第10話 鶏のハニーマスタード


 ソーセージには、粒マスタード。


 焼きでもボイルでも、ソーセージに粒マスタードは欠かせない。粒マスタードがあれば、ソーセージのうまさがグンと引き立つ。だけど、不満もある。


「なんで、こんなに小さい瓶なんかねぇ?」

「(´・ω・`)知らんがな」


 なぜか、粒マスタードの瓶は小さい。これでは数回使ったら終わりじゃないか――と、常々不満であった。ところが、である。なんと粒マスタードの大瓶を発見したのだ。躊躇なく購入し、スキップする勢いで帰宅した。今日は、粒マスタードをたっぷり使ったおかずにしよう。


 冷蔵庫から、鶏のもも肉を取り出して。フォークをブスブスと突き立てる。妻は鳥の皮が嫌いなので、いつもは皮を剥くのだが、今日はいいだろ。そのまま軽く塩胡椒で下味をつけておく。塩を振ることで、鶏肉から水分が抜けるのだが、水分じゃなくて余計な油分が抜ける奴ないものかね。調理中に油をとるの、意外に面倒なんだよね。


しばらくしたら、鶏肉を一口大に切り分ける。といっても、肉厚な部分もあれば薄い部分もあるので、全て均等にとはいかない。いいんだよ、男の家庭料理だ、こまけぇこたーいいんだよ。


 フライパンに油を敷いて、十分に温まったところで皮目を下にして鶏肉を焼いていく。ジュウジュウと美味しそうな音がする。あ、鶏肉に軽く片栗粉をまぶしておいてもよかったかな? まぁ、いいや、今日の主役は粒マスタードなのだ。


 皮が焼けたらひっくり返し、鶏肉に十分火を通していく。鶏肉は生焼けだと食中毒の可能性があるからね。農林水産省もそう言っている。でも、焦げも良くないので、焦がさないようにしつつ火を通す。

 焼いているうちに、鶏肉から油が出てきた。キッチンペーパーで拭き取る。余計な油を取り終わったら、火を弱火にして粒マスタードを投入。大瓶なので、遠慮せずに入れるのだー。続いてはちみつ。粒マスタードの半分くらいかな? そして、隠し味的にレモン汁を少々っと。後は、軽く肉に絡ませるように。よし、これでできあがり。


 おっと、付け合わせ忘れていた。サニーレタスとミニトマトでいいか。サニーレタスを皿に敷いて、その上にフライパンから鶏肉を移して。ミニトマトは彩りだな。よし、完成。


「今日、粒マスタードの大きいの、見つけたからハニーマスタードにしてみました」

「おー、いただきます」

「はい、いただきます」


 もぐもぐもぐ……。


「おいしい。でも、皮はもっとカリカリに焼いて」

「わかった」


 次は、切り分けずに焼いてから、ソースを絡めるようにしよう。


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