第5話

「なんだ?」


 レーダーを見るとすでに奴はこの衛星とぶつかった事になっている。


 どうなっているんだ?


「着陸している?」


 彼女が呟くようにぼそっと言った。


「着陸? 何を言ってるんだ?」

「微かだけど、重力があるわ」


 言われて初めて気が付いた。


 今まで俺達は無重力状態でふわふわ浮いていたのだが、いつの間にか俺は床に足をつけていた。重力計を見ると〇・〇一Gを示している。

 どうやら、衛星ごと奴の表面に着陸したようだ。レーダーの記録を見ると奴は衝突の寸前に急激に速度を落としている。

 計算してみると、千G近い加速度がかかったはずだ。普通なら中の乗員は煎餅になっている。それだけのGを中和できるだけの慣性制御機能を持っているというのか?

 それにしても、奴ら何のつもりだろう? 

 俺達をどうとでもできるはずなのにすぐに殺す気はないようだ。こっちへ乗り込んでくるつもりだろうか? 


『みゃうみゃう』


 スピーカーから甘えるような声が流れる。

 しばしの間、奴は乗り込んでくる様子もなく、ただ衛星から離れてはまたぶつかるという行動を繰り返していた。

 しばらくすると奴は衛星から大きく離れ、レーザー砲の正面にぴたりと停止した。  


「これは……まさか?」


 彼女はしばし考え込む。


「撃って」

「え? いいのか?」

「大丈夫です。戦争にはなりません」


 俺は言われた通りレーザーを撃った。


 そして……


 奴は満足して帰って行った。

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