第21話 あれから10年…サブマスに会う!

 1時間ちょいかな?ノルくん水の良さについてツムギちゃんに説明していたんだけれども、一向に理解を示してくれない。


 どうして


 とまあそんなこんなで冒険者ギルド本部の応接室で時間を潰していた。


「そろそろ1時間経つけどサブマスはそろそろかな?ノルくん水しまわないと。」


 ちゃんと時間にも気がつく私!えらい!!出来る女はちゃんとしないとね。

 サブマスってことはかなり偉いよね?粗相のないようにしないとね。


 なんて身構えていたら、ドタドタドタドタ!!って走ってくる音が聞こえ、勢いよくドアが開かれ女の子が入ってきた。

 だいぶ肩で息してるけど大丈夫??


「ハアハアハアハア、遅くなってしまい申し訳ないっす!はじめ……まして、わたし、

ハアハア、サブマスのハアハアハアハア……リオっていうっす!ハアハア」


 サブマスだった。歳は同じくらいか少し下かな?って、私27歳だったわ!!10個と少し下の個かな!?


「大丈夫?リオちゃん?はい、これ結社特性ポーションだよ。」


 アーニアの顔が刻印されてる産業廃棄物だ。

 現行品は描かれていない。

 私の空間術式の様なものでつくった異空間に2000本くらいストックがある。

 これ効くんだよね!!


「ハアハア……かたじけないっす!ハアハア、」


 ゴクゴクゴク!リオちゃんいい飲みっぷりだねえ!!

 飲み終えたくらいにリオちゃんの目がカッと見開いた!!


「これ!なんっすか!?ポーションじゃなくてエリクサーじゃないっすか!?呼吸はまだ乱れてるっすけど効きすぎっすよ!!しかもなんかおいしいっす!今からまた討伐できそうっす!!あれ??ずっと痛かった膝も治ってるっす……」


「あれ?ポーションだと思ってたんだけどな……。」


「アダムさんポーション持ってる?」


「はい、持ってますよ。」


 おじさんがポーションを出してくれた。

 見るといわゆるフラスコが丈夫になったような瓶にコルク栓がしてあるようなもので色も青かった。


「飲んでみても大丈夫?」


「いいっすよ!」


 栓を抜いてみた、匂いは?普通?ちょっと薬品臭いかも。

 アヤがニヤニヤしてみてるんだけど?まあいいや飲んでみよ。


「うえ!!まっず!!」


「これがポーションっすよ!!」


「うへえ」


 しかめっ面していたらアヤがめちゃくちゃ笑顔で見ていた。


「この結社ポーションって通常の市場だとバランスブレイカーになるから流せないんだって言ってたわよ。どうしてもって時にしか流通させないんだって。結社だと日常的に使われているけどね。ほら、それよりも挨拶が忘れているわよ。」


 あ!そうだった!出来る女失格になっちゃう!


「初めまして!リオちゃん!私、篠村じゃなかった、アーニアと申します!」

「私はアヤよー。」

「ツムギです。」


「よろしくおねがいしますっすー!ってあれ?昨日連絡してきたのアーニア様っすよね?惑星の裏側からもう来たっすか?」


 う?流石に二人いるなんて事情しらないか


「それはなんというか話せば長くなるんですが……」


「なにか事情がおありなんすね!!わっかりやした!それで!本当はギルマスのリナさんが特務依頼を出してくれる手はずだったんですけど私らわからねーんすよ。でもリナさんずっと音信普通でぶっちゃけもなにも行方不明なっちゃったんで一緒に探してくれるって昨日言ってくれたのめちゃくちゃありがたいっす!」


 リナちゃん行方不明なんだ。


「一応、私も結社に入れる候補生として内々定はもらってるっす。ある程度リナさんが普段なにをして、どういう格の人くらいは知っているっす。あのリナさんに万が一なんてことありえないと思うっすけどやっぱりずっと心配なんすよ。ご助力いただけると本当に助かるっす……」


