転校生は吸血鬼!?③
結局、休み時間の度に一真は青唯のところへやってきて、モヤモヤとしつつも話すことに慣れてきていた。 ただ常にマスクを付けていて、どんな顔かもあまり分からない。
風邪だとしたら病み上がりとは言え自分を手伝ってもらうのは何となくおかしいような気もしたが、聞けば風邪ではないのだという。
とりあえず流石に昼食はいつも通り茜鈴ととることになり、青唯はそれにホッとしていた。
「美味しかったー! ちょっと私、トイレへ行ってくるね。 青唯も行く?」
「ううん、私はいい。 ここで待ってる」
「了解!」
茜鈴は一人でトイレへ向かう。 その途中で偶然一真とすれ違った。 バッグを持っているためどこかで昼食をとってきたのだろう。 今なら青唯はいないため、話してみるのに丁度いいと思った。
「一真くん!」
「茜鈴さん?」
「ねぇ、青唯のこと気になっているんだよね?」
「え? えぇと・・・」
彼は分かりやすく狼狽えた。 それを見て軽く笑みを浮かべると、怒涛の勢いで尋ねかける。
「見ていれば分かるから! ねぇ、いつから気になっていたの?」
「・・・二週間前から。 俺がこの学校へ転入してきた時からかな」
「ひゅー! お熱いねぇ。 私、応援しているから頑張ってね! あ、でも青唯はまだ初心だから、いきなり変なことはしないように!」
上機嫌でこの場から離れトイレへ向かう。 親友の恋を全力で支えようと意気込んでいると、女子トイレに集まっている数人の噂話が聞こえてきた。 それを聞いた茜鈴は急いで個室から飛び出る。
「ねぇ! 今の話は本当!? それ、いつの話?」
「ついさっきのことだよ!」
「うわッ、だとしたら大問題じゃん・・・!」
茜鈴は手を洗うと急いで教室へと戻った。
「青唯! 青唯!」
「茜鈴? そんなに慌ててどうしたの?」
「聞いたの! 一真くんの噂!」
「噂って? どんな?」
「一真くん、吸血鬼なんだって!」
それを聞いた青唯は訳が分からず、呆けた顔をしてしまった。 吸血鬼とはよくあるホラー物の定番で、血を吸う貴族のような男のこと。 ニンニクが嫌いで、十字架が何とやら、と考え頭を振る。
「えぇ!? いや、流石に吸血鬼なんているわけがないでしょ」
「本当なんだって! 内容を詳しく聞いたら、一真くんのマスクの中を見た人がいるらしいの!」
「それでどうなってたの?」
「なんと! 大きな牙があったんだって!」
「まさかぁ」
だが確かにマスクの中は一度も見ていない。 牙があれば話しにくそうだが、そう言った様子は特になかった。
「あとね、水道の水を飲まずに持参した水筒で水分をとっているんだって!」
「それがどうしたの?」
「その水筒の中身が血なんだよ!」
「水筒の中身をその人は見たって言うの?」
「中身までは見ていないみたいだけど、水筒の中身を飲んだ一真くんの口元は真っ赤に染まっていたらしいよ!」
「本当かなぁ・・・」
もしそうならマスクも赤く染まっていそうだが、そのようなこともなかった。 だが水筒から飲み物を飲んだ姿も見ていない。 半信半疑であるが、茜鈴は楽しそうに自分の推理を繰り広げていく。
「そうなると色々と納得するよね、うんうん。 こんな暑い時期に長袖の学ランって言うのがまずおかしい。 吸血鬼は太陽に弱いから、肌を隠しているんだ!」
「おーい、茜鈴?」
「それにマスクをずっとしていた理由は、牙を隠すためだった! 全てスッキリ解決!」
「そんなのただの偶然でしょ」
「青唯! アンタ今、狙われているからね!? でも私が守るから安心して!」
青唯の話を全く聞こうとしない。 ただこの暴走気味になるところが、青唯にとっては魅力的だと思っていたりする。
「あッ! もしかして青唯が貧血で倒れたのって、一真くんのせいじゃ・・・」
「そんなわけないから! そこまで悪者扱いにしたら可哀想だよ」
話しているといつも通り一真がやってきた。
「青唯さん。 よかったら一緒に話さない?」
先程までは茜鈴が笑顔で送り出してくれているところだったが、今はまるで般若のよう表情をしている。
「駄目! アンタはあっちへ行って! 青唯には指一本触れさせないから!」
「えぇ・・・?」
先程応援されたというのに急に心を変えられ戸惑っている。 茜は青唯の前に立ちはだかった後、青唯の腕を掴んだ。
「青唯、行くよ!」
「え、ちょっと!」
青唯は茜鈴に腕を引っ張られ、引きずられるようにこの場から離れていった。
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