第9話 ひとつまみのクリームみたいな雲
みなさん、ウスターソースは好きですか?わたしはあの甘みと酸味が彩る辛味好きです。いわゆる標準のウスター、少しトロみのついた中濃、かなりトロトロしたとんかつソースともいわれる濃厚。どれも酸味がきいて料理に心地よい風味とパンチを与えてくれるし揚げ物や料理の隠し味にも使えますよね。
目玉焼きも醤油派やウスターソース派に分かれたりしますよね。
私?私はポン酢派ですが?なにか?
ハヤシライスの時に即席のウスターソースを作り使用したのですけど、及第点ではあったのですがもう少しうまくこう酸味と甘みをガツンと出来たらな〜って考えていました。ウスターソースはしっかり開発したいものです。
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今日は私、テンション高いっす。
飛空艇に乗れるんだよ!飛空艇だよ!
異世界って感じじゃん?帆船な感じ?それともレシプロ?いや魔科学の世界だからスチームパンクなデザインの魔導船?いや魔科学船かな?某最後のファンタジーに登場する所謂飛空艇のデザインをイメージしていた。
里からは10kmほど離れた場所に配備されているらしく私達は早朝から徒歩で、その発着場へ向かっていた。
軽くピクニック気分だね。
メンバーはアヤ、ツムギちゃんと私。宿はアンちゃんが代わりに任せられている。
向かう途中、アヤが空に手をかざし雲を掴むような仕草をしていた。
ツムギちゃん曰く、生クリームを食べた気持ちになれるおまじないらしく昔からの癖らしい。
アヤ、クリーム好きだもんね、その乙女力は分けてほしいな。
片や、私がSNSで使っていたハンドルネーム、パソコンしゅきしゅきおじさんだよ?
なんだこの差は。
似ている顔故に私は同じ女として焦らなければいけないのだろう。
私も真似しよ。
「ふふ、な〜にしてんの〜?綾子。」
く、見たな!?いっそのこと笑ってくれ。
「美味しそうよね!綾子ほら!あそこにもおいしそうな雲があるよー!はむ、ん〜おいしいね〜。」
アヤは雲をひとつまみする仕草をしてとびきりの笑顔で口に運んでいた。
あら!なによこの子……――かわいいわね!くそ!負けた。
見直したよこの子のこと。
あざといんだけど不快じゃない。
この子にはそんな光るパワーを感じるね。
とまあ、そこからアヤはクレープとショートケーキの魅力について熱く語っていた。
話を聞くとミルクレープやプリンアラモード、白玉ぜんざいは知らないなこの子。
今にみていろ。
そして、ようやく飛空艇の発着場近くまでついた。
ここも集落になってるみたい。
10kmは流石につかれたかな〜。でも10km歩いたのに私にしては意外とまだ平気だなあ。息も絶え絶えになるかと思ったけど。なんか体が軽いのよね。
飛空艇に乗る前に少し休憩も兼ねて朝食をとることにした。
拓けた広場の様なところにシートをしいて3人でアンちゃん特製サンドイッチを頬張った。
アンちゃんのサンドイッチ美味しい!卵と野菜のサンドで胡椒と塩の加減が絶妙で凄く美味しかった。
っで、来ました!発着場!飛空艇とご対面!
あれ?どこかで見たぞ?なんかね〜、あれ、あれだよあれ、あそこ!古代遺跡みたいな旧なんとか領でみた王城の船みたいな。
王城は1km級だったけどこれは300m級のミニスペース空母って感じ。
人型になったりする?マクロの空を貫いちゃう?おっと、これ以上はいけない。
まあこれは作った人の趣味なんだろうね。
うっ!これみてたらドラゴンに噛まれたの思いだして気持ち悪くなっちゃった…。
震え止まんない。
「ちょっと綾子!大丈夫?顔色もの凄く悪いわよ!」
「ごめん、これに似た船の中でドラゴンに噛まれたの…――思いだしちゃって」
「綾子様、これを飲んで下さい。」
「なにこれドリンク?」
んぐんぐんぐ――ん?なんか鷲のマークの栄養ドリンクみたいな味?
お?おおお?なんか元気出たし震えもとまったぞー?
