第24話 あれから10年…フレッシュ綾子
3人も篠村綾子がいるとややこしい!
着ているローブや服装みんなデザイン違うから見分けが作っちゃ付くんだけどさ、それでも間違われる事は多い。
「別な人だし間違うな!」なんて言えないよね。同じ篠村綾子なんだから。
アヤでさえたまに間違われるし
まあ私も服とかで差別化してるけどやっぱり見分けが難しいのだ。
アヤが服飾裁縫得意だから色々教えてもらってね、洋服作れる様になったから服で区別をつけようって考えたの。
私はコルセットスカートに白のニーハイ、アーニアはスカートにガチのコルセット+黒のニーハイ。
ガチのコルセットは疲れるし私は無理だ。
服の趣味は同じワタシなのでやはり被るので色やデザインで差別化している。
それでも間違われるんだよ。
そこへ別綾子が投入されたわけだ――服の趣味は?以下略。
「あのさ〜いい加減、私達が3人もいたらややこしいじゃん?服で分けるってのも限界あるじゃん?しかもノルくんですら最近間違えてるのにもう1人追加されたわけだ。普段は髪型を変えよう。ラフモード時、所謂お風呂上がりや部屋着の時はTシャツの色。いい?」
「いいよ。」
「私も」
3人で話した結果、
私、耳から後ろの髪を一本でみつ編みにする。ラフモード時のTシャツは白。
アーニア、髪型はいつもどおり、ラフモード時のTシャツは紺。
別綾子、髪型はサイドテイル、ラフモード時のTシャツは淡い紫。
「白か〜、汚れたら目立つから黒がいい〜!」
なんて言ったら
「貴女は【大聖女】なんだし白でいいでしょ。無垢カラーだよ。黒だと紺と間違うしね。あと汚れたら着替えるか洗浄しなさい。」
大聖女。確かにステータスには大聖女って書いてたけど?でもアーニアの言い方は何か含みのある言い方なんだよな~。
まあいっか。
細かいことを気にしたらまた精神的に病んじゃうから細かいことは考えない私なのだ。
「そっか、白でいいや。」
ステータス上、大聖女になっちゃってるしね。
こちレイちゃんが適当に設定したらしい
ひとまず近くにいるみんなには説明した。
これで間違うことはないよね?
ただ、レイちゃんについてはみんな見分けつくんだよなあ。
なんでだ!?
ひとまずこの世界のノルくんが間違わなければオッケー。アーニアがムスっとするからね……
さて綾子違い案件も落ち着いたしリナちゃんの様子みにいくか。
――ってなわけでリナちゃんの部屋へきた。リナちゃんはまだ眠り続けている。
横では【精神体】の理論や知識、経験豊富なこちレイちゃんが調べてくれている。
ノア?まだ気絶してる。
1週間経ったけど?
どうやら神龍というか龍種特有のもの凄い攻撃やヤバい攻撃を食らった際の【精神体】スリープモード状態らしい。
別綾子の軽い手刀ってヤバい攻撃なのかな?まあ、アーニアより強いからね。
「こちレイちゃん、リナちゃんどう?」
「お〜、フレッシュな綾子じゃないか?他は?」
フレッシュ……
「元々はリナちゃんに用事があったの私だし私が主担当に立候補したら担当になった。他の2人もサポートしてくれるけど。」
「そっかー!偉いなー!綾子!」
「えへへ、それほどでも〜♪」
「リナはね〜、スリープモードっぽいんだけど魔力の質というか精神体と人状態のコンバートが上手く噛み合ってないのか魔力詰まりしてるっぽいんだよね〜。精神体と魂はマッチしてるんだけど、身体がなんでかね?上手く噛み合ってない。」
レイちゃんが詳しく説明してくれた。
前にアヤにも説明してもらったけど改めて詳細を解説するとね
生物は【身体】【魂核】【精神体】の3つが揃って成り立つものらしい。
ざっくり掻い摘んで説明すると
【身体】
言わずもがな肉と骨で簡単に容れものである。
【魂核】
私、篠村綾子やレイちゃんが同時に存在すること以外を除き通常は同じものは存在しえないこれは【身体】とセットでどっちかが壊れても死は免れないし切り離すことは出来ない。
まあいわゆる魂ってことだ。
ここに記憶や心などはなく、生きてますよ〜って状態の生物が持っているソレ。
【精神体】
いわゆる記憶や感情といった心である。
これはフラッピングエーテルの電気信号の様なもので分離すること可能。