 リオちゃんとてもつらそうな顔してた。


「わかった。一緒にリナちゃん探そう?私も心配だし。」


「ありがたいっす!」


「私からもお願いいたします。貴女方が来られた時にはリナ様はもういませんでした……。ギルドマスターが行方不明なんてことが知られたら、なんて思い情報統制の下で以前の様な対応をしてしまいました。その節は申し訳ございませんでした。また、リナ様は私達にとっては母の様な、姉の様な方なので結社の皆様のご助力がいただけると本当に助かります。私も結社の方々とは縁があり、お世話になっています。」


 リナ様……と呟きながらおじさんが悲痛な面持ちでいる。


 ああ、おじさんリナちゃんのことが好きなのね?まあリナちゃん神龍だし見た目歳食わないしね。

 若いころから恋してたのかな?わかる!わかるぞ!


「リナちゃんなら大丈夫だと思うから探しにいこう?」


「はいっす!!」



 ここからは、リナちゃんを最後みたのいつ?などギルド職員に聞き込みが始まった。

 私?そんな大勢の人と話すコミュ力なんてないから応接室で待ってたよ。


 それで――

 最後に職員が見たのは共通して22日前。

 東通用門から出て行った。

 その先にあるのは?帝国のお城である。

 その間には結社の施設も目ぼしい建物もほぼない。

 何故なら、ギルドとお城を繋ぐ道があるだけだからである。

 この道はリナちゃんが城に行くために大昔に特注してつくったリナ専用道路『リナロード』である。まあ城の人たちもギルドに来る用事があれば使うらしいけど。

 

「じゃあお城にいってみる?」

「いっても大丈夫っすか?リナさんしか普段いかないっすよ?」

「あ~、それなら大丈夫よ。私と綾、じゃないアーニアがいれば入れるわよ。」

「え!?そうなの?私がいれば入れるの?じゃ行こうか。」

「え?確かにアーニア様はリナ様の姉貴分とはお聞きしてたっすから、いけるのかも?っす。」

「じゃあいきましょ!」

「あーそうだアダムさんも着いて来てくれると助かるっす。」

「あの城ですか、まあ私もある程度お城は知っていますから同行させていただきます。」


 おじさんお城詳しいの?じゃあ一緒に来てもらいましょう。

 レッツお城へゴー!


 リナロードすげえ!まじでお城まで一本道――途中本当になにもない、花壇とかはあるけど。


 お城の前まで着いたけど――やっぱデカいなこの城。

 結社本部が本当にボロ屋敷、いや風情のある屋敷に見えてくる。

 

 やっぱりいるよね、門番さん。

 また門前払いとかにならなければいいけど。


「あ、アナタ様は本日はどのようなご用事で……?

「久しぶりだな。いやなに、もうここに来るなんてことはないだろうって思ってたんだけどな、ちょっくら甥っ子の顔を見にな。結社の皆様もいる。特務だと伝えてくれないか?」

「それに結社の皆様も!!??」


 お、おじさん!!??


「か、かしこまりました!お取次ぎして参りますので暫しお待ちいただけますようお願い致します!」


 門番はダッシュでお城に消えていった。だいぶ慌てていたけど?

 しかし、おじさん何者??


「あー、アダムさんは先代皇帝の弟さんっす!普段は隠しているっすけど」

「偉い人だったんだ!!」

「いえ、もう家名も捨てて今はただのアダムプレヒトです。」

「そうなんっすよ、リナさんに惚れて家まで飛び出してギルドで働いてるっすよ!」

「あーやめろよサブマス!いやリオ!もう取り繕うのが面倒になるわ!!」

「そっちの方がアダムさんっぽいっすよ。私がサブマスになってから敬語使いはじめて正直気持ち悪かったっす。」

「まあ一応はお前が上司だからな。敬語くらい使うさ。」


 おじさんやっぱりリナちゃんのことが好きなんだね。

 皇族までやめるってよっぽどだわ。


 ん?私は不可抗力ながら異世界まで来てしまいましたが、何か?



 門番さんまだかなーって10分くらい待ってたら明らかに偉い感じの人が出てきた。


「伯父上!!お久しぶりです!あと結社の方――は……」


 この感じから皇帝さんかな?なに?

