも人型だと違うしね。

 そんな感じなのかな?


 とまあ…綾子ズ3人は猫耳のまま帰ろうとしていた。

 なんでアーニアも別綾子も猫耳のままなの!?


「あざといわね〜綾子達〜。今日ノルくんこっちにまた来るっていってたもんね〜!?」


 え!?そうなの?聞いてないよ?私だけ?


「違うし」

「わ、私も違うよ〜?」


 こやつら…、ノルくんが獣人要素好きだって知ってるから真似したな?

 1人でわざと猫耳になるのはアレだけど私を出汁に赤信号みんなで渡れば怖くない!って感じか!?

 私ひとりだけだったらハプニングノルくんあったかもなのに…畜生…

 まあ、自分からはもうこの世界のノルくんには触れたりもしないしそんな気もさらさらないよ!?

 でもノルくんから触ってくる事故があったかもしれないじゃん!?

 それならセーフでしょ!?それなら仕方がないじゃん!?

 

 あ〜…もう仕方がない…アーニアも別綾子も同じ私だしな…。


「あら…こっちの綾子が拗ねちゃったわね〜…」

「べ、別に拗ねてないもん!ハプニングノルくんとか考えてないもん!」


「ハプニングノルくん…わかったよワタシ…今日はノルくんにみんなでカツ丼つくってあげようね。それでノルくんが猫耳みて撫でて来てもお触り禁止令には触れないことにするからさ。」


 アーニアさん!?いい人ね!尊敬しちゃう!


「ハハハ!わっかりやすいなあワタシ」


 あれ?アーニアさん…大人気なくない…あれ!?大人になっちゃった?


 とまあ大人なアーニアさんを今日1日は尊敬すると心に誓い帰ろうとしていた。


 そんな時に

「さっきの爆風はなんだったんだ…?」

「ケビン?そっちはギルドから近づくなって言われてるエリアよ?エルフが出るとかで危ないって言われてるでしょ?」

「エルフ…見た目は麗しいから…パーティーに入れてみたいな…また試してみよう」

「スキル?なんのスキル?」


 げ…、ケビン御一行様だよ。10人も女の子いるよ…。

 ここ結構皇都から遠いよ?疲れてる子もいるじゃん…


「君たちは…」


 げげ…気づかれた!猫耳フードで隠さなきゃ!

 アーニアも別綾子もシュッと解除した!なんで私だけ解除出来ないの〜!?


「あ…あ〜、私が作った魅了スキル使って侍らしてる子か〜。あ、痛い痛い痛い!別綾子やめて!」

 そうだよシズル!おめーのせいだよ!おめーの!

 おっと…ちゃん付け忘れちゃった。


「ケビン…この子、この前の子じゃない?大聖女の。あと…6つ子?みんなそっくり…ってひとりだけエルフ!?鑑定!!え?始祖ハイエルフ?なにそれ…」


 シズルちゃんハイエルフ扱いなんだ…しかも始祖って…。

 あと勝手にステータスって更新されるんだね…。


「伝説のハイエルフ…俺のパーティーに是非入ってほしい。絶対に幸せになれるよ。この際、他のみんなもさ。」

 ウインクをしてくるケビン。


 う〜…鳥肌が立つ〜


「綾子…ちょっと気分が…」

「シズルちゃん…よしよし」


「ちょっと!ケビンに失礼でしょ!?」

「はあ…」


 いや…問答無用で失礼なのはそっちでしょ…。

 それとも立つ側で正義というものは変わってしまうのだろうか?

 普通に文化の違い?いや…ただ頭がおかしい様にしか思えない。


 あ、ケビン近づいてくる…防御結界!!

ケビンが防御結界に弾かれふっとぶ。

 触らせねーよ!


「ちょっとケビンになにすんのよ!」

 いや…近づいて来たのはケビンだし…


「姉さん、いいよ。私が対応する。」

 リナちゃん?大丈夫?気持ち悪くない?


「ギルドマスター、リナの名のもと命ずる。ここは侵入禁止エリアである。即刻立ち去りなさい。私達は特務でここにいる。」

 リナちゃん頼もしい!


「え、ギルドマスターこんな顔だっけ?顔立ちは整ってはいたけどもっと地味じゃなかった?」


 リナちゃん抑えて!抑えて!片手だけ龍化しないの!


「あ、でも鑑定するとギルドマスター、リナ・フォン・シュテュルプナーゲルだって…。え、他の人もアーニア?で同じ名前の人が3人?え?全員フォン付きの同じ名字?まあ姉妹ならそっか…」

 そうだよ!リナちゃん凄いんだぞ?


「なんで綾子がドヤ顔なの?」

 シズルちゃんに突っ込まれた。また顔に出てた?


