第2話
この事態が始まったのは一カ月前の事。その日、MDS(
地球を巨大隕石から守るという目的で生まれたMDSは、多数の監視衛星やミサイル衛星、レーザー衛星から構成され、月面基地でコントロールされていた。
だが、MDSは生まれてから三十年間一度も活躍する機会がなかった。
まあ当然だろう。巨大隕石なんて落ちてくるのは数千年に一度あるかないかだ。
最近では『千年に一度の災害に備えるなど予算の無駄だから事業仕分けしろ』という意見もある。
そんな折、監視衛星が地球衝突軌道に乗った小惑星を発見した。それでいよいよМDSの出番となったわけだ。
ちなみに隕石迎撃と言っても、必ずしもレーザーやミサイルを使うわけではない。小惑星の軌道が地球に衝突しそうだと分かったときは、多数のプローブを小惑星に着陸させて小惑星の質量を変えることによって軌道を地球衝突コースから逸らすという穏便な方法が普通は使われる。
しかし、そんな悠長な事をやっている暇がないというケースもある。その場合は表面にレーザー核融合爆弾、あるいは対消滅爆弾を設置して爆破して軌道を変更する。
それらの手段がすべて使えない最後の手段として巨大レーザー砲衛星が用意されている。
今回はまさにそんな時だった。
哨戒衛星が探知した時には、もはや通常の手段では回避不可能な距離に迫っていたのだ。
その時、迎撃衛星で当直についていた俺は近づいてきた小惑星にガンマ線レーザーを撃ち込んだ。
この衛星のレーザーは陽子と反陽子の対消滅反応によって生じるガンマ線を増幅したものなので、かなり強力ではあるが、それでもこのサイズの小惑星を完全に粉砕するにはエネルギーが足りない。だから今回は。表面の一部を昇華させ、その圧力で軌道を変えて地球衝突コースから逸らすという計画だった。
小惑星をビリヤードの玉に例えるなら、このレーザーはキューのようなもの。レーザーを当てる場所を間違えれば、小惑星はどこへ飛んでいくか分からない。下手すると地球や月にぶつかる。
小惑星の軌道を逸らすには、その質量、密度、形状を計測して慎重に狙いを定める必要がある。まあ、それらの作業はすべてコンピューター任せであって、俺の役割はトリガーを引くだけだが。
この時のコンピューターの仕事は実に正確で、レーザーを照射された小惑星は計算通り軌道を変え地球から離れていった。
そこまでは良かった……
その五日後、再び小惑星が現れるまでは……
もちろんそれも迎撃したのだが、それからというもの、小惑星が五日おきに現れるようになった。しかも、形が全て同じ。
さすがに変だと思って月面基地にデータを送ったら、専門家を寄越すと返事がきた。
そして、やって来た専門家というのがこの女というわけだ。
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