第8話 パソコンしゅきしゅきおじさん
綾子です。SNSでのHNはパソコンしゅきしゅきおじさんでした。
同じハードウェア構成のパソコンがあります。
双方のプラットフォームOSも同じものです。
片方は長いこと使い、もう片方はあまり使っていません。
長いこと使っていると様々なソフトウェアをインストールする上に、それに合わせ設定も最適化します。また学習機能から操作性も最適化されます。
そんな長いこと使ったパソコンからハードディスクを抜き取りあまり使ってないパソコンと入れ替え起動するとほぼ遜色なくいままで通りのパソコンになります。
人もよくパソコンに置き換えられるが同じ様なことが出来るのだろうか?
それは理に抵触するらしい。
人はこの世に生を受けその身には同じ魂しか存在することが出来ないのだ。
それだけは絶対だ。
ツムギちゃんもそう言っていたし魂と身体を引き剥がすことがそもそも出来ない。 魂を入れ替えて「アイツがワタシで、ワタシがアイツ」は出来ないのだ。
この世界でも魂を入れ替える技術すら確立していないのだ。
っというか魂って存在するんだね。
今さらだけど。
エレナもおねーちゃんの魂核って言ってたっけそーいえば。
私はね、日本で引き篭もっているうちに色んなオタクになってしまっていたの。
その1つでパソコンについても詳しくなってしまった。
そんな女子高生は記憶の限りでは聞いたことはない。
情報収集目的で呟いていたSNSトゥイッチャーなどでパソコンしゅきしゅきおじさんを称していた。
正体が私なのも秘密だし、パソコンに詳しいのも秘密だ。
女の子にはね、オタク趣味の1つや2つあるってもんよ。
色々と忘れたいことがあって仕方がなかったんだよ……。
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「は、あしゃ?」
少し肌寒い空気をほっぺたに感じ目を覚ました。
アヤの里(仮称)での暮らしも残り1日となった。
アヤの里ってお相撲さんの四股名みたいね。
昨日まで料理を沢山したのだけどケーキの開発も沢山したの。
スポンジケーキやパイ生地が作れるとだいたい後はアレンジ次第なんだよね。
モンブランクリームとかそういったのは作れないけどそういった凝ったものでなければ創作でなんとかなるものだ。
ツムギちゃんも満足そうでなによりだよ。
あと里の子も教わりに来ていた。
これから宿でツムギちゃんと働くらしい。
私に教わるのは抽選だったらしく初日はずっと感激なのか泣いていた。
良かったねアンちゃん。
ちなみにアンちゃんみため私と同じくらいだけど326歳でした。
アヤは、というと毎日ケーキを食べに来た。
餌付けは概ね上々だ。
でも普通の食事やその他の行動はしっかりしてるんだけどね…お菓子の食べ方は汚い。
いつも口の周りがクリームだらけになるし。
拭こうとすると取られまいとなめ尽くすし。
いい加減止めて欲しかったし生クリームにドライイチゴを乗せた皿を出したら黙って拭かれる様になった。
そんな暮らしもあと1日か〜、割と楽しかったな〜。
寝間着を脱いで下着を取り替える。うぅ、さむ。
なんで勝負下着しかないの!!?
うーん、我慢してたけど流石に雑貨屋さんに下着買いに行くか。
パンツだけでもさ、落ち着かない。
いや、ね、私が雑貨屋さんでなにか買うと請求先がアーニアになるのよね。
魂核決済ってやつなんだけど。
ごめんねアーニア。
管理者ウインドウもそうだけどなんかごめん。
私は小心者なのでこういうことは、いたたまれない。
でも魂核決済とか認証って便利だと思った。
というか凄いよね。
中世みたいな文化かと思いきやこの辺はキャッシュレスな感じは近未来的よね。
そして褒めちぎりたいのはコンディショナー&オイルインシャンプーやボディソープ!
凄いの、髪はしっとり、肌もすべすべして潤おうし顔も洗えるの!
オールインワンタイプのシャンプーやボディソープにしては信じられない様な効果だった。
現代日本では無理です。
高いシャンプーは使った事ないからわからないけど。
アヤの里謹製らしく配合比率を商業の流通組合の様なとこに登録しライセンス料でかなりの収入を獲ているらしい。
決め手の素材も別売りしているらしい…アヤ、やり手だな。
でも素直に凄いなって思った。
工場見学したかったけど直営工場は別の集落らしいし私やアヤがいくと大騒ぎになるみたいだし行かなかった。
残念。
シャンプーも薬学になるのかな?やっぱり興味あるなー。
他は大規模な温室農業をやってるみたいでなんとエレナとアーニアも共同で開発したとこらしい。
エレナ凄い!まあそこも違う集落らしいので機会があれば1度は見てみたいな。
お菓子ばかり作ってたしこの里のみんなとも顔なじみになった。
心の底から楽しかった。
でもレイちゃんもみんな心配してるだろうしなんかね、楽しんでいいのか?