同じ【身体】【魂核】の者とは入れ替えることが可能。
私とアーニアがいい事例である。
私達がいた日本があった世界は切り落とされた枝の世界だからフラッピングエーテルが活性化されていない為に、誰もフラッピングエーテルを知らない。
脳に電気が流れ書き込んでるというのが通説。
アーニア曰く、実際は身体の中なら血流とともにフラッピングエーテルが活性化される為にそれが作用して【身体】と【魂核】に結びつけられた【精神体】が脳に、【身体】に書き込んでいるらしい。
それが元いた日本のある世界では観測できない為に何か微弱な電気信号で機能している程度にしか見えないみたい。
フラッピングエーテルって素粒子も小さぎて元いた世界の技術じゃ見えないみたい。
あと、こちレイちゃんだけは何故かシステムに【精神体】を退避したり出来るし、レイラインにも精神体が半分いるらしい。
【精神体】は簡単に言うと幽霊とか、そんな感じの方がピンとくるよね。
だからレイちゃんはいま半分らしいのだ。
話はちょっとズレるけどいまここにいるレイちゃんの意識は今まで連続した自我ではあるみたいなんだけど人格としては本来のレイちゃんと同じかは怪しいらしい。
それは何故かアヤから聞いた話なんだけどね。
まあこのレイちゃん、なにか容赦ない感じがあるし、長年生きたアーニアとしての変化、ともまた違う感じがする。
私とアーニアは基本的に経験や進み方の違いはあれど、それともねなんか違うの……――上手くは説明出来ないんだけどね。
説明長くなっちゃった。
それでね、こちレイちゃん曰く、通常は【身体】【魂核】【精神体】がセットなのにリナちゃんは龍から人へコンバートした【身体】が合ってないんじゃないか?だって。
リナちゃんは無理やり今の身体にコンバートしてて、その状態でスリープモードになったから戻って来れなくなった。
実際にそうとしか考えられないらしい。
「無理やり外から人化のコンバート解除できないの?」
「コンバートは本人の【精神体】が【魂核】を介して【身体】の細胞よりも小さい素粒子に働きかけて出来る技術だから、本人じゃないと出来ないかな、でも精神体が起きないからこれじゃ永遠に眠り姫だね。」
「まじで別の木の女神の写し身とやらはいよいよ、責められない理由がなくなってきたな〜。」
「あ〜、あの子ね。私も話してみたいな。先輩綾子に言えば回線つないでくれるかな?」
先輩綾子?別綾子かな?
「多分ね〜、なんかあの写し身の子、私より捻くれてた」
「ハハハ、綾子はそんなことないよ!でも話してみたいなあ。まあ…それよりリナだよなあ……どうしよっかなあ…。龍皇姫を起こす?いやダメか」
龍皇姫?なんか聞いたなあ…なんだっけ?
あ!思い出した
「アーニアや別綾子が嫌ってた人だよね。そんなに?」
「私はそうでもないんだけどね、ただ魂核が穢れきって、そもそも侵略者なんだよ。だけど穢れきってるけどまあそこそこ話は出来るかな?」
「侵略者って討伐されるんじゃなかったっけ?まだしてないの?」
「アーニアは、というかこの世界の綾子は龍皇姫を倒したと思ってるみたいなんだけど、ところがどっこい瀕死だったらしく私の身体が3000年眠っていた場所の近くに寝てる。私が助けたから。3000年ちょいかな?私はAIルーンとしてずっと起きてたんだけどな!」
レイちゃんAIルーンだった?あのロボットみたいな喋り方の?私、目覚ましに使ってる。ま、いいや。
「へえ〜、じゃ龍皇姫生きてるんだ。」
「お兄ちゃん……じゃない、あ〜ノルさんが可哀想だしって」
「あ〜、そうなんだ。アーニアさんムスっとしちゃうよそれ知るとアハハハ。あれ?こちレイちゃんの身体が眠ってたのって帝国だって聞いたけどこの辺に龍皇姫いるの?」
「いるよ……でも流石にあの子、龍皇姫を起こすのはリスクあるしなあ……――別の方法考えるか〜。」
リスクがあるならやめた方がいいよ。でも龍皇姫って人、話してみたいなあ。
こちレイちゃんの話だとお話は出来る人なんでしょ?
まあ、その機会もなさそうだけど。
さてどうすっぺな〜、なんてこちレイちゃんと話してたら叫び声が聴こえてきた。
叫び声というか怒声?この声はアーニア?別綾子?