「これは状態異常改善薬ですね。脳内の受容体に働きかける成分も入ってるので効くと思いまして。」
「ありがとう!凄く効くねこれ。あれ?この蓋に書いてる顔ってアヤ?里謹製の薬かな?」
「これは結社謹製でアーニア様が開発した薬ですね。こういった薬学はやはり結社の専売特許みたいなものですからね。まあ、あまり多用はおすすめ出来ないですが。」
薬に頼るのはあまりよくないもんね。
これアーニアの顔かあ――アーニアも私もアヤも一体なんなんだろう?
アヤは大丈夫だけどアーニアはキャラ被りしてないといいなあ。
薬によってケロっと回復した私はアヤの後ろについていきカタパルトから飛空艇に乗り込んだ。
やっぱりこれ空母なのかな?中には小型の戦闘機っぽいのが何台かあった。
北欧神話にありそうな名前の飛行機じゃないよね?人型になりそう。
あとは居住スペースがあって部屋や食堂があったり結構オシャレ、というか近未来的。
埃っぽくもないし住めそうな気もした。
最初はこれじゃない感じはしたけど結構ありかもしれないと思ってしまった。
艦橋まで来たけど細かい計器などはなく操縦席?っぽいところにひらけた窓があって何でかバーカウンターや調理場がある。
ふむ!意外にも中はセンスが良くて気にいってしまった。
あとでお菓子でも作るか。
ちなみに第3艦橋は無いらしい。
縁起悪いもんね?
食料やら日用品は何日か前から積んでいたらしく掃除や整備も組織の人がしていたらしい。
私自身は荷物は多くないけど里のみんなからシャンプーやボディソープやら何故か下着などを大量に頂いてしまっていたので事前に運んでもらっていた。
シャンプーなどはレイちゃんやみんなのお土産にしよー。
「いくわよー。ツムギちゃんお願い。」
「はい、ではこれから約7000kmの旅になりますのでごゆっくりお過ごしください。綾子様、私は手を離せませんので申し訳ありませんがアヤ様にお菓子を作ってくださいませ。」
オッケー!承知した!けどツムギちゃんが操舵するの?
話を聞くとマニュアルをみて初めて操舵するらしいけど大丈夫だってさ。
ツムギちゃんなら大丈夫か〜。
お、浮かぶ浮かぶ。おー!
飛行機にのったことない私は初めての空に感激していた。
そして、慣性の法則はどこにいったのか全く揺れない。
これなら調理場で火気つかっても大丈夫かな?ここ火じゃなくIHみたいなコンロなんだけど油を使いたくてね…。
ドーナツとかポテトとか揚げたいじゃん?
どうしよ、ん〜油物はやめとくか。
そうだミルクレープにしよ、アヤ絶対好きでしょ。
でも7000kmか〜、ドラゴンに噛まれて随分と遠いところに来ちゃったねえ。
とは言ったものの。
なんとくどういう事態なのか察してはいるけど色々と解せないのだ。
私が今動かしているこの体、恐らくアーニアの体だろう。
勝負パンツの件もそうだし、この身体ね、なんか鍛えられてるし体力があるし息切れしないの。
それにアヤとの話の脈絡的にね〜…。
ツムギちゃんやアヤにも確認したけど確かにアーニアだったけどいきなり、次の日は綾子になってたらしい。
でも魂は体が死なない限りは身体から引き剥がせないし引き剥がす方法もない。魂を他の体へ入れることも理に抵触する為、そうであればツムギちゃんが検知して大変なことになるらしい。
そうではない為、魂が入れ替わっているわけではない。
アヤからみたら私とアーニアの魂は区別がつかない。
では、なんで私はアーニアになっているのか?
アヤに推測はあるらしいけど、答えはアーニアが知っているらしく、まずはアーニアと会ってから話してくれると言っていた。
んー?ってことは私の身体はレイちゃん達の近くにあってそれがアーニアになってるかも?
世界の理的に入れ替わり出来ないのに?
入れ替わってる?
それとも私の体の私は私のまま?ダメだ。よくわからない。
しかも私の身体、いまボロボロなんだろうな。
私の浅はかな行動が招いたことなのだ。
アーニアもごめん……――って、いかん!私はすぐネガティブになってしまう。
私はミルクレープ作りを始めることで、いたたまれない気持ちを逸らしていた。
クレープ生地に生クリームを塗っては生地を重ねてを繰り返し
アヤ、見すぎ。
そんな目キラキラさせて鼻息ふんふんしてもさ、冷やすからすぐには食べられないよ。
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