第11話 二人きりの夜
それから数か月が過ぎたある日の事。
「尋斗君、志須霞。ママ達、いとこの息子さんの結婚式だから2泊してくる事になるけど平気?」
母親が私と尋斗の部屋の前に訪れる。
「大丈夫ですよ。俺がお守りします!」
「いやいや、私が大事なお客様を守る義務あるから」
「お前は女の子だから!それ自覚しろよ!」
「してるよ~。気は強いから」
「何かあったら危ないから!」
「ハハハ…大丈夫。女捨てたから」
ムニュと両頬を摘まむ尋斗。
「気強くても、女捨てたとか言ってるけど、お前は女の子だから!」
「じゃあ、何かあったら尋斗が私をお嫁にもらってね?私も尋斗をお婿さんにもらってあげるから」
「クスクス…仲が良い事で。じゃあ行って来るわね?」
「行ってらっしゃい!」
私達は送り出した。
私の頬を摘まんだ両頬をパッと離す尋斗。
「自分で自分を傷付けるの辞めろよ」
「別に傷つけてないし。さあーて部屋に戻ろうかな?」
スッと部屋の出入り口を塞ぐ尋斗。
「な、何?」
「志須霞…無茶はするな。あの出来事(じけん)があったとしても、体は大切にしろよ」
「大丈夫だよ」
「言っておくけど、今、この辺の近辺、悪いニュースが増えてるから」
「へぇー、そうなんだ。分かった」
「だからお互い油断しないようにしておかないと」
私は尋斗を押し退ける。
「無茶しないって。尋斗、心配しすぎだから」
そう言うと部屋に入って行く。
「全く…!」
その日の夜 ――――
「尋斗ーー、先にお風呂済ませてくんないかな?」
「お前が先に入れよ。レディーファーストという事で」
「ありがたいけど、ここ日本なんだけど?」
「女の子は長湯だろう?ゆっくり入って来いよ」
「分かった。じゃあ先に済ませるね」
私は先にお風呂を済ませる事にした。
湯ぶねに浸かっていると
「なぁ」
「きゃあっ!ちょ、ちょっと!何!?驚くじゃん!馬鹿っ!」
「ば、馬鹿って…まあ無理もないか。悪い。取り合えず俺リビングにいるから」
「あ、う、うん…分かった」
そして、入れ替わりでお風呂を交代し、済み次第で私達は2階に行く。
「一人で大丈夫か?」
「えっ?」
「二人きりだし一緒に寝なくても大丈夫?」
「大丈夫だし。一緒の布団に寝たら逆に眠れないから」
「志須霞、勘違いしてるようだけど、誰も…一緒の・布団・に・寝る・って言ってないし」
「えっ?」
「同じ部屋にいなくても大丈夫って事で聞いたつもりだったんだけど?それともお前が一緒に寝たいの?お・な・じ・布・団・で♪」
ドキッ
「ち、違…」
「いや、俺は別に良いけど…俺の理性が抑えられるかな?」
「えっ!?」
「男と女だから」
「ひ、尋斗っ!」
クスクス笑う。
「何かあったらマジヤバイし、一緒の部屋に寝た方が良くないか?」
「だ、大丈夫だよ。じゃあ、おやすみっ!」
「おもしれー」
私は自分の部屋に入った。
その日の夜は、何事もなく1日が終わった。
2日目。
「志須霞、俺出かけるけど一人で大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。まだ明るいし」
「それはそうだけど…やっぱ行くの辞め…」
「大丈夫だから!行って来なよ!」
私は追い出すように尋斗を家から出した。
「行ってらっしゃい!」
私は取り合えず1階にいた。
だけど暇で仕方がない。
夕方、尋斗から連絡が入った。
私は、一旦、2階に行く事にした。
だけど、その空白の時間に事件は起き始めていた。
部屋に戻り再びリビングに行こうと廊下迄、騒々しい音が響いていた。
引き出しなど開閉する音。
ガチャガチャ……
ドタンバタン……
「………………」
≪尋斗…?≫
≪だけど…様子がおかしいよね?≫
私は、尋斗にメールする。
『まだ帰ってない』
との返事が帰ってきた。
≪じゃあ……≫
『警察には俺から連絡するから大人しくしてろ!良いな!』
だけど私の存在がバレたら?
私は恐くなり後ずさりし始め自分の部屋に行こうとした、
その時 ――――
音を立ててしまった。
≪ヤバイ……≫
「誰かいるのかっ!?」
「………………」
≪……バレる……逃げなきゃ……≫
だけど
動きたいけど足がすくんで動けない。
「………………」
≪お願い……動いて……≫
「おいっ!誰かいるなら返事しろっ!」
≪出来る訳ないじゃん……≫
「5秒待ってやる!いるなら出て来い!」
「5」
「4」
「3」
グイッと背後から口を塞がれた。
ビクッ
それと同時に
「志須霞…俺だから騒がないで落ち着け」
姿を隠すようにし壁に押し付けられた。
「…………」
≪尋斗…?≫
「0」
「………………」
「…気のせい…だったか?」
「大丈夫だったか?」
小声で話す尋斗。
コクリと頷く。
「警察には連絡してあるから、もう少ししたら到着すると思う」
「…うん…」
そして、その後、犯人は掴まった。
その日の夜。
「一人で大丈夫か?」
「えっ?」
「一緒に寝る?同じ布団で」
「ね、寝ません!」
「そう?」
私は自分の部屋に入るが、すぐに部屋を出る。
尋斗は自分の部屋に入る瞬間だった。
「尋斗…」
「志須霞?」
俺は、志須霞が何かを言いたそうにしている事が分かった。
犯人が捕まったとはいえ、俺がいない間、相当怖かったに違いない。
「来な」
志須霞は、すぐに来ようとはしなかった。
俺は彼女に歩み寄り、彼女の手を握ると部屋に入れた。
「一緒の布団で寝て良い?」
「…えっ?……ああ……特別だからな」
志須霞は微かに微笑み、俺の胸に顔を埋めた。
俺は、彼女の頭を撫でた。
そして、私達は一緒の布団で初めて眠った。
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