「ほう?読めたぞ?」

「なにが?」

 アーニアさん…抑えて抑えて!怖い!


「君はなんらかの方法でギルドマスターを騙りステータスも偽装している。なんらかを企んでいる。俺はギルドマスターはお会いしたことあるしね。それがなによりの証拠だ。何を企んでいるかは知らないが俺がそうはさせない!みんな戦闘準備だ!」

「ケビン!さすがね!」


 「「「「「「……」」」」」」


 サーシャちゃんだっけ?いつもケビンをヨイショしてるの…。

 他の子は?あれ?困惑してるね…もしかして魅了ってそこまで効果ないの?

 それよりまじで戦闘するの?疲れちゃったよ…


 そんな怒りやら呆れやらが入り混じった私達は「誰がやる?」みたいに顔を見合わせ「どうぞどうぞ」と譲り合いをしていた。そんなとき


「あ〜!いたっす〜!アーニア様方!緊急なので走ってきたっす!リナさん!あれ?確かにここにリナさんの気配するっすけどあれ?アーニア様方、また増えたっすか?多くないですか?」


 サブマス、リオちゃん現る!そう!増えたよ!


「リオ、私だよ。私がリナ。」


「……え!?顔がアーニア様っすよ!?でも、気配や魔力はリナさんっすね…。でも…」

 まあ、いきなりなら困惑するよね。

「リオ13歳まで漏ら「うわ〜やめてー!リナさんっすリナさんで間違いないっす!」

 漏ら?なに?


「いきなりで驚いただろうけどこれが本当の私だから。まあ本当の本当の姿は他にあるけどね…」

 龍だしね…。


「で?どうしたのリオちゃん…緊急って。」


「あ、そうだったっす!調査していたケビンっすけど!エルフ保護禁止法に抵触していたっす!繁殖っすよ!?だから頭が少しおかしくなったっす!前はあんなんじゃなかったすから!」


 ん?ケビンならいるよ?

 私はケビンを指さす。あ!人に指差しちゃった!

 まあ、いっか…。

 ケビン、少し顔色悪いね…場合によっては死刑だっけ…?


「あ!ケビン!エルフ保護禁止法に基づき拘束するっす!私から逃げられると思わないことっす!」


 一瞬で女の子達を手刀で気絶させた。リオちゃん強〜い!

 ケビンはかわしたみたい、あれをかわすなら結構やるね。

 私?一応見えてるよ…。あれ?私、成長してるんじゃない?

 ケビンが剣を取り出した…あ〜、そこは罪を重ねちゃだめだよ…。

 あ〜、ケビンやれらちゃった…。みぞおちにダガーの柄を当てられて倒れた。

 まあリオちゃんサブマスであり結社内々定もらってるしね…勝てるわけないよ…。


「お〜い!リオ!はえ〜んだよ!お前!馬車意味ねーじゃねーか!」

 おじさんが来た。


「アダムさん!意味あるっすよ!そこの女の子達とケビン拘束したんで護送してくださいっす!」

「は!?ケビンじゃねーか!ってアーニア様!?が…前よりも増えてる!?」


 まあ…そうなるよね…綾種増えすぎ


「リオ、アダム、迷惑かけたね。」

「いやリナさん無事に復活してなによりっす!私らはケビン達運ぶんで!先に帰るっす!アダムさんいくっすよ!」

「リナ様?どこにいるんだよ!アーニア様が何人もいるだけじゃねーか!」

「そんなんだからいつまでも実らねーんすよ!ほら!いくっすよ!」


 おじさんが現れて数分で退場してしまった…。


「はあ…それにしてもエルフ保護禁止法に抵触していたとはねえ…。まあ見た感じは魂核の穢れは軽症っぽいけどね。」

「姉さん、最近はエルフ保護禁止法に反対するデモもあるし…主に男ばっかりだけどね…。は〜、なんとかしないとね。」

「あ〜…そうなんだ」


 まあエルフは見た目は良いからね…。

 でも中身はまんまモンスターって感じだし…やっぱり私は無理かな…?

 ケビンみたいなのが増えるならなおさら…


 口直しにカツ丼究極・特上のレシピでも考えて帰るか〜。

 帰りは龍化したリナちゃんに乗って帰った。


 ただ…今日はなんか疲れたなあ…。

 正直…見た目が人のエルフを倒すってしんどかったんだよね…。

 これからまた倒していかなきゃいけないのかな…。

 あ〜…眠いなあ…でもノルくん来るんだっけ…カツ丼つくらなきゃ…でも眠い…あれ…結構無理じゃね…?眠い…。

 だめ…


 帰宅と同時にそのまま寝てしまった。

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