 こっちみてめちゃくちゃ青い顔して固まってるんだけど?

 ポーションいるかな?


「大丈夫ですか?ポーションならありますけど」


「ひっ!だ、大丈夫です。」


 なんか失礼だなこの人、ひっ!とか言っちゃってるけど。


「こら!失礼だろ!このバカ息子が!」


 おそらく皇帝って感じの人の隣の人が皇帝に怒鳴り始めた。え?皇帝って一番偉いんじゃないの?ってあれ?隣の人どこかでみたことあるぞ?って……あ!!


「リガルドくん??」


「はい!リガルドくんです!!聖女様!!」


 ニヤニヤしながらリガルドくんが答えた。


「え!?もしかして先代皇帝って、リガルドくん??」


「そうですぞ!ノル兄に言われて今の帝国がちょっとアレなので顧問として面倒をみています。ミラルド!ほら挨拶は!!」


 ノル兄?


「ご、ご無沙汰しております。その節は大変お世話になりました。それで、今回はどの様なご用件で?」


 え!?初めて会うけど??アヤを見た。


「あー多分、あっちのアーニアのことね。ふふ、だいぶ怖がられてるわね。」


 あーそうなんだ。怖がらせない様に丁寧に丁寧に


「私はなんというか、細かい昔のことは気にせず行きましょう!今回は人探しの協力をお願いしに来ました。お邪魔してなんですが、ここでもなんですのでどこか落ち着けるところに入れていただけないでしょうか?」


 皇帝がそれはそれで固まってしまった。


「ミラルド!何も裏なんてないから!固まってないで返事しろ!」


 リガルドくん!グッジョブ!


「でも口調が優しすぎてそれはそれで、いえ、はい!それではこちらへどうぞ」

 アーニアどんだけ怖がられてんのっ!?


 私達はめちゃくちゃ豪華な場所へ案内された。

 普通の部屋でいいんだけど?

 おそらく宰相とか大臣的な人達、軍のお偉いさんっぽ人達がずらーっと並んでるんだけど?

 怖いんだけど?

 みんな冷や汗かいてるけど?

 帝国側はリガルドくん以外顔色悪いけど!?

 アーニア怖がられすぎじゃない?

 え?私、ここで話すの?え?無理無理無理!!


 ツムギちゃん!!


「私達がこちらへ伺った件ですが――」

 ツムギちゃんが説明してくれた。



「ふむ、リナ様が来ないなあと思ってはいたんじゃが、そういうことになっておったのか」

 リガルドくんが口を開く。というかリガルドくんの方が皇帝っぽいね。

 軍や諜報部を動かしてでも調査及び捜索に協力してくれることになった。

 まあ国が手伝ってくれるのは嬉しいよね。帝国の協力もあればなにかわからないかな??


 やーっとお偉いさん方が退室してくれて肩の力が抜ける……――めっちゃ緊張した!

 いまここにいるのは私達とリガルドくんの6人だ。


「リガルドくん、リーシャちゃんはお元気ですか?」

「姉さんとは連絡とっていますが元気ですぞ!最近、結社に入りたがっておってですな色々と勉強しているみたいです。」

「へえ、リーシャちゃん結社に入りたいんだ、ってことは長生きしたいのかな?」

「ま、まあ、今の今までエイバナの村開拓ばかりでしたからな、その色々と人生やり直したいんじゃないかなって、その……生娘ですからな姉さんは。詳しいことはわかりませんが。」

「あー、リーシャちゃん言ってたね…。そういえば。」


 私も生娘だからなんとも言えないんだよね。


「結社には王族、皇族の枠があるしビナス開拓とかそういうの枠があるから大丈夫と思うわよ。いま結社食堂の波もあるしね。それでなくともここにいるアーニアが認めた人なら採用になると思うわよ?それでなくとも私が面接して大丈夫そうなら私の郷でもいいし?」


 アヤが人事について詳しい件について

 私にも人事権があるのかな?まあ、そこはね後々アーニアに聞いてみよう。

 リガルドくんの弟のおじさんから「結社に入れば……」とかボソっと聞こえたけど私では今はなんとも


 それにしてもリナちゃんどこいったんだろ?おじさんめっちゃ心配してるよ?