まあ、私の声と一緒なんだけど
「なんて言ったの!?いま!?もう一度言えやコラぁ!!」
なんだなんだ!?
ちなみにここは結社の宿屋でリナちゃんの部屋から3部屋離れた別綾子の部屋である。
従業員、いわゆる結社関係者もぞろぞろと集まってくる。
「もう一度言え!聞き間違えじゃないか確かめたい!」
怒声はアーニアさんと別綾子さんの両方でした……――同じワタシとは言え怖!
「なにがあったの?」
近くにいた結社員に聞いてみた。
名前なんだっけ?ちなみに私より多分強い。
5年くらい前に模擬戦で手も足も出なかった子だ。
確か、ノワールちゃん。
確かこの子もシロと同じ神獣フェンリルじゃなかったっけ?
「綾子様それが私共にもさっぱりアーニア様達、見えない何かに向かって叫んでまして」
「あ〜、そう見えるよね。」
『だから痛い痛い痛い、言うから痛いのやめて!』
うわぁ痛そう……見えないけど痛くて転がってそう。
「ま、まあまあ……話すみたいだから二人とも落ち着いて」
2人が冷静じゃないなら私がしっかりしなきゃね!
『お〜、流石若い綾子〜、話がわかる〜。助けて〜。』
「で?なにしたの?なんで2人とも怒ってんの?」
『いや、龍の子、リナだっけ?その子のことは反省してるよ?でさ、ちっこい龍の子も最近きたじゃん?別綾子にやられちゃったけど。で、思い出したんだけどこの世界に来た時に別の龍の子にあったんだよ。なんかカプセルみたいなの触ったら中から出てきた。私の顔、というか別綾子の顔みたら露骨に嫌な顔してさ』
ハア?やらかしちゃってんじゃんこの子…別綾子含め余罪4件です。
もう他にないよね?
「まじか〜、こいつに憑依されてた時の朧げで夢だと思ってたけど現実だったか〜。まじでこいつどうしてやろう……一ヶ月くらい痛みオンにしておく?」
「そうだね、そうしよう。でも龍皇姫は私が倒したはずなんだけど……恐らく別綾子の顔みて嫌そうな顔したってことは龍皇姫だよね。」
チラッてこちレイちゃんみると「ヤベっ!」みたいな顔してた。
「カプセルってことはなんか知ってる?レイちゃん……」
アーニア勘付いた。こちレイちゃん、汗だらだらだけど大丈夫かな?
「あ、あ、あ、うん……ご、ごめんお兄ちゃんに言われて助けた。一応封印したんだけどね……」
あ!アーニアさんムスっとした!見事な膨れっ面である。
私と同じ顔で膨れっ面すんな!そしてなんでか泣きそうな顔をしている。
それをみた別綾子は冷静になったのか、落ち着きを取り戻したみたい。
アーニアの肩に手をおき擦っている。
ノルくんは仕事で帝国を既に出ていったのが幸い……。次にノルくんに会うまでにアーニアが落ち着いていたらいいなあ……。
「あの女、みかけたらヤる。」
ヤる?何を?物騒なこと?
「ま、まあまあアーニアさん……その落ち着いて」
「貴女はあの女のことを知らないからそういられるかも知れないけど、知ったらどうせ私達と同じだよ。」
え?そんなに!?
「そうだね、この子を庇うけど、それは同感。私の世界の龍皇姫もまだ生きてるし……あ!私がいない間にちょっかい出してなきゃいいけど、どうしよ!どうしよ!」
別綾子が取り乱した!?そんなに!?
「そんなヤベーやつを起こしたの?」
『だって、当初の私の目的がさ……今はそんな気もないし悪いと思ってるよ』
「は〜、リナがあんな状態なのに龍皇姫か〜。まあ、特に暴れたり被害ないみたいだしいいけど?特に気にしてないし?魔力のパターンも覚えてないから居場所わからないし?まあいいよ。」
出た……アーニアさんの強がりモード…。
龍皇姫が生きてるとかより、ノルくんが助けたってことが気に入らないんだろうなあ。
まあわからないでもないけど龍皇姫のことよく知らないしなあ。
龍皇姫も居場所わからないし、ひとまずこの件は保留となった。
このあとアーニアは体調不良らしいのだが?1週間部屋から出てこなかった。
やっぱり私と入れ替わった時の影響があったりするのでは?
