第12話 休日の駐車場は
休日の駐車場は、ほぼ満杯状態になっている。その殆どが家族連れと若いカップルだ。単独で登ってくる者はまずいない。というより、彼ぐらいのものだ。なので、胡散臭い目でいつも見られた。(分かってるよ、中には入らねえよ)と、車から降りることなく下っていく。しかし今日は違う。カップルではないけれども、二人の女性同伴だ。
駐車場は満杯の状態だったが、幸いにも一台の車が目の前で発進した。幸運に感謝しながら、「日頃の行いがいいからすぐに止められたよーん」と、軽口を叩いて止めた。
「何を言ってるの、二人の乙女のおかげよ」と貴子が言うと、思いも掛けずに「そうそう」と、真理子の声が彼の耳に聞こえた。ミラーを見ると、俯いた真理子が居る。そして貴子が手を叩いて「山の神さまも美女には甘いのね」とはしゃぎ回った。
プラネタリウムの中では、投影機を中心にして、その周りに椅子が設置されている。背もたれを大きく倒して、ドーム型の天井に投影される季節ごとの星々を観ることになる。貴子が気を利かせて真理子を中央にして、彼を隣り合わせに座らせた。気恥ずかしさが少し残ってはいたが意を決して話しかけた。
「俺の運転、恐かった?」
真理子は何も答えない。薄暗い灯りの下で、じっと俯いている。少し間を置いてから、ようやく重い口を開いた。
「わたし、こんなことを、ご本人に向かって言っていいのかどうか分かりませんけど。でも、やっぱり言います。でも、気を悪くしないでくださいね。わたし、自分が不良のように思えるんです。無茶な運転の車に乗っていたり、暗いプラネタリウムに入ってみたり、で」
(不良だって、俺が?)しかしつらつらと考えてみるに、そう思われるのが当たり前のような気がしてきた。ポマードをしっかり使って、エルビス・プレスリーばりのリーゼントスタイルに髪を整えている。不良っぽさを意識した言葉遣いで話しているし、口ずさむ歌と言えばロックンロール系が多かった。
「日ごろの行いって大事なんだよね」
そうつぶやく岩田の顔が突如浮かんだ。「年寄りみたいなこと言うなよ」と反論したものの、確かに損をしていると感じる彼だった。同じようなミスをしても、岩田なら仕方ないさとかばわれ、彼のミスには「集中心が足りない」と、小言になる。
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