第5話 いっけな〜い!血肉血肉!
いっけな〜い!血肉血肉!わたし篠村綾子17歳!文明が中世レベルと思いきや水道、お風呂、冷蔵庫、照明まで完備の住みやすい世界に来てしまったの!でも世には魔モノという害獣が溢れて旅をするにも魔モノを倒せなきゃいけないみたいなの!え?私?そんなの無理無理!倒せるわけないでしょ!レイちゃんならまだしも!私は今日は見学なの!
「ひぇ…――た、たすけ――」
私は右肩から胸にかけて噛まれていた。
あれ?ノアじゃなかったの?なんで?なんで私噛まれてるの?え?ノア?あれノアあっちにいる。小さいノア。
恐怖で身体は硬直していたが意外と痛くなかった。
でも骨を砕く音が響き、次第に嫌な感覚がひろがる。
腕とかもう千切れてない?
同時に貧血の様な感覚と味わったことの無い痛みを感じた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ、死にたくないもうころし――
「綾子!」
「おねーちゃん!」
「「アーニア様!!」」
「あ、あれ?姉上?」
「あれ?じゃないよ!あれほど言ったじゃないセレナちゃんのお馬鹿!離れた私もお馬鹿!おねーちゃん……――!」
どうしてこうなったんだっけ?
もう嫌…。夢に違いない。
これは悪い夢を観ているんだろう。目が醒めたらきっと
「のるく…目が…醒め…た…ら…。」
あれ?――ドラゴンは?痛みはなくなり空気の音、誰かの声がガンガンと頭に響く。
恐怖なども消え失せている。
私を見下ろし、私を心配する子達が目に映る。
私は仰向けになり地に伏せているのだろう。
「おねーちゃん喋っちゃダメ!」
「綾子!あやこぉ〜ううぅう!っ!うう――」
レイちゃんダメだよ。可愛い子がしちゃだめな顔になってる。
エレナも必死に私の右肩を抑えて血まみれになっちゃってるよ。
少し離れた所にエレナにそっくりな子が顔を青くし泣きながら呆然としていた。
そんな顔しないで。
「大……丈夫だよ、セレ……ナ…ゴホっ!」
全てがほんの数秒の出来事だったのかもしれない。私は声も出せず動くことも出来ず意識を手放した。
………
少し時間は遡る。
今日はチュートリアルで魔モノの討伐【体験コース】の日です。主にレイちゃんが体験をして私は見学!
いや、私には無理だよ。
元々、剣術一家のレイちゃんならまだしもだよ?私はからきしだよ?エレナ曰く、ゴブリンにすらすぐやられちゃうらしいよ?無理無理
日の出間もない早朝の現在、村の出口に私達は集合した。
メンバーはレイちゃん、エレナ、ノア、私。
合流したメンバーはエレナのお友達でちびっ子軍団の2人――あれ?3人いるぞ?
ちびっ子のみんなはレイちゃんに向けて自己紹介をする。
私はアーニア様らしいので私向けにではないのだ、私悲しい……。
まず左から一人目。
「ナツですニャ。猫科の神獣ですニャ。今年で1849歳ですニャ。エレナ様の――ヒッ……!エ、エレナちゃんと仲良しニャ!」
にゃ?にゃんと!猫耳!語尾にニャだと?にゃんとあざといのニャ…!
年齢はエレナに比べると下だけど多分…この世界だと上位にいる存在なんだろうな…。神獣って人型なの?ノアも人型になるの?変な間があったけどエレナと仲良しみたい。
赤毛にサイドテールに前髪パッツン。ローブを着ているので格好はわからないけど…とにかく可愛い!
そして二人目。
「ミーナです。私はエレナさ……エレナちゃんと同じプロトタイプの新人類、ハイエルフと言われる種族です。1203歳です。エレナちゃんは先輩であり仲良しさんです。私はエレナちゃんの補佐であり副官で相棒です。エレナちゃん呼び。エレナちゃんエレナちゃん…ふふふ、はあ〜……ぺろ。あ、アーニア様お久しぶりです!」
お、おう、説明ありがとう。
エレナの事が好きでたまらないといった感じだ。エレナは顔を青くしている。
レイちゃんもドン引きだ。
ミーナは少しみんなより頭1つ分背が高くエレナと比べると少しお姉さんって感じがする。
銀髪の綺麗な長い髪をおさげにまとめている。
ハイエルフだからなのかとてつもなく美人顔なのだけど些かなにか残念だ。
そして最後は。
「セレナなのじゃ。エレナとは双子なのじゃ。レイ殿のステータス不具合は私がなんとかするのじゃ。おね、姉上もエレナも久しぶりなのじゃ。」
の、のじゃっ娘だー!!
