第22話 あれから10年…やべーヤツと対峙する

 フードを下ろしたその子は私と同じ顔、同じ髪型で、どう考えても篠村綾子わたしにしかみえない女の子だった。


「なに?黙っちゃってさ。そんなにびっくりしちゃった?篠村綾子。いやアーニア・フォン・シュテュルプナーゲルと呼ぶべき?この身体の精神体にある記憶だと?この世界の貴女は攻撃特化してるんだっけ?どう成長したかまではわからないけどさ。」


「綾子!無視しなさい!」


 ん?私、攻撃特化じゃなく防御特化じゃない?

 アーニアはそうかもしれないけどさ…なんで?

 攻撃特化ってことになるの?

 

 え?????


「何言ってんの?それよりもその顔で下品な舌打ちしたこと!本当に許せない!」

「怒るとこそこ?」

「そうだよ!ママがそういうことするといつも怒ってたんだよ!あとさっきの人に指差すのもね!私のママはスゲえから!言いつけは守んないとね!仮にも貴女が篠村綾子わたしなら言いつけくらい守れよ!それはママと私への冒涜だぞ!」


 私が引きこもっていた時も優しかったママ!

 冒涜は許さん!!


「ハァ、この子、本当に篠村綾子?記憶にあるママとやらには確かにそう教育されてるみたいだね。でもこの精神体の記憶にある篠村綾子はそんな感じじゃなかったよ」

「かわいいでしょ!この綾子」

 アヤが何故かドヤ顔してる。かわいいとか言うなあ!


「でも貴女は綾子ではないはね。侵略者ね。どこの木からやって来たのかしら?」

「そこまでわかってたのね。流石はほぼ女神そのままの写し身なだけはあるね。いや今は転生体?」

「その知識まであるって事は貴女の起源は別の木の女神の写し身ってところね。」

 話があまり追えないけど、この世界は1つの木になっていて女神がこの世界を管理している。それは知っている。けど別の木もあるの?


「まあそうだね〜。」

「でもなんか引っかかるのよね。別の木からこちらの木の世界にはこれないはずよ。それにこちらの木の世界にいる現地生物を改造された後の侵略者特有の魂核の穢れもないし。その身体自体、綾子のものよね。恐らく別の世界の。それに神がやりださないと別の世界には跳べないはずよ。branch of originateの様にね。」


 へえ、そうなんだ


「流石だね〜。ほぼ正解。貴女が言ってる侵略者って多分別の木の子だよ。私なりにこの世界の感性というものをこの身体を得て知ったけど、あの子達はただの妬みだし。元は同じ女神だったのに創造の種をまいた後、色んな女神に別れてしまったもんね。ねえ、アヤ。この世界は色んな木の女神から妬まれているんだよ。知ってる?」


「貴女も妬みで来たのかしら?それと、貴女もアヤってことになるのかしら?それにこの世界に迷惑をかけてる時点で十分侵略者よ?」


 はあ?アヤ?こいつの中身がアヤ?んなわけねー!


「わかったわかった!悪かったよ〜!私の目的はこの木の世界の観察。妬みによる破壊とかじゃないし!やり方は精神体への憑依。魂核汚染しちゃうようなやり方は私も好きじゃなくてね〜。写し身でもよかったけど怒られちゃうから、この木を管理してる子に!この身体は別の世界の篠村綾子を乗っ取ってから、私の本体である女神に直接外から穴を空けてもらってこの世界へ来たわけだ。」


「乗っ取ってる時点で十分迷惑よ。そのやり方しかないわけ?あんたのとこの女神、今頃この世界の女神とルナに叩き出されてるでしょ。貴女もその身体の綾子がいた世界で袋叩きに合いそうになってこっちに逃げて来たとかそんなのでしょ?」


「このやり方しかできないしなあ。私という存在を増やす手始めにそこの龍の子って思っんだけど防御に特化してるのか全然侵食出来ない。どうなってんのこの子。この身体の綾子がいた世界だと大勢にバレて対策されてもう無理そうだったし。でもこの世界なら、特にそこの篠村綾子なら出来ると思う。なにか物凄く、近いものを感じる。」

 え、やめて、近くはないでしょ。


「まあリナちゃんはインテリだからね〜、無理もないわ。でもこの綾子は特に無理だと思うわよ〜。」

 黙って聞いてたけど私は口を開く。

「あのさ、この世界を知りたいのは良いとしてさ、迷惑だから……。その身体の篠村綾子にもこの世界にも。リナちゃんも迷惑を被った。篠村綾子の記憶を知ってもそれがわからない?ノルくんに嫌われちゃうよ?」