---------



 3日が経過した。


 国の総力をあげてリナちゃん捜索は続いているが手がかりはなし。

 22日前に帝国側へ来た様子もない。

 となると、リナロードで消えたってことになる。

 転移なんて便利な魔法や魔科学術式があるわけでもないし、リナちゃんが龍化して飛んだとすれば目撃もされているだろう。

 よって、リナロードで消えた。

 と見解が高まっている。

 でもどうやって?となるので捜索の進展はほぼなしと言える。


『アーニアさん、リナちゃんどこいったかわからず手詰まりになって来たのだけど……』


 報連相は大事なのでアーニアわたしに相談してみた。


『う〜ん、こっちでも居場所特定マップであの子の波形パターンで軌跡を追跡したんだけどさ、どう考えてもリナロードで消えてるんだよね。そちらの調査結果を踏まえてもそう結論づけるしかないわよね。』

『やっぱり?リナちゃん消えたってことは、その死んじゃった?とかはないよね。心配なんだけど……』

『一応バイタルサインはあるのよね、だから生きてはいると思う。バイタルサインと居場所マップの連携が出来てればね〜。改良しないとね。』

『そっか〜。でも居場所特定マップってノルくん以外でも使えたんだね。あれ?術式「赤い糸」をリナちゃんの魔力波形パターンに置き換えたら使えない?』

『おお!!それだ!伊達に私じゃないね!こっちからじゃ距離あり過ぎるから貴女の方でやってくれる?あの子の魔力波形パターンを送るから!』


 伊達は余計だよ。伊達じゃなく同一人物だから。

 アーニアわたしからリナちゃんの魔力波形パターンサンプルを貰って術式に組み込む。術式「赤い糸」も私なりに解析、改良をして基となったアーニアの術式からはだいぶ変わっちゃってるんだけどね?

 なんで改良したかって?ノルくんの魔力波形パターンが可変的に変わったりするからその辺の自動調整機能とか諸々ね。

 私が次の世界にいった時にすぐノルくんを見つけられる様にね。


 話がそれちゃった。


 とまあリナちゃんの波形パターンも可変的に自動調整して発動すれば見つかるはず。


「というわけで上司の助言でリナちゃんの魔力波形パターンからリナちゃんがどこにいるか探します。」


 帝国のお城、玉座の間にてお偉いさん方に囲まれながらそう伝えた。

「アーニア様の大魔法だ……」

「これが一般的に使われたら逃げ場なんぞないな……」


 なんて聴こえた。

 なにから逃げるの?


「綾子?なにそのノルくんを探す為だけに開発したような術式は。」

「いや、これは私じゃなくワタシがね。作った術式みたい……。」

「あ〜、なるほどね。私も真似してみようかしら?」

 なんてアヤが言い出す。

 まあ今はリナちゃんの捜索優先なのでひとまずそれは置いて術式を発動させる。

 わざわざ「赤い糸」なんて口にださないよ?

 

「じゃあ、行くね」


 ド派手な術式紋が浮かびあがる。

 これは私の趣味だけどこちらの方が出力も感度も良いのだ。


「すごい魔力だ…――」

「これは戦略級魔兵器なんて蟻にみえる力だな」

「アーニア様の力はこれほどなのか……?」


 いやいやアーニアの力はこれくらいじゃないよ、私いつも瞬殺されるしアーニアに比べたら私が蟻だよ?


 ――っと術式が組み上がり光を放出する。

 ノルくんの場合は赤い光なんだけどリナちゃんだと濃い紫になるみたい。

 光が射すってことリナちゃんはそこに存在するってことだ。

 光が射す方向に向かってみる。


 やっぱりリナロードなんだよね。


 リナロードのギルドとお城のちょうど真ん中くらい。

 そこに光が向かっていた。

 そこへ行ってみると?――なにもない。


「あれ〜?ここに光が向いてるからリナちゃんここにいるはずなんだよね〜。おっかしいな」


「ん〜?綾子?あれ、光の先が色んな方向に向き変わったりしてるけど?」


 ん?あ!なんだこれ!?