エレナそっくりの顔に青みがかった銀髪のツインテールに髪飾り。
服装で今は違いはわかるけどそれ以外だと若干癖毛ってくらい?
エレナの髪飾りは蒼なのに対しセレナは紅。
エレナは溜め息をついてるが少しだけ嬉しそうだ。
やっぱり実の妹は可愛いのだろう、というかめちゃくちゃ可愛い。
レイちゃんもうずうずしてる。
ステータス不具合対処にだろうか?のじゃっ娘にだろうか?両方だよね!わかる。
「ごめんね、おねーちゃん、レイちゃん。セレナちゃんがどうしてもっていうし、ステータスや管理者ウインドウの不具合は直接しらべるって。」
「いや、いいよありがとう!」
とレイちゃん、エレナの頭を撫で応える。
「セレナちゃん、おねーちゃんは今からっぽの状態だから気をつけてね。あと、セレナちゃんリリスちゃんに叱られたばっかりなんだからこれ以上は余計なことしないでね。」
「ぐぬぬ、わかったのじゃ。」
お、エレナちょっと怖い。
セレナがやらかしたとか言ってた件だろうか?
自己紹介も終え馬車ではなく龍車に乗り込む。ノアが引くらしい。え?ノアって猫くらいの大きさだけど…。
『コンバートなの!』
ノアが馬くらいに大きくなった。これはドラゴンじゃん?姿も変わってる。
「ノアちゃんは龍種、竜種のどんな姿にもなれるのですよ。本当の姿は大きすぎて地上では無理ですけどね。」
ミーナが得意気に説明する。
「早くノアも人型になれるよう頑張るニャ。私も苦労したニャー、エレナちゃんにボコボコにされて配下になってよかったニャ。お陰で魔科学やら素粒子コンバートやら覚えて人にもなれたニャ。猫耳と尻尾はアイデンティティーだから外せないニャ。もちろん私も猫科ならなんでも化けれるにゃ」
『わたしもがんばるのー』
ボコボコにされた……?あとナツ、説明ありがとう。
私は疑問に思っていること顔に出ちゃうのかな?
「人にコンバート?するのと猫の色んな姿に変わるのって違うの?」
レイちゃんが少し大きいノアにお手をさせたり甘嚙みさせながらナツに聞く。
二人とも楽しそうだね。
「厳密に言えば一緒なんだけど、猫科ならなんでもなれるのは遺伝子情報を魔素、いわゆるフラッピングエーテルという素粒子が読みとり身体を変化させるのだけど人の遺伝子情報は難しいかな――あ!難しいかニャ?レイちゃんも魂核から発する魔素から只者じゃニャいし結社で勉強するといいニャ。」
語尾のニャ、忘れたな?結社って?エレナがいる組織だっけ?この世界に魔法の様なものがあるのなら私も興味があるな。
素粒子と聞いて科学っぽいのもちょっと興味あるな〜。
話をしててもアレだしノアを撫でて龍車に乗ろうとした。
しかし、ここで問題が発生した。
私は力がなさすぎるのだ――乗ろうとしても腕が身体を持ち上げきれず、乗れない。
流石に自分でも焦ったけどよくよく考えると1年も引き篭もってたんだよね。
ここまで筋力ってショボくなるわけ?
トライ&エラーよ!綾子!何回かは失敗してもきっといつかはイケる!
ふぅうんーー!!!
おりゃーーー!!!
ぬぉーーー!!!
「綾子、女の子がしちゃいけない顔になってる。」
レイちゃんがシュタっと龍車に飛び乗り私を引き上げる。
レイちゃんかっこいい!でも普通の人は助走もつけず飛び乗れないからね…。
ん〜、少しは筋トレした方がいいのかな?私はかよわい女なのだ。
筋トレとかスタイルを気にするなんて今さらだ。
おっと、いかんいかんネガティブになっていた。
私は腕やお腹を触りながら筋トレについて考えて力をいれたり抜いたりしていた。 あ!お腹触ったけど別にお腹出てるわけじゃないよ!多分。
龍車が進む。
ビックリしたんだけど全然揺れないんだよねこれ。
スピード的には自動車くらいの速さはあると思う。
景色の写り変わり的にね。
舗装されてる道には見えないんだけど…魔法みたいなもの?意外と文明進んでない様に見えて進んでる感じがする。
リーシャちゃん家は冷蔵庫も水道もあればお風呂もあるし、照明もある。
これもフラッピングエーテルっていう魔素とも言われる素粒子の原理を応用した科学らしいんだけど。
この揺れの無さもその魔科学なのかな?益々興味が湧いてきた。
30分くらいかな?目的地に着いた。
でもなにこれ?
