【神話】branch of originate Episode1 創造の種
昔むかし、それは気が遠くなるほど昔のお話し。とある女の子がいました。
女の子には好きな男の子がいました。
ある時、男の子は女の子の前から姿を消してしまいます。
女の子は悲しみました。
いつまでも悲しんではいられません。
男の子を探す旅に出ました。
世界中を駆け巡り、女の子はわずかな願い胸に絶望することなく男の子を探しました。
いくら探しても男の子は見つかりません。
それもそのはず、男の子は姿を消したのではなく、亡くなっていたのです。
女の子が絶望しないように伏せられていたのです。
女の子は絶望しませんでしたが全ての時間を男の子を探す為だけに使いました。
しかし、男の子に会えることは叶わず生涯を終えてしまいました。
それを見ていたとある神様は自分に境遇を重ね、女の子に同情しました。
女の子の魂は神様の前に導かれ、創造の種を貰いました。
女の子は「そんなのいらないから男の子に会わせて欲しい」とお願いしました。
神様はそれは不可能だといいます。
神様には干渉できることと出来ないことがあるのです。
女の子は「生まれかわらせて欲しい」と願いました。しかし、それも不可能だと言われました。
女の子は怒りました。悠久の時間をかけ、神様を責め続けました。
責めて責めて気がすむまで責め続けました。
永い永い時間を重ね、その怒りも薄れ、女の子は神様とお話しをはじめました。
それは永くとても寂しい空間での他愛もないお話しです。
神様はずっとひとりだったので同じ境遇の女の子とお話しをしたかったのです。
時間がたつにつれ二人は友達になりました。
ふとした時、女の子は神様から貰った創造の種を思い出しました。
種を植えると時がたつにつれ全方向に巨木が生え、一つの宇宙を織り成しました。
種を植えた瞬間、女の子は神様となったのです。
巨木一つ一つが彼女の願い、可能性を潜在的に具現化し宇宙を創造しているのです。
とある巨木は何もない塵だらけで荒廃した世界。
とある巨木では地獄のような悪魔の様な者たちが住む世界。
女の子を導いた神様を責め続けていた時の自分の様な者たちが巣くう世界。
女の子は「そんな世界はつまらない」と放置しました。
そこに、一つ輝くとても綺麗な巨木に気が付きました。
しなやかに、雄大に聳え立ち、星々が輝いています。
自分のいた惑星にそっくりな「地球」もあります。
女の子はその巨木、いわゆる宇宙の全てを覗きました。
綾の様に織り成す枝分かれした分だけ可能性が存在する世界。
女の子は永い永い時間をかけ、様々な物語を観察しました。
在ってはならない枝も稀に存在し、そんな「悪い」枝は「きょうせいりょく」を使い切り落とします。
自分の境遇に似た者もいましたが女の子には神様が使っていた「自分の元へ導く」スキルがありません。
いま判明しているのは「きょうせいりょく」と「枝を追加する」スキルのみです。
「きょうせいりょく」は稀に自我をもち自分勝手に動くのでとても使い勝手が悪いです。
「枝を追加する」スキルも使い勝手が悪いのです。
切り落とされた枝に存在する者を木に連れてくることでしか干渉できないのです。
切り落とされた世界の者はその世界へ転移される為、文字通り異世界転移物語となるのです。
女の子はそれを幾千回と繰り返し枝を増やしました。
巨木は無限の枝に分岐しました。「悪い枝」があれば切り落とし枝を増やします。
友だちとなった自分を導いた神様もこの巨木にはびっくりしました。
とある時、女の子は気付きます。
切り落とされた枝の世界から転移されたことによって、枝の中で残され悲しむ人がいるのです。
いままでは自身が神となり永い時間で麻痺していた気持ちがあったのかもしれません。
女の子は大変悔やみました。
女の子は切り落とされた枝を観察し始めました。
「なにかしれあげられることはないか?」そう考えているのです。
悲しんだ人達が寿命を終えた時、自分が転移した人の元へいける様に紐づけたのです。
寿命を終えた瞬間と、なにかが原因で命を落とした場合に記憶や体は大事な人が消えた瞬間に戻り大事な人の元へ転移されるのです。
まだまだ未熟な神である女の子は時間は指定できないが概ねみんな満足していたのでほっとしました。
これからは寿命を終えた者、無念を残し亡くなった者のみ転移させようと決めました。
自分の様に悲しむ人間はいてはならないのですから。
「今日も枝は揺らいでいる。まるで羽ばたくようにゆらりゆらりと。」
と囁き女の子は巨木を見上げ色々な物語を観察し続けるのです。
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