第7話 ナスの生姜和え


 妻は、身体が弱い。


 小麦のアレルギー(グルテンアレルギー)が判明するまでは、しょっちゅう具合を悪くしていた。できるだけ小麦を避ける食生活をすることで、少しはマシになったとはいうものの、生まれた時からの虚弱体質は変わらず。

 夏場などはすぐにへたばるので、少しでも精がつくものをと考えたりする。すると、どうしても味が濃くなる傾向が。それが続くと。


「さっぱりしたものが、食べた~いっ!」


 姫、ご乱心。


「さっぱりしたものっていってもなぁ。そうめんはだめだし、君、梅干しも嫌いだろ」


 妻の小麦アレルギーは、調味料に入っている程度ならなんとかいけるが、さすがに小麦主体のそうめんは無理。ただ、少しならいいといっても、小麦由来の加工デンプンはてきめんにアレルギー反応がでるので油断できない。アレルギーは個人差もあるから、やっかいだよえ。


 まぁ、工夫するのも料理の醍醐味だ。

 そうだな、鳥の胸肉で蒸し鶏とかどうだろう。ソースは、四半の棒々鶏ソースか……ポン酢でもいいか。ポン酢……そうだ、もう一品あるな。さっぱりした奴。

 スーパーでナスを買ってきた。ナスのへたは、そぐように斜めに包丁を入れて落とす。セコいと言われそうだが、もったいないじゃないか。で、縦に半分にしたものをさらに縦三等分、それを上下ふたつに切る。五分ほど水につけてアクを抜いたら、蒸し器に入れてレンジで四分。しなしなになったナスをボウルに移したら、コイツの出番。


 姜葱醤シャンツォンジャン。おろし生姜とネギの油漬け。業務スーパーで見かけたので買ってみたら、はまった。なにしろ、何にでもあう万能調味料なのだ。温かいご飯に掛けてもいいのだ。ただ、使いすぎると、妻が「生姜ばっかり」と怒るので、多用は避けている。

 その姜葱醤を、蒸したナスの上にどばっと掛ける。そして、ポン酢をナス一本につき大さじで一杯くらい。これはお好みで。そして軽く混ぜたら、ナスの生姜和えの完成だ。超簡単。


 蒸し鶏とナスの生姜和えを食卓に並べる。


「「いただきます」」


 妻は、ナスから箸をつけた。


「うまいっ!」


 そうか、うまいか。こういう反応を見ると、料理も苦ではなくなるな。私も食べよう。うん、うまいな。簡単だし、なによりさっぱりとしている。今度は、もっとたくさん作って、作り置きおかずにしておこう。


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