「確かに記憶にあるノルくん……。それは嫌だな」

 まあそれはその身体にあるワタシの精神体の記憶なんだろうけど。


「そもそもだよ?妬みとかないなら女神同士で仲良くしてさ木を観察させて貰えば?そしたら貴女みたいのが来なくてこっちは迷惑かからないんだし。」


「無理!私の本体は極端にコミュニケーション取れないんだよ!今は篠村綾子になってるからこうは話せるけどさ!何回か話しかけようとしたけど無理だったんだよ!だからこうして……」

 

 知らないよがんばれよ!

 それが迷惑をかけていい理由にはならないだろ……。


「もう、仕方ないわね〜。お〜い!女神様〜!見てる〜?この子の本体!木の枝に穴を空けた女神の子と仲良くしてあげて〜!多分、貴女から声かけないとダメよ〜。自分同士仲良くしなさい!こっちは仲良しよ〜!」


 アヤがいきなり空に向けて叫びだした。

 しかもこっちは仲良しよー!ってなに!?少し吹き出しそうになったよ!


「アヤ様、数千年ぶりに神託です。」


「え?早い!」


「まあ、仕方ないわかったよ、とのことでした。」


 女神様軽くね!?


「これで解決ね〜、とは言えないか。さて、その身体から貴女は出て行きなさい。」

「ありがと……。わかった。あ、あの、ノルくんに会ってからでもいい?ほら、私の記憶は本体に反映されるからその前にさ……」


 ノルくんに会いたいってのはわかるなあ。

 まあいいんじゃない?迷惑かけないなら。


「まあそのくらいならいいかしらね……ノルくん絡むと女神同士で揉めそうだけど、私達には知ったこっちゃないって感じよね〜。」


 アヤ、女神にアタリキツくない?なんかあったの?しかもノルくん絡みで揉める女神ってなに??ノルくん?女神になにをしたの?


 まあ難しい話は今は考えないでいっか……正直話が追いつかないでパンクしそう……。 アヤの事も……私のことも。

 写し身ってなんだよ……。


 なんて考えてたら

『そこのワタシ!その侵略者とみんなに防御結界かけて!半径50m以内の内側にもかけて!とびきり硬めの!』


 アーニアわたし?なんで!?

 防御結界術式発動……50テラトンの攻撃にも耐えられるよ!!


 ん?なんか飛行機の様な音が……キーンって――


「うおりゃー!!!!」

 ドゴン!チュドーン!!!!!


 え!土煙で全然見えん!!なに?キノコ雲が出来そうな音がしたぞ!

 昔、なんかの動画見たときに聴いたことある!

 一瞬アーニアわたしが見えたから防御結界かけといた……

 ――けどどうなってんの?


 土煙が晴れていく

 そこには、アーニアわたしが立っていた。

 そして侵略者だった別世界の篠村綾子は……吹っ飛ばされていた……。

 私の結界で気絶程度で済んでるけどね……。


 まあ丸く収まってはいたけど状況わからんと先手必勝しちゃうよね。

 これは侵略者のワタシ、篠村綾子に付いてる写し身?とやらにも迷惑をかけた罰として納得してもらうしかあるまい。

 リナちゃんやみんなにも迷惑かかってるしね。


 ってあれ?あ


 そこにあった筈のものは無残にも木っ端微塵になっていた。

 とっても大事にしていて、これからも未来永劫大事にする予定だったものだ…


「あ……ああ〜……ああああ、わだじの……ノルぐんハウスが〜……うわあ〜ん!!!嫌だよ〜!!」


 アーニア許すまじ!!!

 許さない……許さない……絶対に許さない!!


「こら!そこのワタシー!!よくもノルくんが作ってくれた家を壊してくれたな!!今日こそ覚悟しろよ!」


 私は衝動だけでアーニアわたしに飛びかかっていった!


「え!?ちょっとまって!?あ、あそこの木の残骸!?」

「うるさいー!!!」

 頭に血がのぼり過ぎてとにかく暴力に支配されていた。

 所謂八つ当たりである。

 あの時にノルくんハウスにも防御結界かければ良かったのだから。

 ノルくんハウスが壊れたのはそれを怠った私の落ち度でもある。


 当たらない……!当たらない……!攻撃が当たらない…………


 アーニアわたしアーニアわたしで気の毒に思っているのか、反撃はしてこない。それが余計に私を惨めにして、腹立たせた。しょうもない癇癪であるのは承知の上である。

 そろそろ疲れて来た……でも一発くらい当てたい……これは!?貰ったー!!いける!