 普通であれば光は突き刺さってそこにフラッグのようなエフェクトがかかるんだけどね。

 光は突き刺さらずまるで「この辺なんだけどなあ、おっかしいなあ」とキョロキョロしているみたいになってる。


 周辺になにかないか私達でも探したけどなにも見つからず。

 リナちゃんどこ?


「ひとまず上司に連絡して判断仰いでもらうわ。」


 とアーニアわたしにひとまず報告した。


『ツムギちゃんそこにいるんでしょ?多分、マズい。』

『はいアーニア様、なにがマズいのでしょう?』

『この世界の枝に歪みは生じている?』

『Branch of originateの影響でそれがノイズとなって細かい歪みまではわかりかねます。まさか!?』

 なんの話?branch of originateは確か私が次の世界にいく為のなんかよくわからんけど現象でしょ?歪み?

『そのまさかかもしれない。敵がその隙を狙って潜んでいるかも……リナも敵の歪みに閉じ込められたのかもしれない』


 敵?


『……その可能性はありますね。今までは派手に歪みを作ってこれから来ますとばかりの知らせはあったので対策は出来ましたが…今回がもしそうであれば姑息且つ、今までにないくらいに狡猾な相手かもしれません。』


 ???


『そこにいる人で細かい歪みまで検知できそうなのはツムギちゃんだけだから、お願いツムギちゃん。』

『かしこまりました。アーニア様。私とて枝を切り落とすだけが仕事ではありません。この世界の者達同士の争いには干渉はしませんが、理を乱す『侵略者』には容赦は出来ません。神が愛したこの世界を仇なすものは排除します。』


 侵略者??聞いたことあるよ!


『そう言ってもらえると助かるよ』

 この強くて敵無しだと思ってたアーニアわたしがだよ?焦ってるのにはかなり不安を覚えた。


『もしかしてかなりやばいの?私でも役に立てる?』

 いてもたっても入られず割り込んでしまった。


『貴女は、まだまだ強くならなきゃいけない、でも貴女の防御結界術式は結社の誰よりも、私のよりも数十倍は強固だからいざとなったらみんなを守ってあげて』

 へ?そうなの?

 私は一応攻撃とかにもステ振りというか鍛錬はしているけど、防御結界術式だけは極振りで術式を改良している。

 だってアーニアわたしに攻撃されるとめっちゃ痛いんだもん。


『私のパンチで気絶するとは言え、ほぼ無傷で何事無かった様にその日に料理とかしてるんだもん!恐らく貴女の防御結界はおかしいくらいに硬いと思うよ。加え回復力も尋常じゃないから。本当に毎回向かってこられるこっちは頭が痛いんだよ。』


 そうなんだ、瞬殺される度に改良加えてたらいつの間にか凄い結界になってたらしい。

 回復力もアヤに教わった魔力の循環をオートで張り巡らせそれも毎日日課で改良してただけなんだけどね。

 またドラゴンに噛まれて死にかけるのも嫌だし。

 あ、いまは瞬殺じゃなく20秒くらいは持ってるかも?まあいっか。

 でも、私でも少しは役に立てそうだね。


『緊急事態だからこれからノルくんや私、レイちゃんやナッちゃんとそっち向かうから!それまでなにかあったらよろしくね!アヤとツムギちゃんも宜しく!』


 ノルくん来るの!?


『超頑張る!!』


 ノルくんにいいとこ見せたいな!

 とまあここからはツムギちゃんがず〜っと調査をしている。

 ず〜っと同じところ見ている。


「やっぱりこの辺が怪しいですね。でも歪み自体は感じられないのですよね。」

 それから3時間。


「見つけました!歪みの様なものを見つけましたが、これは異空間の綻び?アーニア様に連絡しましょう!」


 近くにいた帝国の人からは「アーニア様はここにいるのでは?」とか聴こえたけど無視しよう……――だって緊急事態だから!よくわかってないんだけどアーニアわたしが焦ってるから緊急事態なんだよ!


