第6話 勝負パンツか!!!なんてノリツッコミもしてしまうのは仕方がない
魂には重さがあってそれは21グラムである
なんて情報ををネットで見聞きしたことがある。
それは人が亡くなった直後、呼吸が止まることで血液の冷却も止まり体温が上昇し発汗した結果、という反論もあり確かではない。
犬の場合だと発汗がほぼなく21グラムではなかったという検証もあるらしい。
そう言った話はオカルトだったとしても事実はどうあれ心躍るものがある。
人の死後、魂はどこへ行くのだろう?魂があるとしてもそこに記憶は含まれるのだろうか?
輪廻転生などの物語などでは魂に記憶があり来世では前世の記憶を引き継ぐというものが定番だ。
もしも魂に重さがありそれに記憶が含まれるパターン、または魂とは別にどこかに記憶は記録として保存され魂と器がそれを読み込むパターン。
前者はスタンドアローン、後者はクラウド型、いやアカシックレコード型というべきだろうか?転生とはそういった原理で行われるのだろか?
実際、物語では細かいことは気にしない。
そう、普通は気にしなくてもいいのだ。けど。
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「知らない天井だ」
テンプレしてしまった!?
目を覚ますと知らない場所で寝ていたのだ。
見覚えの無い部屋のベッドの上、リーシャちゃんの家?でもなさそう。
どこだろう?
レイちゃんとみんなどこだろ?肩は?腕は?あれ?ケガしてないよ?
こ、これって!魔科学ってやつー!!???魔科学すげーーーー!!!!完全治癒じゃん!
腕や胸などドラゴンに噛まれた箇所を撫でまわしたり右腕を回したりして、ただただ魔科学に感心した。
ひと通り感心してベッドを下りて、あれ?なんか体が軽くね?死にかけて生還すると強くなるアレ?
私はどこの戦闘民族だよ!ドン!あ、やべ。ノリツッコミ思ったより力はいっちゃった。
床ドンしちゃった。
あーみんなに心配かけちゃったなあ…。
噛まれたのは事故だけどローブ脱いだ私が悪いよね。
あのローブってものすごく防御力高いらしいし着たまま噛まれても大騒ぎにはなっただろうけど、ここまで大ごとにはならないで済んだんじゃないかな?
レイちゃん凄く泣いちゃってたしな。
セレナも泣いてたし。
エレナにも心配かけちゃったよね。
早くみんなに謝らないと
みんなを探して謝らないと。
そう思って部屋を出ようとしたけど…私、下着姿じゃん!
って何この下着。
勝負パンツか!!!
なに?このスケベな下着は――
紐?ガーターベルト??私となにを勝負させたいんだよ!
この下着しかなかったのかな~?
あとこれニーハイ?ストッキング?これは履いてみたかったかも?
部屋の隅に化粧鏡があったので覗いてみた。
あれ?スタイルよくね?私。
あれ?なんか程よく筋肉ついてない?私意外とスタイル良かったんだね〜。
って……――髪伸びすぎ~!
私セミロングくらいだったよね!?腰超えてお尻くらいまで伸びてるんだけど…?
あれ?もしかして私、数年間寝ちゃってました?
だから痩せた?それにしては体がよく動くし、むしろ前より体軽いしなんというか力が溢れてくる感じがするぞ?なんか心も軽い気がするぞ?
自分の体なんてあまり見てこなかったけど「私スタイルいいかも」なんて思って少し鏡の前でポーズしちゃったよ。
とにかく服!服を着ないと。
クローゼットは〜、ここかな?
私の服じゃないけど少し借りよう。
サイズは…どれもぴったりっぽいね。
数はあまりないけど選べる。
紺のコルセットスカートに、ベージュのブラウスにうーん、
あ、あった!紐ネクタイ!これ金色の装飾可愛いな。
あとはローブかな?これ羽織っておこ。
ちょっと寒いし。
エレナに借りたのに似てるねこれ。
誰のかわからないけどちょっとお借りしますね。
ちょっと部屋の外に出るだけなんで。
鏡で全身をみた。ちょっと暗いな。カーテン開けて――っと。
あ、ここ2階なんだね。
よしもう一回チェックだ!
あれ?目の色、なんか金色??みたいになってない?あれ?カラコン?じゃないよね。
死の淵を彷徨ってこうなっちゃった??
うーん、まあオシャレかも?ありかも?フフ、こういうのはウエルカムだよ!
服装もいいんじゃん?オシャレなんじゃん?
満足したし部屋を出るか。
そーっと扉を開けた。
右よーし!
左よーし!
指を差しながら左右を確認した。誰もいない。
通路は一つなので進むと突当りに階段があり下りてみた。
ここって食堂?あ、ここ宿屋?