 いいの決まりそうだったのだけど…


 間に割り込んで私達の戦い……いや私の暴力行為を止める者がいた。


 篠村綾子だ。

 別の木の女神の写し身に憑依され別の世界からやってきたワタシだ。

 いまは憑依されてる状態?それとも?


「なんで味方同士で争ってるの?」


 なんというか……これは多分、憑依された別人ではなく……ちゃんと篠村綾子わたしじゃね!?


「周りをみて?みんなの迷惑になってるから、一旦落ち着こうね。」


 アーニアわたしが殴られた……気絶する。え?一発で?あのアーニアわたしが?

 え?次は私?殴られた……痛いよ


「硬いね……なにこれ……、じゃあこれをくらいなさい。」

 ちょっと!!それアーニアが本気のときに使うパンチじゃん!なんで使えるの!?アーニアがオリジナルじゃないの!?やばいやばい……うわ――


 私はそこで意識を手放した。




 気がつけばベッドで寝ていた。

 隣のベッドをみればアーニアが寝ていた。

 時計を見てみると、あれから6時間くらいは経ってるのかな?

 もう夕飯時である。

 あれ?ここは……!?ノルくんハウスじゃん?アーニアに壊されたはず…?

 どういうこと?

 服を着替えて下へ降りてみる。

 ここは2階なのだ。


「綾子!おはよー!久しぶりだね!」

「レイちゃん!久しぶり!」


 大親友レイちゃん成分が足りなかったなあそういえば!

 他にもダイニングにはノルくん!ノルくんがいる!あとはアヤとツムギちゃんとリオちゃんにおじさん。

 ナッちゃん2人にこちレイちゃんと…別の世界の篠村綾子わたしがいた。

 この篠村綾子わたしも「アーニア」なのかもしれないけど。

 リナちゃんは……いない。

 寝てるのかな?


「私のこの家、壊れたと思ったんだけど……」


「え?あ、あー……、綾子二人とも疲れちゃったのかすぐ寝ちゃったから夢でも見ていたんじゃないかしら〜……」


「でも木っ端微塵になった木の残骸を見たんだけど……」


「きっと近くにあった並木の残骸よ!この家は無事だったわよ……!ね!ねえ!みんな!?」


 みんなが激しく首を縦に振る。


「あ!夢かあ……!見張りとかやって寝不足だったから寝ちゃったのかなあ……?」


「きっとそうよ!ほら!ご飯出来てるわよ〜!レイちゃん達が作った和食よー!」


「和食!レイちゃんありがと!」

 こちレイちゃんが作ったのかな?


「綾子、私も卵焼きと味噌汁作ったから!」


「レイちゃんが作ったならなんでも美味しい」


「嬉しいこというなあ!コヤツめ!」


「えへへへ!本当においしいよ!」


 本当においしかった!レイちゃん好きな人の為に腕磨いてるんだなあ!けどレイちゃん誰のこと好きなんだろ?はて?


 でも、ノルくんハウスが壊れた夢はね、なにか引っかかるのよ…?でも無事ならね……?全然問題なし!

 

「あれ?この家、壊れたんじゃなかったっけ?私同士で戦ってなかったっけ?」


 アーニアわたしが起きて降りてきた。

 私と同じくだりで夢だ夢だと言われていた。

 なんでみんなそんな必死に夢だって説明してるの?まあいいか……。


「ご飯、凄くおいしいね。しかもレイちゃんがご飯作って美味しいとか…。」


 そう言い出したのは別の世界からきた篠村綾子だ。


「美味しいでしょ!持つべきは料理の師匠だよ!?」


 そう返したのはこちレイちゃんである。(こちらの世界のレイちゃん)


「師匠?」


「そこに座ってる綾子だよ」


 と、私を指差した。

 あ、指差しちゃいけないんだよ!


「もしかしてbranch of originateの過程でこの世界に立ち寄ってる綾子わたしってこと?」


「そう、料理が上手なんだよ!?結社食堂を作って世界中に支部まで出来てすごいんだよ!」


 へ、へへへ、そんな持ち上げるなよ!こちレイちゃん!