『ツムギちゃんお手柄!!私達が行くまでなにもしないで!まだリナのバイタルサインは健在だから!弱ってる感じでもないし!』


『わかりました!』


 とまあここからは、私達結社の人間とリオちゃんとおじさんで張り込むことにした。

 正確には私は結社の見習い社員だし、アヤとツムギちゃんは結社に出向しているだけだから結社の人間か?と問われると怪しい限りではある。


 また話がそれちゃった。


 私が作った異空間術式でログハウスの家を取り出した。だって野宿とかキャンプは現代日本で育った私にはキツいものがある。

 こんな時の為に空間術式を勉強しまくったのだ。

 毎回、野宿になりそうな時はこれを使ってるよ?

 家?これはこの世界のノルくんが誕生日に作ってくれた。

 ノルくんからもらったプレゼントだよ!ノルくんに包まれる〜!


 家を取り出した途端にリオちゃんとおじさんがなんとも言えない顔をしていた。


「これがノルくんハウスね!お邪魔しまーす!あ、あの人の匂いがするー!包まれる〜!」 

「そう、これが私達の愛の巣、なんちゃって!」

「「ハハハハハ!」」


 そんなアヤと私のやりとりをまたなんとも言えない顔で見ていたリオちゃんとおじさんと+ツムギちゃん。


 代わりばんこで歪みっぽい異空間の綻び箇所を見張って1週間くらいが経った。


『あと半日もあればそっち着くから、見張りありがとうね〜!』

『そっちの綾子〜!久しぶりニャ!ハンバーガー用意してくれたら嬉しいニャ、ニャ!ニャにをする〜!綾子はにゃせ〜!』 

『いま緊急事態だからそういうのは終わってからでしょ!』

『そんニャ〜!殺生ニャ〜』

『私もいるニャ!ハンバーガー……食べたいですニャ……』


 世界最古の神獣ナッちゃん様と、この世界に元からいるナッちゃんも相変わらずだな〜。


 まあアーニアわたし達が来てくれたらこの綻びの処理は任せてしまおう。

 私達じゃ正直不安だったしね。


 じゃあ、ハンバーガーでも作って待ってようかしらね!


 な〜んて、油断していた。


 綻びの箇所の空間が、ガラスが割れる様に弾けとび中からローブを着てフードを深く被った人が出てきた。傍らにはリナちゃんが倒れている。


「リナ様!」

「リナさん!」

 ギルドの2人が叫ぶ。


 リナちゃんのバイタルは!?


 大丈夫っぽい……良かった

「安心して、大丈夫みたい。」


 そしてフードの人物は体型、背丈、フードからみえる髪の長さから女の子だと思う。背丈は同じくらい?

 しかもあのローブ、結社謹製のしかも上層部の人間が着てるのに似てるな……。デザインは違うけど。

 私は上層部じゃないんだけどさ、それを与えられている。全部アヤが作ってる。

 というかアヤしか作れない。

 レプリカはあれどオリジナルは数えられる分しかない。

 それをこの綻びから出てきた女の子は着ている。


「はあ……、この世界に来て一発目はこの子を取り込んでこの世界の発展具合を確かめようとしたのに全力で抵抗するんだもの。なにも収穫がなかった。」


 この声?どっかで


「でもちょうどいい頃合いに、ちょうど程よく成長してそうな写し身がいたし、貴女でいっか。」


 写し身?この子、私を指差して言ってるけど?あ!人を指差していっちゃいけません!ママに習わなかったのか!?


「綾子!下がって!」

「綾子様!私の後ろに!」


 アヤとツムギちゃんが前に出る。

 私、狙われてる?


「チェッ、矯正力1体にほぼ女神の写し身の転生体か~分が悪いな~。」


 あ!舌打ちした!なんか下品!


 ってこの声!私?くそー!


「私と同じ声でそんな下品な舌打ちするんじゃないよ!怒るよ!?ママに習わなかったの?」

「ふーん、さすがに気づいた?まあ気付くよね~。」


 そういって彼女はフードを下ろした。

 その顔や髪型は私と同じ篠村綾子わたしの物だった。

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