広がる森と廃れたビル群の景色が広がる。超古代文明?
木々で向こうまで見えないけど凄い遠くまでビルがありそうな気がする。
エレナ曰く「古代遺跡とかいわれてるけど旧シュテュルプナーゲル王都の跡だよー。一般の人は立ち入り禁止なのー」とのこと。
なんか日本の東京とかこんな感じじゃなかったっけ?現代的とも未来的とも言えるし日本のそれとも違うけど明らかに中世レベルの文明よりも発展したそれにみえた。
そしてここが「魔モノの龍種」のたまり場になっていてギルドでも手が負えず定期的に結社の人達が駆除しに来るらしい。
そもそも結社って何だろ?
ふとレイちゃんをみるとボーッとこの廃れたビル群をみて小さく「ふぉー」って言ってる。
目は――キラキラしている。
まあわかるよ、私も魔モノが出ないならのんびり観光したいもん。
あれ?ギルドでも手に負えないってヤバいんじゃない?
あー、でも大丈夫って言ってたしなあ。
ひとまず私達はエレナが案内する大きい廃ビルに入った。
結界がはられてるから安全とのこと。
ビルの入口には文字が削れて読みずらいけど
「ノ???ド魔科学研究所?」と日本語に似た文字で書いていた。
このビルや都市が旧文明の物だとすれば技術の最先端の場所だったのでは?
とにもかくもこのビルの1階のロビーの様な場所にシートを敷いて朝食の予定だ。 お腹すいたんだよ。今日は戦闘見学だし私は軽くピクニック気分なのだ。
今日持ってきたのは昨日の夜作ったハンバーグの様なものと、リーシャちゃんの焼く丸パンがちょうどよくバンズそのままだったので横に切ってレタスとトマトを挟んで味付けしたもの。
ちょうどブイヨンが余ってたしお酢や胡椒や玉ねぎを混ぜてデミとウスターの中間っぽいなんちゃってソースを作って味付けした。
いわゆるハンバーガーだね。
みんな美味しそうに食べてたしわたしゃ満足だよ。
セレナは両手にハンバーガーを持ちながら
「美味しいのじゃ、おねーちゃんこれ美味しいのじゃ。なんでいままで料理作ってくれなかったのじゃ。私もおねーちゃんに着いていくのじゃ。」
姉上呼びを忘れたな?それほど美味しかったってことで良いかな?
「え〜、セレナちゃん着いてくるの?リリスちゃんにまた怒られちゃうよ?」
「リリスねぇは鬼なのじゃ!初めてシステムに触ったから仕方ないのに!私は悪くないもん!なのじゃ!それにエレナも姉上の事黙っておるじゃろ?って、あ、あれ?帝国に行ってトラブったんじゃなかったかのう…?しかし、はんばーがーがおいしいのじゃ。そんな事はもう良いのじゃ。しばしの休養なのじゃ。あ、あと姉上――姉上のシステム落とした原因は私かもしれぬのじゃ――その、ごめんなさい」
「休養じゃなくて謹慎なんだけどね、あとおねーちゃん今からっぽ状態だから話してもわからないよー」
「そうじゃったな、それもわたしのせいなのかも……なのじゃ」
「直接的な原因はセレナちゃんじゃないと思うけどまあ後手後手にはなっちゃったよねー……――私もあの対処は出来たか怪しいよ…。」
なんか大変なんだね、結社って。
よくわからないのでエレナもセレナも頭を撫で回した。
仲良くしないとお姉ちゃん悲しいよ?