「綾子〜、ちょっといい?」
こちレイちゃんにお呼ばれした。
「なに〜?」
「実はね、凄い旧い術の形式なんだけど昔、この世界の綾子が作ってた居場所特定するような術式でさ。龍皇姫の魔力パターン波形に合わせてセットしてたんだけどさ、うまく発動してくれなくて。わからない?この世界の綾子は龍皇姫嫌いだから聞けないじゃん?」
アーニアさん?こちレイちゃんにバレてるよ?これ内緒のはずなんだけど?
「あ、それ知ってるの?」
「まあ長い付き合いだからね。」
「一応、私独自の発展型だけどそれの上位版使えるよ?」
「ほんと?凄いじゃんフレッシュ綾子!」
フレッシュ……
「魔力パターンさえわかればすぐにでも探せるよ。」
「すげー、10年でもうそんなの出来るんだ!流石だぞ!」
こちレイちゃんに褒められた!私は褒められて伸びる!
「えへへ」
ここからはこちレイちゃんに辞令を作ってもらい、リナちゃんを探す方法を探しにいくからと、こちレイちゃんに同行する建前を作って貰った。
メンバーは私とこちレイちゃんにレイちゃんだ。
「綾子が大魔術を使うと聞いて、走ってきたよ!」
レイちゃん!緊張するなあ!やっぱり同じ顔なのにこちレイちゃんとレイちゃんは見分けがつくなあ。なんでだろ?
ここは帝国の皇都から少し離れた結社の旧い古いアジトのような?廃屋?遺跡?みたいな場所。
さすがに皇都でアレやると目立つからね。
一応、私があの術式を使ってるのが誰にも検知できない様にこちレイちゃんがレイラインと自身の術式を使って隠蔽してくれてる。
それもダブルレイちゃんと2人でだ。
最強である。
実際のパワーはアーニアに分はあるもののこちレイちゃんはそれを上回る技巧がある。
実際に戦えばどっちが強いのかはわからない。
そんなこちレイちゃんも別綾子には勝てないだろう……なんていってた。
別綾子、凄すぎなのだ。
おっと話がズレちゃった。
「じゃあ、皇龍姫さがすね。」
今回は光をレイちゃんだけに見えるようにセットした。
「綾子すげー!なにこの術式門!かっくいい!」
「へへへ、レイちゃんそんなに褒めるなよ。調子に乗っちゃうから。」
「ハハハ」
レイちゃんに褒められた術式は光を放射して……――皇都に向かった。
「皇都か〜、綾子(アーニア)はまあ部屋にいるからいいとして別綾子にバレないように探さないとな〜。」
アーニアは絶賛引きこもり中なので大丈夫だけど別綾子にバレるとうるさそう。
そうなんだよね〜。
あ、皇龍姫ここからだと詳細位置までわからないや、だから
「ディテールオープン!」
『赤い糸』の下位術式である居場所特定マップ機能を開いて遠隔地でも光の刺さる場所を確認出来る様に改良したのだ。
空中にエレガントなマップがド派手に表示される。
まだ処理に時間がかかるけどね。
この改良はアーニアにはまだ内緒だ。
「お、綾子なにそれ、かっこいい!」
「かっこいいでしょ!」
「私もこういう派手な術式作ってみようかな」
「うんそれがいいよ!今度見せ合いっこしよ!」
「おー!しようしよう!」
「二人とも楽しそうだね!こんど派手な術式エフェクトコンテストしようよ!」
「いいねそれ!流石ワタシ!」
「やろうやろう!」
は〜、レイちゃんズとのお仕事は楽しいなあ。
さて、皇龍姫どこにいるのかな?
あれ?
「皇龍姫、帝国の冒険者にいる?ここは冒険者ギルドに最近テストで導入した結社食堂スペースじゃん?働いてるとかじゃないよね?あ、流石にお客のスペースかな?」
「冒険者ギルドか〜、あそこはウチの結社傘下だから多少動きやすいけど変なヤツもおおいからなあ。」
あ〜、ケビンみたいなやつが何人もいたら鳥肌立たって皮膚呼吸出来なくなりそうだ嫌だなあ――
こちレイちゃんも冒険者ギルドにいくのは抵抗あったりするのか。
レイちゃんにいたっては「冒険者ギルド!?」と食いついていた。
知ってる!レイちゃんそういうの好きだもんね!行こ!?
私はレイちゃんには甘々なのだ。
まあ、リオちゃんやおじさんも知り合いだしなんとかなるでしょ?