「私も料理は出来たけどそんな差が出るもの?」


「それはね」


 ここで私の黒歴史がほじくり出されるものの、話していくと、やっぱりこの綾子わたしアーニアそっちのわたしと同じく16歳のころにこちらへ来たみたい。

 私は1年遅れて17歳だけどね。


「そんなこともあるんだね」


「やっぱり貴女は私がこの世界に来る前に立ち寄った世界の私に色々教えてくれた「アーニア」、で合ってる?」


 そうアーニアわたしが口を開く。

 あいつもアーニア、こいつもアーニア状態でややこしい……。


「おそらくね……」


「そのローブには見覚えがあるもの。うちのとは少しデザインが違うけど。」 


「色んな世界があるだろうし確実とはいえないけど、その可能性が1番高いかもしれない。その前に……――私が乗っ取られたせいでこの世界には迷惑をかけてしまった。こればかりは申し開きのしようがない……――本当にごめんなさい。」


「まあ、一応は解決したし?いいんじゃない?それより憑依してたのは?」


「貴女が、この世界のアーニアわたしが殴って弱らせたと同時に抑えこんである。もうなんにも出来ないと思う。一応、世界に空けた穴を通って戻る方法とか聞き出さないとだし……――当分ご厄介になるけどいい?」 


「それは仕方ないよ。もう既に1人綾子わたしがいるしもう1人増えたところで…それに魔科学について情報共有させてくれたら嬉しいなあ……」


 まあ結社はお金あるし1人くらい養う甲斐性はあるでしょ?え?そういうことじゃない?


「それでよければ喜んで!お世話になります!」


 綾子わたし、増え過ぎじゃない?

 っとまあ今日は疲れすぎたし解散!っていっても私の家だからみんなそれぞれの部屋に。

 リオちゃんとおじさんリナちゃんを見舞ってから帰った。

 綾子〜ズ3人とアヤは1番広い私の部屋だ。

 レイちゃんはレイちゃんズでなんか色々と会議があるらしい。

 ナッちゃん達はハンバーガー持ってどっかいっちゃった……。

 まあそんな部屋数多くないからねこの家……。

 ツムギちゃんはリナちゃんの部屋で護衛件、お世話をしてくれている。

 ノルくんはダイニングで寝るっていってた。

 私の部屋で寝てももいいんだけどね!?

 

 


 別世界のワタシがいい始めた。

 もう別綾子と呼ぼう!心の中で!

「料理…私にも教えて貰えるかな?元の世界に戻ったらお兄ちゃ…じゃないノルくんにさ……食べさしてあげたい……」


 この別綾子も同じ篠村綾子だもんね。

 その気持ちは凄くわかる!


「オッケーだよ!明日の朝から早速ね!」

「やったー!」


 なに作ろっかなー!?


「私も一緒にやるよ。今日はレイちゃん達においしいところ持ってかれたから。」

「それは私も同感」


 っとアーニアズ2人が言い出した。

「確かに料理おいしかったよね!師匠としては鼻が高い!」


「あー、確かにドヤ顔だったわね!レイちゃん!こっちの世界のレイちゃんの方ねー!」


「ドヤ顔のレイちゃんも可愛いかったね!」


 っとここまでキャッキャウフフと私は話していたのだけど、なにか私以外の綾子ーズとアヤとは何か温度差を微妙に感じるのだが??なぜ??

 アヤは最終的には優しくそうだね、と返してくれるんだけど、アーニアズについては「まじかこいつ?」みたいな顔された。


 そして別綾子もうひとりのアーニアなんだけど、この世界のアーニアにとってのアーニアみたい。

 アーニアがこの世界にくる前に立ち寄った世界のアーニアということになる。

 ややこしいので別綾子と心で呼ぼうね。

 あのアーニアをワンパンするほどの実力である。

 あれ?夢なんだっけ?あれ〜?

