第12話 ごめんね…

 お母さんの話では、病気を苦にしていたとのことだ。

「一生を病人で過ごして私に迷惑をかける位なら、と自殺を図ったんです。この子は、あなたもご存じの通り。とても気の優しい性格ですから」

 そしてまた、こんな話も。

「元気でいて欲しい、健康であって欲しい、そう思いますよ。でもね、いざこうなってみると、親としてはどんな形にせよ、生きてて欲しいんです。たとえずっとベッドの中に居ることになっても、やっぱり生きてて欲しいんです。それがあの子には伝わらなかったのでしょうか…。それとも、これがあの子の復讐だったんでしょうか。母親であるあたしに対する復讐だったんでしょうか」

 両親に愛されなかったことが、いやそう思ってしまったことが、友人を苦しめたんだ。そしてぼくに救いを求めてくれたのに…。そのぼくが離れてしまい、絶望の淵に立たされたのだろうか。

 友人は、生きていくことに疲れてしまったのだろう。一度ならず二度も、自殺を試みるなんて。

 神様のお許しを得たから、もう一度だなんて…。でも、また生き返るつもりだったのだろうか。

 一度リセットするつもりだったのかい? 


 あるいは、お母さんの言葉が正しいのかもしれない。多分そうなのだろう。病気が彼を苦しめ、精神的重圧となったのだろう。


「今度目が覚めたら、きっと違うぼくになっているから。元気な強い子になっているから」

 こんな事を君は言っていたけれど、明日にでも目ざめてくれるのかい。そしてそして元気なその姿で、僕に

「やあ! 元気していたかい」

そんな風に、声をかけてくれるのかい。


 ごめんね、ごめんね、聡くん。

 君の気持ちに気付かずにいて。

 ぼくも、聡くんとの友情を、ほんとは取り戻したかった。以前のように、馬鹿話をしたかったよ。そして、やっとできた彼女を、妙子を紹介したかったよ。

 だけど、その君は、もう、この世に居ないんだね。

 居ないんだね、もう…。


 ごめんね、ごめんね…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ごめんね…… としひろ @toshi-reiwa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る