第18話 あれから3年

 この世界に来てから3年が経った。

 

 私は結社の総料理長に就任していた。

 

 はあ?


 総料理長としての立場以外にもアーニアやレイちゃん×2人、リリスちゃん、ツムギちゃんや他結社員が10人くらいが料理の弟子である。


 どうしてこうなった……!


 私とアーニアに至っては1年引き篭もっていた間に料理を洗練させたかさせてないかの違いだけだよ?

 なのにどうして?


「こう長いこと生きてるとね、なかなか料理の癖が固まっちゃってなかなか抜けないし新しいものを作ろうって感じにならないのよ。まあ自分で言うのもなんだけど長いこと生きる頭が堅くなるのよ。ハンバーガーなんてどう作ればいいのか今では全くわからないし」


 あー、そういうものなのかね?

 

 弟子といってもレシピとその発展にいたる料理の応用について資料化して、それを作ってもらって味見するって感じかな?まあ私も作ってみせたりはするけど。

 例えばハンバーガーを作るにはハンバーグが必要で後はバンズ、少しグルテン多めにパンを焼いてあとはファーストフード並に色んなタレや味付けをするだけなんだけどね?

 発想だけで色んな料理にするには様々な味付けを覚えなければそれらは作れない。

 それがこの世界ではほぼロストテクノロジーと化しているわけである。

 一応、ケーキや色んな料理はこの世界にもあるんだけど全体的にそれらを応用し発展した料理にする、という考えが廃れてしまっている。

 アーニアと私は1年引き篭もったかそうでないかの違いではあれ、そのちょっとした差が世界に大きな影響を与えるな、なんて話はアーニアともしていた。

 さすがにアーニアは私なだけあってすぐにその応用を身につけていったわけなのでこの世界の食卓事情は変わっていくのだろう。

 リリスちゃんもツムギちゃんも流石である。


 しかし、レイちゃんズにいたっては…お察しである。

 私と来たレイちゃんは本当に悔しがっていたのだけど、努力の甲斐もあって卵焼きを焦がすことなくやける様になった。

 こっちの世界のレイちゃん、こちレイちゃんに至ってはなんでか可もなく不可もなくなんだけど、なんでか和食はまともに作れる様になった。

 なんでかね二人ともめちゃくちゃ必死なのである。

 まあ、こうがんばってる女の子の姿にはね、男はキュンとしちゃうんじゃない?

 誰に食べさしてあげるの?ノル君?レイちゃん、ノル君が好きなの?

 ま、まさかね……――いやいや気のせいかな?

 あれでもなんか前にそんな夢をみたような?あ、あれは夢だったっけ?

 まあいっか!


 あと色んな料理を発展させて作れる様になったアーニアはノル君に色んな料理を作ってあげていた。

 ノル君も喜んでいるみたい。

 

 まあ、お幸せに、私のノル君じゃないし。

 別に悔しくないし…。

 私のノル君はここにはいないし。


 くそー!見せつけやがって!くそー。


 とは言えだよ?ノル君がたまに話しかけて来てもアーニアに悪いし遠慮してるんだよね。

 篠村綾子としてはまあ、ノル君にツンツンしながら対応してるよ。

 でも、たまにアーニアの格好してアーニアのフリをしてノル君の膝の上に座ったりノル君の両腕シートベルト(?)締めたりと色々やってるんだけどね……――アーニアがいないときに。

 まあアーニアのフリしてるからアーニアの実績(?)になるし別にいいよね?


 たまには私もノル君補充しないとやってられんわ!

 私も髪が伸びたしアーニアとほぼ見分けは付かないだろうし別にいいよね。


 とまあ20歳になってもノル君よろしくでやってます。


 あと私を噛み殺そうとしたドラゴンタイプの魔モノをソロで倒せるようになりました。

 レイちゃん師匠に教えてもらった剣術のおかげです!

 異世界に来たーって感じするよね!?

 最初はトラウマでブルってたんだけどまあなんとかね?


 とまあ異世界っぽいこともエンジョイしていた。


 まあ平和も平和。


 魔科学だったり戦闘訓練だったり覚えることだらけなのだけどね……――総料理長でもあるし。

 まあ、でももう伝えられる料理ノウハウの基本は伝えたしもう大丈夫かな?よし!料理長を辞任しよう!


「リリスちゃん!総料理長を辞めたいです!」

「お、お姉様!それは困ります!いま、辞められると食堂から『綾子の気まぐれ日替わり料理』がメニューから消えるのですよね…?ソレを目当てでくる結社の者が多く、食堂に通いだしてから成果を向上させた者も多く、その……」


 そんなの知らんわ!っとは言えない私なのだ。適当に思いついた料理を出してるだけなんだけど……――

 ――かと言って結社食堂の仕事は辞めるつもりはないので


「料理は作るし働くけど総料理長はねえ。だってもう定番メニューはみんな作れるし仕込みからなにからも、もうみんな出来るでしょ?支部にも支店食堂作るって言ってたけど、もうそこまで管理出来ないし。」


「お料理はしてくださるんですね!?でしたら経営は私達にお任せください!ただ気まぐれ日替わり定食は本当にお願いします!大人気ですし私も食べたいのです!」


 ちなみに結社の社員食堂みたいなのをツムギちゃん、リリスちゃん、私で経営してる。

 私はほとんど料理や時間の管理だけなんだけどね。

 ツムギちゃんの宿が社員食堂みたいな感じだったのに結社本部に食堂がまったくないのだ。

 アーニアが目覚めてからはなにか恩返し出来ないかとツムギちゃんとリリスちゃんに相談して作ってもらった。

 あと結社員の料理好きが10人くらい朝昼晩のパートで働いている。

 働いたことない私でもリリスちゃんやツムギちゃんのサポートもあってなんとか働けていた。


 ちなみにアーニアは応用がきくようになってからはいつも日替わりメニューを食べては味を盗んでいるらしい。

 まあ私だし当たり前だよね?ノル君の為なんでしょ?ふん


 レイちゃんもなにかしら魔モノ討伐とかこちレイちゃんに色々教わりながら働いてるみたいだし。

 私も働かねば……!と思ってね。食堂作っちゃった。


 でも、いつまでもこの世界にいるわけじゃないし総料理長はやってられないでしょ?


 この世界から去る時がいずれ来るんだなあ……――それはそれで寂しいなあ。みんな仲良くなったのに一生会えないんでしょ?


 そんなことを考え夜の日替わりメニューを作るのだ。

 今日はカルボナーラだよ。多分みんな食べたことない。

 レシピは教えてないからみんな舌に刻みこめ!ふふふ

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