あとハンバーガーは1人2個までよ。
あとはお昼用だから。
朝食を終え、レイちゃんはセレナにステータスをみてもらい。
私はエレナを膝抱っこしつつ優雅にお茶を飲んでいた。
セレナがよくチラチラとこちらを観ている。
あ、後でね。
この子達は本当のお姉ちゃんアーニアさんとはあまり会えてないのだろうか?アーニアさんもハイエルフ?私はハイエルフじゃないよ。
ノアちゃんも抱いてあげてとエレナが言うのでノア(小形態)と戯れついていた。ノアすべすべなんだよなあ。
戦闘というより魔モノ駆除はレイちゃんが整い次第出発する予定。
セレナは駆除ではなくステータスの不具合を見に来たのでエレナと共に私の護衛兼話し相手となった。
戦闘はエレナと同等らしいけどジャンルが少し違うらしい。
魔モノは王城を寝ぐらとしているらしくここから2kmほど離れた場所らしい。
え、それラスボスとか?まあ世界更地に出来る戦力何人かいるし大丈夫なんでしょ?
そう思ってた時期が私にもありました。
王城に向かう途中、ステータスの不具合について聞いたけど原因はわかったらしいのだけどセレナ曰く
「レイラインからフラッピングエーテルが直結して送られてきてるから一般向けのシステムじゃ耐え切れないし、この事象自体がありえないのじゃ。姉上じゃないと直せないのう……――ごめんなのじゃ。」
レイラインシステムというこの世界の人間が身を守れる様に配慮したシステムがあり、役割としては穢れた魂の救済とステータスの付与というものだった。
ちなみに結社の人はステータスは使わないみたい。
純粋に単独で強いらしい。
■まとめると
- 現状レイラインシステムは活きてはいる。
- レイラインからレイちゃんに直接エネルギーが送られてくるが普通はありえない。
さっぱりわからん!!
- レイラインシステムから中継器を経てステータス通りの力が分配される。
さっぱりわからん!!
- レイちゃんはノアに余分なエネルギーを吸って分解してもらっているので無事。
さっぱりわからん!!
- レイちゃん曰く、朝はノアに触らないと動けない。
- 管理者側のシステムとそれに直結したアーニアのガーデンシステム?が落ちっぱなし。
ガーデン?さっぱりわからん!!
- ガーデンシステムが何を指すのかわからないけどアーニアがいないと直せない。
私がアーニアではないので直せないしさっぱりわからん!!
さっぱりわからんけどヤバいということは理解した。
レイちゃんノアがいないとヤバかったんだね..。
レイちゃんのステータス、セレナがログから読み取ったって言ってたから聞いてみると、普通の人は扱えない剣技らしいのだけど、でもレイちゃんは何故か当然の様に使えるらしい。
どうやら結社の人達が使う剣技と同じらしいんだよね。
あとレイライン直結してるからなのかいわゆるステータスの数値はカンストらしい…チートじゃん!
レイちゃんは「うちの剣術そのまま使ってるだけだよー」って言ってた。レイちゃんすげー!
「らしい」「とのこと」ばかりなのだけど聞いた話なのでね!しかたないのだよ!
そして、特に何事もなく王城についた私達。
王城――これ城といえば城なんだけどな。
城と言えばアレ、中世のなんかそう城!あれを思い浮かべるんだけどさ、これはなんか軌道要塞?船?なんか今にも発進しそうな感じのアレ、時空SFっぽいアレ。
人型にならんよね…?まさかね…ハハ。
私的にはこれ好きなんだけどレイちゃん的には「なんか違う!」らしい。
まあ気持ちはわからないでもない。
さ、カタパルトの様な入口からいざ入城!!
はいってすぐ思ったんだけど、これまずいやつってのはなんとなくわかった。
ぞわぞわする――帰りたい
本当に大丈夫?ねえ?大丈夫?
カタパルト(多分)から入ってすぐなんだけど、なんでか汗が止まらない
これが第六感ってやつ?私の状態を察したのかエレナとセレナがぎゅっと両側から手を握ってくれた。
「大丈夫?おねーちゃん」
「大丈夫かのう?姉上」
「う、うん、ありがとう」
「そのローブ着ている限りは何があっても大丈夫だよ。」
「うん、わかったありがと。でも、ちょっと怖くてね、手握っててくれるとありがたい……」
「うん!わかった!いこ!」
まっすぐ歩いてきたら、ここ謁見の間っていうのかな?
広い空間に入ったんだけどなんか聴こえる。
ライオンのゴロゴロ喉を鳴らす感じの更に重低音みたいな。
グルゥオオオオオ
うわあああああああ!!!!