「と、いうわけでケビンって子には気をつけましょう。まあ、害悪があるかないかでいったらまあ今は無害なんだけど。調査は冒険者ギルドにして貰ってて、まだ終わってないみたい。」
一応、冒険者ギルドに行く前にレイちゃん達に説明だけした。
まあ調査もお願いしてから何日も経ってないしね。
「そのケビンって子は異世界物語に出てきそうな敵役勇者みたいな感じだね。あの、NTRしていくあの……アレ!」
レイちゃんは異世界系の読み物詳しいもんね!
私もそう思った!
「でも、そんな感じの人、日本にも稀にいたかもね。なんというかなんでも自分の思う通りに進むと思ってる人。」
「あ〜確かに、日本もここも人ってものは欲深いものだしそうかもね。」
人間は欲深い……私も含めて。
微妙な空気がたちこめる。
私も欲深い自覚がある。
「ま、まあ昔からだけど冒険者ギルドは変なヤツ多いから他も気をつけようね。」
なんとも言えない空気をこちレイちゃんがフォローしてくれた。引率の先生みたい。
「「わかった〜」」
ひとまず、別綾子にみつからない様に気配と魔力を消す術式をこちレイちゃんがかけてくれた。
どうやら魔力自体を検知しないんじゃなく、パターンの位相をずらし消えてるように錯覚されるようにするものらしい。
試しにレイちゃんにかけてもらったんだけど凄いの……これ。
「レイちゃんどこにいるのかわからなくなっちゃった……。」
ここだよ〜、って聞こえるんだけど…わからない。
凄いね……これ。
これがあればノルくんの部屋に忍びこみ放題じゃん!?
――て、しないけどね。
とまあ、こんな感じに気配を消して皇都に入ってったよ。
途中、別綾子とすれ違ったけど気付かれなかったセーフ!
私達は帝国の辺境に出張してることになってるからね。
「めっちゃ、怖かったんだけどあの別綾子(わたし)、なんか怒気を放ってたよね。」
「あの人はなんだかんだ強いから怒らせると厄介だよ。」
「あの人も綾子なんだよね、なにか大人っぽいよね、あ!綾子が子供っぽいって意味じゃないよ!?」
「大丈夫、あの別綾子はなんか大人っぽいというか大人なんだって。アーニア(わたし)が言ってた。私も図書館で『出来る大人の女!の作法コンプリートブックオンライン版』読んで勉強してみたけどさっぱりでさ」
「そうか、私もその本読んでみるよ。一緒に大人を目指そう?綾子」
「うん!がんばろ!」
そんな大人を目指す私とレイちゃんをこちレイちゃんは物凄い笑顔で撫でてきた。
背も年齢も見た目同じくらいだから絵面はなんか変な感じだけどね。
冒険者ギルドについた私達は気配を消す術式を解除した。
術式の名前?気配を消す術式だよ…。
「レイちゃん!ここが冒険者ギルドだよ!」
あれ?レイちゃん?
「なにかが違う……こうもっと木造で小さくて昼から酔って絡んでくるゴロツキがわんさかいて……――」
ちょっとレイちゃんのイメージとは違ったみたい。
でもレイちゃん、依頼票や受付のお姉さんと冒険者をみて少しは「あ〜、こっち系のギルドか〜」とか言ってた。
まあ少しギルドを見学してたんだけど特にゴロツキに絡まれることもなく平和だった。
冒険者のみなさん、ほとんどが汗かいて俯いてて、視線を私たちから逸しているような気が?2度3度、冒険者さんと目があった気がしたんだけど逸されたかも?気のせいかな?まあいっか。
こちレイちゃんがギルド幹部に会ってくるからその辺で待ってて〜って少し待つことになった。
暇である。
すこし皇龍姫観察するか〜。
こちレイちゃんが来るまではエンカウントは避けたいけどね。
「そう言えばついこの間、結社食堂冒険者ギルド支部が出来たんだよね〜。私はここ来たくなかったからオープン立ち会ってないんだけど。確かあの辺?あれかな?皇龍姫っぽいというか女性のお客さんはいないね。」
「そうだね?マップは?」
「あれ〜?マップにはいるにはいるんだけどなあ。どうも人が多すぎるし、フラッグも消えちゃったし。まああっちのレイちゃんが知ってるんじゃない?」
「いかにも龍人です!みたいな人はいないね。ま〜ワタシが戻ってくるまでお腹空いたし食べてく?」
「そうだね、なんか頼んじゃおっか。」
ここはいかにも冒険者ギルドです!みたいな丸テーブルが沢山あって、ここのメニューは確か庶民向けのレシピやお酒に合いそうなレシピとかが主なんだよね。
ウェイトレスがかわいい!あの制服は私とアヤで監修したんだよね!プラチナバイオレットの綺麗な髪に中々スタイルもいい!