人が住むにしては服も少なかったし調度品も暮らすにしては少ない気がした。
宿の人かな?給仕服、いわゆるメイド服の女の子が近づいてきた。
「あら?アーニア様、昨日はいきなり倒れたとお聞きしましたが、お身体はもう大丈夫なのですか?」
ワタシ、アーニアジャアリマセンヨ。
でも関係者以外は「からっぽ状態」が周知されていないのかな?からっぽも何も違う人なんだけどね!
メイド服の子は茶髪のボブカットで目が大きくて、めちゃめちゃ可愛いなこの子。
この世界で会う女の子大体可愛いんだけど、なんというか。
わたし女の子だからいいけど男の子だったらフラグ立ちそうだね色々と。
「ちょっとドラゴンに噛まれちゃいまして。」
「ドラゴン――そんな感じには見えませんでしたけど、そうでしたか。あまりご無理はなさらないでくださいね。本日は朝食は摂られますか?」
「え、はい、何かください。」
ん?本日?
「そ、そんな!アーニア様!敬語などやめてください!」
「え、あ、え?あ、うん、わかり、わかった。」
私がお客様?だからかな?でもアーニア様って読んでたし結社の関係者なのかな?迂闊に敬語は使っちゃだめ?どうもアーニア様の顔見知りらしいんだけど――私は一切わからない。
みんなどこだろ?
せっかくだしご飯食べよう。
あれ?宿で顔見知りってことはアーニア様近くにいる?もしかして。
そろそろアーニア様扱いされるのもちょっとね。
一度話してみたいな
でもレイちゃん達探さないと。
少しまってメイドちゃんの持ってきた御飯を食べた。
パンとスープとベーコンエッグなんだけど普通に美味しかった。
素材がいいのかな?やっぱりこうシンプルな料理っていいよね。私は卵かけご飯が好き。
メイドちゃんがまた近づいて来る。
ってメイドちゃんしかいないの?この宿。
「もうすぐアヤ様がこちらへ来ますので少々お待ちいただけますでしょうか?」
「アヤ?うん、わかった」
もしかして名前被りでは?キャラ薄くなっちゃうじゃん。
アヤ様って誰??この世界に来てから謎でいっぱいなのに更に疑問符が増えた。
疑問1、アーニア様とは?
疑問2、この世界の色々、これはもう異世界なので後々でもいい。
疑問3、アヤ様とは?←NEW
アーニア様でもう「???」状態なのにアヤ様って。
なんかこれはなんとなくだけどなにか予感がする。
「あら、もう良くなったの?昨日いきなり倒れちゃったから心配したのよ。」
後ろから女の子の声が聴こえる。
どっかで聴いた声だな?どこだろ?
そう私。自問自答を終え振り返ってみたものは!!
腰まで伸びた髪、透き通った金色の目、どこかで見たことがある顔。
そして前髪がパッツンだ。
どこかで見たもなにも私じゃん?
うーん?よく見ると私に似てはいる
――けど、すごく似ているけど瓜二つではない?くらいかな?
私はパッツンにしたことないし。
この人が実はアーニア?でも本人が私をアーニアって呼ぶかな?
アヤってことはなんか私に関係はしてそうなんだけど。
声もどこかで聞いたはずだよ
――私の声にソックリだよ!
で、誰??
アーニア様?ではないよね?ん?アーニア様が私を試してるとか?
「どちらさまですか?アーニア様??」
わたしは素直に聞いた。
「はあ?アーニアは貴女でしょ?昨日いきなり倒れたのよ。まさか意識無くした影響で記憶なくなったとかじゃないわよね?丈夫な貴女が倒れるなんて死ぬんじゃないかと思って心配したのよ!まあ気を失っただけみたいだったからね…大丈夫だとは思ったけど。」
いや、全然大丈夫じゃないよ?私、まったく話わかってないからね?
ちょっとめんどくさいな――名乗るか。
「あの、全然わからないんですけど、それに私アーニアではなくて篠村綾子って名前ですよ?私、アーニア様扱いされてて実は困惑する毎日だったんですよね。」
「貴女の本当の名が篠村綾子ってのは知ってるよ?でもアーニア様扱いって?なに?ん?」
「ん?」
え?また話がややこしくなっちゃった。
アーニア様って綾子って名前なんだ
え?おかしくない?
私は私で?
アーニアは綾子で
綾子はアーニア?
私がアイツでアイツが私??
目の前のアヤ=篠村綾子がアーニアで私を試している?
話がかみ合わなすぎる。
うー、目がまわる。水、水、水を一気飲みした。うまひぃいいい。
「ちょっと本当に大丈夫?やっぱり様子変よ?もしかして倒れてから記憶がからっぽ?貴女昨日『お兄ちゃんと旅だから勝負パンツ履いてきたのにーお兄ちゃん先に帰っちゃったよー』って言ってたの覚えてる?」
で、でた!からっぽ!