びびった…。ここ暗くてよく見えないんだけどなんかおっきいのがいる
「あー、いるニャ!凄い臭いニャ!」
「いますね。アーニア様は下がっていてください。レイさんいきますよ!」
参加メンバーはレイちゃん、ナツ、ミーナ。
というかミーナ普通の様にアーニア様って呼ぶよね
作戦も何もナツとミーナがボコってレイちゃんが飛び技で仕留めるという接待プレイだ。
さすがに近接は慣れてからにしたいみたいで今度ゴブリン(魔モノ)と戦いにいくらしい。
私はゴブリンにもやられちゃうらしいから遠慮しとこうかな。
っで出てきたのはドラゴンって感じ?だと思う。いかんせん暗くてよく見えないのだ。
羽があって、5~6メートルくらいかな?いわゆるドラゴン!って感じ。
あれ1匹だけじゃくて3匹かな。大丈夫かな?レイちゃん。
なんて心配していたんだけど、ナツとミーナが圧倒している。
すげえ、ちびっ子の見た目なのになにあの動き……
ドラゴンが踏もうとしてるのに下でガキンて音がしてドラゴンが転ばされる…。
物理学とは?あれも魔科学なのかな?
ナツなんかパンチしてドラゴンふっとばしちゃったよ。
ドラゴンが3匹重なって倒れてるのかな?
「レイさん、今です!」
---
まあ難なく終わった。
レイちゃんの技も凄かった。
月詠式剣術「弐式 朧月」は凄い。
ナツがめちゃくちゃ感激してもう1回みせてくれニャー!とか言ってエレナに止められていた。
今はエレナも混じって4人と1匹で解体している。
どうやら肉は食べれるらしくノアも喜んでいた。
あれ?共食い?まあ神龍と普通のドラゴンじゃ違うのかな?そこは触れないでおこう。
ノアも解体も解体が得意らしく率先して参加しにいった。
戦闘だと出番なかったもんね。
セレナは解体が苦手らしく、少し離れた場所で私とお留守番だ。
あれ?セレナどうしたの?もじもじして。
「姉上、あの、お花を摘みたいのじゃ……」
あー
「でもここトイレあるの?」
「多分まだ生きてる建物だしあると思うのじゃ。すこし探してきてもよいかのう?」
「うん、もう戦闘は終わったし早くいっといで!」
セレナは小走りに消えた。
しかし暑いんだよねここ――空気もあんまりよくないし。ローブ脱いじゃお、もう終わったし大丈夫よね。
ふー、涼しい!
あれ?誰か近づいてくるけど、ノアか。龍車引く時の形態になったんだね。
「どうしたの?向こうでやることなくなっちゃった?こっちおいで」
そう言って両手を差し出した。
ガブっ!!
「え?」
唸り声をあげソレは更に力強く顎に力を入れ始めた。神経が切れる嫌な音がする。
「ひぇ――た、たすけ――」
私は右肩から胸にかけて噛まれていた。
あれ?ノアじゃなかったの?なんで?なんで私噛まれてるの?え?ノア?あれノアあっちにいる、小さいノア。
恐怖で身体は硬直していたが意外と痛くなかった。
でも骨を砕く音が響き、次第に嫌な感覚がひろがる。腕とかもう千切れてない?
同時に貧血の様な感覚と味わったことの無い痛みを感じた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ、死にたくないもうころし…
「綾子!」
「おねーちゃん!」
「「アーニア様!!」」
「あ、あれ?姉上?」
「あれ?じゃないよ!あれほど言ったじゃないセレナちゃんのお馬鹿!離れた私もお馬鹿!おねーちゃん――!」
どうしてこうなったんだっけ?もう嫌…。夢に違いない。
これは悪い夢を観ているんだろう。
目が醒めたらきっと
「のるく…目が…醒め…た…ら…。」
あれ?ドラゴンは?痛みは――なくなり空気の音、誰かの声がガンガンと頭に響く。恐怖なども消え失せている。
私を見下ろし、私を心配する子達が目に映る。
私は仰向けになり地に伏せているのだろう。
「おねーちゃん喋っちゃダメ!」
「綾子!あやこぉ〜ううぅう!っ!う――」
レイちゃんダメだよ〜、可愛い子がしちゃだめな顔になってるよ。
エレナも必死に私の右肩を抑えて血まみれになっちゃってるよ。
少し離れた所にエレナにそっくりな子が顔を青くし泣きながら呆然としていた。
そんな顔しないで
「大――丈夫だよ、セレ……ナ…ゴホっ!」
全てがほんの数秒の出来事だったのかもしれない。
私は声も出せず動くことも出来ず意識を手放した。
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