あの制服のモデルとしては最高の逸材だね。
髪の色は私に似てるね!日本人なのに私の髪の色も大概だよな!?
誰にも突っ込まれなかったけど!?
食堂エリアに入っていったけど満席かな?
「綾子、あそこ空いてるよ」
あった〜、良かった〜。
立ちっぱだったから座りたかったんだよね。
あれ、なんか冒険者のみなさん、私達の席の周りから消えたけど?なぜ?
「いらっしゃいませ〜!ご注文はお決まりですか?」
あ、さっきのウェイトレスさん!かわいい!
「ふわとろオムライスとコンソメスープください!」
「私は生姜焼き定食で。ってこの子、綾子に似てるね」
ウェイトレスさんの顔がをみた。
ん?確かに……親戚にいそうな感じはする。
親戚いないけどアヤほど似てないしノアほども近くない。
「なんじゃお主らか――まあ、妾はいま給仕中なのじゃ。お主らはお客様じゃ。それ以外の相手は出来んぞ。」
のじゃっ娘だ〜!セレナと被ってる〜!けどこっちは一人称が妾だ。
そういう設定のサービス?
「綾子知り合い?」
「いや全然。でもこの制服めちゃくちゃにあってるよね。私とアヤが作ったんだよ?」
「まじで?凄いじゃん綾子」
「なんじゃ、柄にもなく褒めよって。この制服をお主が作ったというのか?それは良い仕事をしたのう。褒めてつかわす」
「ありがとう!」
「なんじゃさっきから馴れ合いよって……妾が言うのもなんじゃが、その……どこか頭でも打ったのか?大丈夫かの?」
あ、やっぱりそういうキャラ設定サービスなのかな?そんなサービスあったっけ?
一応、監修はミントちゃんだし私が全部把握してるわけじゃないんだけどさ。
でもキャラ設定サービスしかないよね。
知らない人だし。
「大丈夫だよ?あとで制服の感想きかせてね!」
「う、うむ、わかった。どうも調子が狂うのじゃ。今料理を持ってくる。待っているのじゃ。」
と、しばし待っていたら
「あ!やっぱり!綾子様〜!こっそりお忍びで来るなんて!も〜!言ってくれたら私の試作料理お出ししたのに〜!」
「ミントちゃん!?」
「私、当分こっちの食堂のサポートなんですよ〜。」
ミントちゃん、アヤと私がデザインした制服を着ている。
似合っているな。
ミントちゃんが生姜焼き、さっきのアルバイト?の子が私のオムライスを持って来てくれた。
「ミントちゃんのオムライス美味しそう!」
「マスターの作ったオムライスじゃ!存分に味わうが良い!」
アルバイトの子がドヤ顔で奨めてきた。わかるよ!この味付けは私には出来ないもん!あ〜、いい匂い!ちなみにマスターとは食堂支部マスターのことである。ミントちゃんはマスターなのだ。ちなみに私はグランドマスターである。
「こら!お客様には尊大な言葉遣いは禁止……!晩ごはん無しにするよ?」
ミントちゃんおこである。
その言葉遣いって支部食堂のサービスじゃなかったんだ。
「晩ごはんが無ければなんの楽しみがあると言うのじゃ〜!嫌じゃ嫌じゃ!」
「ほう?そんなワガママいうなら食後のプリンは1週間なしね。」
「はぅっ!!」
息が詰まった様な音が聞こえた。大丈夫?心臓止まらない?
「すまぬのじゃ……ひっ!大変申し訳ございませんでした。お客様。お料理をごゆっくりお楽しみくださいませ。」
「もう、食べてるよ〜!ミントちゃんのオムライスおいしい!私は気にしてないよ!あの言葉遣いは言葉遣いでかわいいじゃん」
「生姜焼きも美味しいよ!むぐむぐ、私も、むぐむぐ、『妾口調』むぐむぐしゅきだぞ!」
レイちゃん喋りながらだと、お行儀が……
「なんじゃお主らその妾を褒めても」
「リノアちゃん??」
ミントちゃんが笑顔で怒気をバイトのリノアちゃん?に向ける。
ミントちゃん料理好きなだけでなんだかんだ結社だと強いしそこそこ偉いからね?
