第8話 大根餅

「何か甘い物が食べたい」


 休日の気怠い午後、妻の突然の要求。突然だけれど、いつものことだ。しかし、おやつになるようなスイーツは冷蔵庫に入っていない……しかたない、作るか。たしか、大根がまだ半分くらい残っていたはず。あった。


 ピーラーで、大根の皮を削り落としたら、おろし器ですりおろす。ごりごりごりごり……。美味しい大根の見極め方は、髭(根っこ)の後ができるだけ真っ直ぐ並んでいるものが良いらしい。でもなぁ、大根って調理次第で味が変わる度合いの方が大きい気がするんだよなぁ。確かに食感・歯触り・舌触りは、善し悪しがあるけれど、コトコト煮て味を染みこませれば、不味くはならないよ。


 さて、大根をおろし終えたら、水気を絞ってボウルに入れる。結構、頑張っておろしたのに、水気を切ると量が少なくなるのは、少し寂しいな。

 おろし大根の入ったボウルに、片栗粉を入れる。そしたら混ぜ合わせ、こね合わせていく。片栗粉の量は適当だけど、最初は少なめに。捏ねながら様子を見て片栗粉を追加していく。ある程度の硬さになったら、均等に分けて小判型に成形する。大きさに多少のばらつきがあっても気にしない。お店じゃないんだから。


「なに作ってるの?」

「大根餅だよ」

「甘いの?」

「甘くするの」


 甘い物というリクエストと大根のイメージがあっていないらしい。出来てからのお楽しみだ。

 さて、材料の用意ができたら、フライパンを取りだして油をしく。火を付けてフライパンが暖まったら、小判型のおろし大根を並べよう。両面に焼き目が付くくらい。そこに、砂糖と醤油、酒、みりんを入れる。今日は甘い物というリクエストなので、砂糖少し多めに。


 独身時代、料理に砂糖ってあまり使った記憶がない。今は、結構使うけどね。使いすぎには注意しないと。実を言えば、妻の両親が九州は長崎出身なので、義母おかあさんの味付けは甘い。妻の実家で初めて口にしたときは、びっくりした。いまでも妻は、少し甘みが強い料理が好きみたいだ。


 さて、焼いた大根餅にタレが十分からんだら、火を止める。皿に移して……っと。


「おまたせ。熱いうちにね」

「いただきま~す!」


 ぱくっ。あふあふ。


「ん。おいしい。あと、お茶も」


 へいへい。

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