って気持ちもなくはないのだ。
ま、でも、焦っても仕方ないかな?
レイちゃん、明日からそっち向かうね。
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今日は私の送別会。食堂で軽くパーティーかな?なんて思っていました。
祭
里全体に装飾、ハロウィンパーティーか!
里の中央広場に広がる料理の数々!半分は私が作ったよ!
広場に大きい垂れ幕が2つ『我らが綾子様!甘いケーキをありがとうございます!』『またのお越しを楽しみにしております!』
字は私の知っている文字よりは訛ってる様に見えたけどしっかり読み取れた。
やめてー!!!!恥ずかしい!綾子扱いは嬉しいけど恥ずかしい!それに貴女達の主はアヤでしょ!また来るよ!また来るよ!
いままでこんなパーティーとか家族や近しい人以外にしてもらった事ないし恥ずかしいのもあったけど、嬉しくて泣いてしまった。
「ごめんねー綾子。みんな祭をするって聞かなくてさ。私の言うこと聞かなくなるって初めてなのよ、ふふ。みんな綾子を綾子として崇めてるから応えてあげたら嬉しいな。ケーキも美味しかったよ!ありがとう。」
崇めてるんだ、それはやめてほしいな、ふふ。
「あ、ありが、っふぐ、ひっ!み、んな、ううありがとうー!!ふうううっ!っう」
ドラゴンに噛まれて死んだと思ったらなんでかここにいて、短い間だけど良くしてくれた里のみんなやアヤにはほんと感謝しかない。
私は料理しか出来ないけどそれを喜んでくれたし、私が認められた気がして嬉しかった。
リーシャちゃんの家でもそう。
でも私の浅はかな判断でレイちゃん達とも離れ離れになってしまったしみんなには迷惑をかけてしまった。
心配もかけているだろう。
私も自分の身は守れる様に強くなりたい。
みんなに心配はかけたくないし。
決意も新たにして料理を食べながら里のみんなの余興を楽しんでいた。
の、だったけど――
――そのあと私はクレープを作らされた。くそ!
ツムギちゃんもアンちゃんも作れるでしょ!って思ったけど最後にみんな私のクレープを食べたいらしく仕方なく作った。
送別会の主役なのに私は朝から結構働いたぞ。
でも、みんなありがと。
祭も終わって余ったクレープ生地の材料もったいな〜って思い、薄力粉を足してパンケーキを作って生クリームやイチゴやらバナナやナッツを乗せてメイプルシロップをかけるなどした。
チョコはない。
チョコがないのだこの世界は!
大きさはホールケーキかな?くらいのボリューム。
さてツムギちゃんとアンちゃんと一緒に食べようかなー!
アヤが横目でチラチラ見ていた。
気づいていたけど、気づかぬ振りをして宿に向かった。
けど甘味をロックオンした乙女は強し。
宿まで付いてきたアヤは明日の事について話がしたいと話題を振りまき
「あら、おいしそうね」
と一言。
明日の話は明日でいいじゃんって内容だった。
知ってるよ?食べたいんでしょ?話が終わったのにパンケーキから目離さないんだもん。
私は一言。
「まだなにか?」
あ、怒っちゃったかな?
ご、ごめ、あ!泣いちゃった。
「綾子がいじわるするー!!!」
そこまで意地悪するつもりもなかったんだけどアヤいつも食べたいって自分から言わないから私は、アヤの口から食べたいって聞きたかったの。
でも無理をさせたみたい。
人には出来ない事があるの。
私はそれを知っている。
言えないことや伝えたいのに伝えられない、そういうのはあるのだ。
「ごめんねアヤ、意地悪しすぎた。一緒に食べよー!」
「ふえーん、よがったよー!たべるー!綾子いい子だねー!」
元々アヤも含めて宿メンバーで食べようかなって思ってたし仲良く食べたよ。
でもやっぱりアヤ食べ方が雑。
最終日はこんな感じで楽しんだ。
明日は飛空艇にのれるよ!
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