普通に私は勝てなかったぞ?7年前くらいに模擬戦した時だけど。
そんなミントちゃんの怒気だ。
近くの冒険者さんが冷や汗をかいて……気絶してる……!?
あとリノア?どこかで聞いたような?名前の様な?
「まあまあミントちゃん、でもリノアちゃん制服似合ってるし接客も悪くなかったし逸材だと思うよ!グランドマスターとしは鼻が高い!」
「やっぱり!?そう思います?わかります!?やっぱり私の目に狂いはなかった……!この子を看板娘にして売上を上げて、もっと食堂の拡大を……!」
「あ〜、いいかもね!」
なんて話に花を咲かせていた。
そしたらリノアちゃんがこちらを見つめている……
あ!オムライスか!じ〜っとオムライスをみている。
あ!ヨダレ!
「こら!お客様の料理をみてヨダレを垂らすな!」
ミントちゃんまたおこである。
「だって〜おいしそうなんじゃもん!お腹空いたのじゃ〜!」
食いしん坊キャラか!?と見せかけて少食とかないよね?別綾子が最近食いしん坊キャラだしキャラ被りはダメだよ!?
「まあリノアちゃん、これは料理運んでくれたチップだから!とっといて!後で食べるんだよ!」
リノアちゃんにミルクレープとショートケーキのセットをあげた。
ミントちゃんにもね。
「お、お主、いつも歪みあっていたのにどうしたのじゃ?いや、お客様のお気持ち、大事にいただきます!ありがとうなのじゃ!お仕事がんばります!」
すこし尊大語が混じってたけどお仕事頑張りそうな雰囲気からミントちゃんは黙って微笑んでいた。
しっぽか視える?いや尻尾はないんだけど尻尾をブンブン振り回してるかの様に腰をフリフリしながら喜んでいる。
まるで鱗のついた尻尾があるかの様だ。
あと歪みあっていた?なんだろ。
やっぱり?やっぱりこの子は?やっぱり?
「綾子様のケーキ楽しみです!」
ってミントちゃん笑顔で厨房に戻っていった。
「あ〜!ズルい!私も生姜焼き〜!」
こちレイちゃんが戻ってきた。
「もう頼んであるよ!ワタシ!」
私達は出来る女を学んでいるのでこういったさり気ない気配りをするのだ。
ちょうどリノアちゃんが料理を運んできた。
「なんじゃツキヨミの、オカワリか?羨ましい限りじゃ。妾もオカワリを好き放題したいのじゃ。」
まあ、この尊大な言葉遣いはサービスとして取り入れてもいいな。
あとでミントちゃんに提案してみよう。
「は?リノア?なんで生姜焼き持ってきたの?え?リノア?」
こちレイちゃん目が点で考えがまとまってない様である。
まあリノアちゃんが私がいま想像してる人物と同じ人だっていうなら、そうなるよね。
「おやおや?ツキヨミのが2人おるぞ?卵でも生んでコピーしたのかの?」
こちレイちゃん、ツカツカとリノアちゃんに近づき?
あ、背が小さいから手が届かない!