違うんだよ。
私は篠村綾子だからアーニアじゃないの?
あ、でもこの人の話だとアーニアの名前も篠村綾子なんだっけ?
それにそんな恥ずかしい話もしないし私にはお兄ちゃんなんていないよ!
あれ?私!今、勝負パンツ履いてる!!
「ア、アヤさん、とりあえずお座りください」
なんか自分の名前呼んでるみたいで呼びづらいな。
私にソックリだし。
でも別人ってことくらいは私でもわかるんだけどなあ。
この人がアーニアと仮定したらの話だけど。
エレナからみると私はアーニアにしか見えないみたいだし。
アーニアって誰なの?私は篠村綾子だよ!
私は目の前にいる私によく似た人に、この世界に来てからいままで見たこと、思ったことを少しずつ少しずつ伝えた。
この世界へ来たこと、エイバナという村でのこと、レイちゃんやエレナやセレナとのこと、そして私がドラゴンに噛まれ死にそうだったこと。
「エイバナってエリアA-87の村のことね。そこ、ここから7000㎞くらい離れてるよ?エレナとセレナが出てくるのはわかるけど、そのレイちゃんって髪の長い子?月詠令?」
「そうだよ、私の親友だよ。」
え?レイちゃん知ってるの?
それに7000kmって地球なら惑星の裏側じゃん。
「その子がいるなんて、そんなはずは……、んーいや――あー!なるほどねー。『branch of originate』かー!ドラゴンに噛まれて生命維持とかの為なのかしらね?多分。」
気づいているかもしれないけど途中から敬語がめんどくさくなってしまった。
なんというか見た目歳も同じくらいだしね。
あと何がなるほどなんだろう?出来の悪い私にもわかりやすく教えてほしいな?
それと王女様のブランチ?小さいころ土曜日に観てたなあ!!
「ちょっと、用事出来たから私帰るね、綾子。また明日か明後日来るよ。部屋も荷物も好きに使ってね。フフ、アーニアが借りてる部屋だけどね!ツムギちゃんこの子は綾子ね。いままで通りアーニアと同じ様に扱ってね。あ、いや、一応護衛もお願いね。綾子って呼んであげて。じゃね!綾子!ツムギちゃん!」
「え、ちょっ!待って……」
え~、アヤ説明してよ~。情報が多すぎるんだ。
でも、アーニアじゃなく綾子って呼んでいたよね。
ってことはアーニアではないと理解してくれたのかな?
でも~、一向に疑問符は減るどころか増えたよね。
異世界にきてわけわからないのに、また意味がわからない……
誰か説明ぷりーず!
頭痛くなりそう。
もう考えるのはよそう――今は現実逃避しよう。
わたしは目を背けるのだけは得意じゃないか。
まあ、なんとなくそんな気はしてたよ。
でも私はアーニアではない。
でも、この体は?勝負パンツは?その答えは?
あ〜、もうやめよう。
「あ、あの綾子様、ご挨拶が遅れました。わたくしはツグミと申します。この宿の責任者をしております。これから綾子様のお世話と護衛をさせていただきます。わからないことがあれば何でも仰ってくださいね!あ、宿はアヤ様がオーナーで私は眷属の様な者、まあ雇われ店長ですね!」
そうだ!気になることあればツムギちゃんに色々聞けばいいのだ。
でも今日はもうそのことを考えるのはやめよう。
「あ、綾子です。ツムギちゃんよろしくね。」
「はい!よろしくおねがいします!」
今日はこれからどうしようかな?
アヤも明日か明後日なのかいつ来るのかわからないし。
この村?の散策でもしようかな?
うーん、あ、そうだ!
「ツムギちゃん、宿の食事メニューってあるの?」
「ありますよ!こちらです!」
ふむ、私が出来ることはやっぱり料理だよね。
メニューなんだけど、なんとなく読めないことはないね。
片仮名?はちょっと癖が強いけど平仮名と感じは雰囲気で読めるかも~?くらいな感じ。
「やることないから私も料理したいけどいい?」
「ほんとですかー?いいんですかー?でもアヤ様に怒られちゃいます。」
「いいのいいの!なにか言われたら私が言っておくから!」
「それでしたら是非一緒にしましょう!」
私は料理をするぞ!やることないし!新メニューを追加するぞ!
でも地域によって味の癖とかあるのかな?その辺はツムギちゃんに聞くか。
ひとまずはメニューの品を作れる様になるか。
それにしてもレイちゃんたちどうしてるかな?7000kmも離れてるんだよなあ。
ま、アヤが来たら相談しよう。
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