 

「あれ?そういえばこの世界にもう1人綾子わたしが来た時点でレイラインで誤作動なりしなかったの?私が来た時に起きたあのヤバいやつ。」


 レイラインのメンテを手伝う様になってから、あれはかなりヤバい障害だったんだなあって思った。

 だから気になった。


「一応、3人目の綾子わたしとかは普通はありえないけど万が一を考えて、対策を強化はしてたんだよ。」


 あー、二の轍を踏めないもんね。


「でも、3人目が来た時点で検知されるはずなんだけどなあ……魂核がダブらないか1分に1度自動でチェックしてるから。」


「あ〜、私自身乗っ取られた状態で朧げだけどこの世界に繋がる穴の手前からもこの世界のレイラインにアクセス出来たからこっそり改竄して入って来たんだよ。私の知識を悪事に使うとか……。あ、あとなにかステータスのシステムをなにか弄ってたかも?どこか改竄されてないか確かめた方いいかも。私の中で抑えてる子にもなにしたのか聞かないとね。憑依ってなんだよ……理に障ってないか気になるし。この世界のツムギちゃんがなにもしてないってことは大丈夫なんだろうけど。」


 うわあ、これ改竄されてないかのチェックって私とセレナでやることになるんだよねきっと。

 まじ?パーっと一瞬で出来ないかな?


「総点検か〜気が滅入ってきた、仕事したくないよ〜……」


「ごめんね、私が乗っ取られたから」


 本当だよ!なんて言えるわけもなく、本気でそう思ってもない。

 だけどアーニア級またはそれ以上の別綾子もうひとりのアーニアでも乗っ取られたんだ、仕方ないって思っちゃうよ。


「あ、いや、なんかごめんね、気を使わせちゃって」

「点検は私も手伝うからね。レイラインは私のいる世界のものとあまり変わらないみたいだし。」

 

 まじで!?

「やったー!!ありがとうございます!」


「ふふ、なにかやる気なくしてたのかと思えば初々しい上に清々しいほど素直だね。貴女もこの頃はこんな感じだったかな?」


「どうだったろうね、でもたまに本当に同じ綾子わたしなのか疑っちゃうわ。」

 あ!アーニアさん!失礼だな!


「それは私も思う。」

 別綾子アーニアさんも!?


「まあ、引きこもってたか引きこもる前にこっち来たかの違い?いやなんでもない……私なりにがんばるよ」


 う、自分で黒歴史をえぐってしまった…。


「がんばってね。でも貴女、防御結界すごいよね。」


 アーニアわたしが褒めだした。どうした?仕事の量でも増やす前の飴か?鞭の前の飴か?

 でも…前にもそれ聞いたけどそれほど?


「すごい硬かったね……確かに。」

「ん?別綾子わたしよ。どこで硬いって確かめたの?あれ?夢じゃなかったっけ?あれ?」


「あ!あ〜!あれよ!綾子!こっちの綾子がこっちの綾子に攻撃した時に防御結界かけたから、その時のことよね?こっちの綾子?」

 アヤがアーニアと別綾子の頭に後ろから手をおいて示し早口で説明した。

 別綾子はもの凄い勢いで首を縦にする。


「あ〜!なるほどね!そういうことか〜!」


「あの防御結界の術式、あとで教えてくれない?貴女の成果を簡単に貰っちゃ悪いかもしれないけど私の世界のレイラインの結界に組み込めたらな…って思ってさ。」


 そういうことなら全然いいよ!


「まあ…解読出来たらの話なんだけど……」


 アーニアがそう呟く。

 別綾子は「いや、そんなまさか〜」とか言ってる。そうだよアーニアの術式をベースに組み上げたんだから普通に読めるでしょ!


「これが私の防御結界の術式だよ。」


 組み上げた式を共有した。


「なに?これ……この世界での術式理論?」

「そうだよ……一応、この世界のノルくんや私やレイちゃんで築いた、とは言えベースは貴女の世界のものとあまり変わらないし普通なら読めるはずなんだけどね…」


 え?読めないの?これはこうなってこうで。

 あれ?私もすぐに読めないや…どうやった作ったんだ?これ…


「私自身も色々やりすぎて、よくわからねーわ。ロストテクノロジーだわ」

「まじか……でもよく作ったよねこれ。これを読みとくことが出来れば色々と流用出来そうな気もするし魔科学が物凄く発展しそうなんだよね〜。」


 え!?私、お手柄じゃん!?


「この調子でがんばろうね綾子」

 アヤが頭を撫でてくれた。なんか頑張れる気がするなあ!


 色々話してたら夜も遅いし私やアヤは寝た。

 アーニアズ2人はなにか難しい仕事みたいな話してて「この術式の解析と解読」がどーのこーのって……――なんの話だろう?アーニアって名の付くものは仕事熱心だねえ。

 あ、私も(仮)は付くもののアーニアになっちゃったんだっけ?

 まあいいや、私はもうクタクタだよ。


 明日はリナちゃん目が覚めてるといいなあ。

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