【神話】branch of originate Episode2 写し身


「もうみてられないよ…」


 物語をなぞることしか出来ない私は途方に明け暮れる。

 もしも私がそこに行くことが出来るのならば…

 もしも私が貴方の力になることが出来るのならば…


 そう願うだけしか出来ない私の思考は、無意味でしかないのは理解している。


 種を蒔きこの世界を創造し神となった私は、その行く末を視ることしか出来ない。

 

 なぜこんなにも無力なのだろう。

 神なのに?


 なにもすることは出来ないのだろうか?


 貴方の向かう先に少しでも未来があるのなら…

 貴方の望む未来に少しでも希望を授けられるのなら…

 神でなくたっていい。私はそう考えていた。


 物語にわたしは存在しない。

 私は世界を覗き、枝を切り、悲しむ者がいればその世界へ導く程度の力しかいない。

 綾の様に織り成す枝にいる貴方の幾千もの絶望を視てきた。時には助けとなる者を貴方の元へ導いた。


 しかし結果は変わらず無意味な枝が残され、私はそれを切り落とすのみ。

 あの人に似た貴方の為だけに欲深き、業深き私はただ世界を歪ませた。


 そこから悠久ともいえる時間が経ち、枝を切り落とす「強制力」は進化を遂げた。

 私の意志を反映した私自身の分け身を生み出す能力が開花した。


 勝手に人型となり意志を持った「強制力」の様に万能ではないけど私自身の純度を調整して反映する。

 私の意識がそのまま反映されるのは逆に万能ともいえよう。


 ここにいる「私」自身がそこへ行けるわけではないけど、その「ワタシ」が物語の人物として登場することが可能となった。

 疑似的ではあるが貴方の元へ「ワタシ」が行くことは出来るだろう。

 その「ワタシ」はあくまで人間であり、私としての自覚はあるだろうけど神ではないし神が操作できるわけでもない。

 それほどに神は何も出来ないし今まで通りここにいる私は物語をなぞり視ることしか出来ない。


 写し身が生涯を終えればその経験は私に反映される。

 私に出来るのは写し身がうまく貴方を導けるように見守ることだ。


 だけど…、結果はどれもこれもバッドエンド。

 私は役立たずだ…。

 

 貴方と話が出来てとても浮かれていたが結果は絶望。


 何故なのだろう?神である私の写し身はチートとも呼ばれるレベルだよ…。


 私の友達、私を神にしたルナが様子を見に来た。


「彼が貴女の愛しのダーリン?」

 くそ、バレてたか…。


「別に愛しでもないけど…その…気になるのよね…」

「そっかそっか、どう?あっちの貴女の記憶はフィードバックされて貴女が持っているのよね?話は出来て良かった?」


「私は最初は嬉しかった。でもどうやってもあの人を助けられない…チートでもなんでもしてるんだけどね…」


「彼の不幸具合は私達の想像を超えているはね…、どうすればいいかはわからないけど私も行ってもいい?神の私が言うのもなんだけどここは神頼みでなんとかなるかもしれないじゃない。理屈としてはなにもないけどものは試しで」

 ルナがそう進言する。


「まあ、私が調整すれば出来ないことも無いけど…」

「彼ってこの落とされた枝に居た人よね?じゃあ木ではなく、このフラッピングエーテルもない落とされた枝に私達を送りこんでみない??純度100%で」

 それは試したことが無かった。

 いま解っているのは巨木へ私を送りこんでもBADENDにしかならないこと。

 でもなあ…、んー、まあ試してみようか…。


「わかったルナ、ここは神頼み(笑)で落とされた枝に私達を送ろう」


 ちょっと調整難しいしフラッピングエーテルもないから本当にただの人間になってしまうけど…

 まあ私達の意志が反映されていればその後に同じく木に転移させて手伝ってもらえばよいだろう。

 これは幾度となく繰り返された試行錯誤の一つだ。


 私は貴方の助けになりたい。


 神としては褒められない我儘だとわかっている。

 だけど私もルナも元はただの人間で欲がある。


「ルナ、私の手を握って。一緒に私の写し身をあの人がいる落とされた枝に送るから、じゃあ始めるね」


 「ワタシ」を「貴方」の元にうまく私を送れるように集中した。正直加減が難しい。


 少し時間はかかったけどなんとか出来た、じゃあいくよ!

 あ、やべ!クシャミでそう…


「へっくし!…やべ…」


 やっちまった…!?


「ルナ、"ワタシ"達を送るには送れたよ?全ての世界線に。私はあの人の幼馴染、ルナは私の親友で、あれ?親戚?…ってことになって因果を書き換えた、けど…」


「…けど?」

「リンクも切れたし私達の意志が反映されているかもわからない…し、この子たちが生涯を終えても私達には記憶はフィードバックされるかわからない…。いや、されないかも…。」

 なんかこのワタシ?もはや私なのか?

 このワタシ?は、なんか能力は高そうだけどちょっと頭は弱そう…。

 私自身なのだから概念的自虐になってしまった…。

 ルナの方はまあ大体ルナって感じの子だけど…。

 名前もルナにまつわるそれって感じか。

 

 親戚って…あ!ルナめ!こっそり弄ったな!


 うーーーーーん…。


 …大失敗かも。


 どうしよ。

 見守ることには変わりはないのだけど…。


 失敗したことで私はこの子を「私」とは認識出来ていない。

 「私」が生み出した私の写し身。


 あまり期待はしていないけど頑張ってね…。

 でも、とっても不安だ…。


 私ではない私というきっかけで生まれた私によく似た貴女。

 その行く末は貴女次第だけど、もしもハッピーエンドに行くことができるのなら…、ちょーっとだけでも私に、貴女の記憶や経験を私に反映出来る様にさせて頂戴ね。



~~~~~~~


???「え、嫌だよ…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る