イスを台にしてリノアちゃんにゲンコツした。
まあ、私も届かないけどね。
「なーにが、卵を生んでコピーしただよ!そんなの出来るのアンタだけだよ!」
「痛いのう……いけずじゃのう。もしかして、お主が妾の知るツキヨミかの?」
「そうだよ!それで合ってる!」
「じゃあこっちのアーニアは妾の知ってるアーニアとは違うということかの?全然知らん子と話してるみたいだったのじゃ。」
「この子はこの綾子は……」
こちレイちゃんが私についてをリノアちゃんに説明してくれた。
「なるほど、そうじゃったのか。綾子とやらすまなかったの……ピンとこない絡み方をしてしまって……。」
「いや、全然気にしてないよ!それに制服似合ってるし眼福ものだぞ!リノアちゃん!これからもウェイトレスがんばってね!リノアちゃんなら看板娘になれる!」
「お、おう、ツ、ツキヨミの……なにかこの子は眩しいのじゃ……歪みあっていたアーニアと同じ魂なのに……なにか眩しいのじゃ。」
「わかる?眩しいよね〜。こうフレッシュだよね!こっちの私も。」
フレッシュ……
「わかるわかる〜!こっちの若いツキヨミもフレッシュじゃの〜!妾達は歳をとってしまったのかの〜?」
なんていったところでリノアちゃん、またこちレイちゃんにゲンコツされてた。
まあ歳の話は繊細だしね、私も自分からはそういう話はしないぞ。
ところで、リノアちゃんって、そうだよね。
全然触れてなかったけど。
「リノアちゃんが話に聞いてた皇龍姫なの?」
「やっぱりちゃん付で呼ばれるのはむず痒いのじゃ……そうじゃ、妾は皇龍姫と呼ばれていたのじゃったな」
やっぱりそうなんだ。
「呼ばれていた?」
「そうじゃ、私は名乗ったわけではないのじゃがな?みなはそう言う。」
「なんで?」
「まあ、この世界にいる龍種を創造したのは妾だからな。多分だからじゃろ?知っておるかわからんがお主らが古龍と呼ぶアレじゃぞ?世界に70匹は創ったのじゃが。まだ何匹かおるみたいじゃの。」
「古龍?あれ魔モノじゃないの?」
「あ〜、定義的には古龍は侵略者の1種なんだよね〜。その古龍が更に生み出したのがドラゴンタイプの魔モノだよ。」
こちレイちゃんが補足する。
更に説明を聞くと。
皇龍姫≒神龍>>超えらない壁>古龍>ドラゴン
の力関係になっているらしい。
「またなんで古龍なんか生み出したの?」
「当時、妾もこの世界の存在ではなかったのじゃが、この世界に来る前のことはあまり覚えてはおらんのじゃが、妾はとにかく腹が減っておっての〜。それで古龍にこの惑星を耕かそうとさせたのじゃ。畑でも作ろうと思っての。耕してる最中も色々食べたがまずいまずい!なにを食べてもまずくての。」
ようは、空腹に任せて世界を滅ぼそうとしたと
「あ〜、それはアーニアさん怒っちゃうのもわかるな〜。」
「そんなこともうせんぞ、妾も見聞を拡めておるからの。流石にこんな美味しいもので溢れる世界は壊しとうないわ。壊すものが現れるなら妾がうち滅ぼしでやるわ!」
「ふふ、おいしいご飯は世界を救う!」
「その通りじゃ綾子!お主は話がわかるの〜!誰かとは大違いじゃわい。」
過去にやらかした……というよりかなりの大罪を冒し世界を滅ぼそうとしたリノアちゃん。まあ話は出来るじゃん。
でもアーニアにとっては許せないことなんだろう。
だってノルくんと守ってきた世界を踏みにじられたんだから。
だからどっちの気持ちもわかる気がする。
私にとっては他人事なのだろう。
だからこそこうリノアちゃんと話していられるのかもしれない。
所詮は人から聞いた話で当事ではないのである。
「まあ、それはそれ、これはこれ。一応は謝ったりしないの?世界を滅ぼしかけたんだし」
「アーニアは話を聞いてくれんのじゃ!」
あ〜、確かに、私もそんなことされたらそうなっちゃうのかも?
日本にいたころも私が【敵】認定しちゃった人から何言われても耳に入ってこないことあったな〜。
【敵】は【敵】でしかないから。
「まあ、アーニア(わたし)は時間かけて無害であることを証明していくしかないよ。すぐには無理。」
「まあ、妾もウェイトレス(アルバイト)がんばって美味しいもの食べてお給料で美味しいご飯を食べるのじゃ!!」
「がんばってね!」
まあ強いならもっといいお仕事あると思うんだけど加減間違えて国が消えました。とかなったら……なんて考えてしまってそこは言わなかった。
「あ〜そういえばリナちゃんって「リ〜ノ〜ア〜ちゃん!??サボり?」
リナちゃんの治し方を聞こうって話たらミントちゃんがカットインしてきた。
激おこである。
ちなみにすっごい笑顔だ。
「マ、マスター!違うのじゃ!いえ違います!大変申し訳ございません!お客様と少し談話を…――ひえ」
「1週間ご飯抜き」
「それだけは、それだけは……!勘弁なのじゃ〜…――ぶくぶくぶく」
リノアちゃん泡吹いて白目である。
リナちゃんのこと聞きたいんだけど?って無理そうなんだが……?
「あの綾子様……。材料費はこちらで持つのでなにかこの子に1週間ご飯を与えてくれませんか?この子に用事あったようですし。1週間ご飯抜き自体は教育なのでご理解ください……!」
ミントちゃん!もしかして出来る女!?これが……大人の女性!?
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