第9話 友人の手紙が

 その日を境にして私と友人との間に、目に見えないバリアのようなものが張られた。私の気持ちの中に嫌悪感が生まれていた。己の馬鹿さ加減を見せ付けられるようで、友人の顔を見ることができなくなった。そしてそれは友人にとっても同じことのように感じられた。

 廊下の先で見かける友人は、すぐに曲がってしまう。別棟の校舎に向かうこともあれば、他のクラスに入り込むこともあった。二人の間に流れたぎくしゃくとした空気は、卒業するまで消えることはなかった。


 二十歳になったばかりの時だった。突然に友人の母親から電話が入った。

「実はね、聡が他界しました。一度目の折には蘇生してくれたのに、今回はだめでした。もう大丈夫だと思っていたのですけどね。病状の悪化で入院して……」

 最後は涙声になって、聞き取れないまま電話が切れた。この間見舞いに行った折には、確かに現実と夢の区別が付かないようではあった。どうにもとんちんかんな会話になってしまった。自分の都合の良いように話を作ってしまっていた。


「僕の作った『クラスの歌』を、みんなで歌って楽しかったね」

「へび女、覚えてるかい? 今どうしてるだろう。元気に暮らしているだろうかね」

 結局、友人との和解は出来ずじまいだった。

そして電話を貰った翌日、私宛の友人の手紙が届いた。お母さんが、机の中から見つけてくれたものだ。どうやら、入院する前に書いていたらしい。

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