第6話 約束の証
「尋斗、尋斗」
尋斗の部屋に入って行く私。
「何だよ!騒々しいな!」
「ねえ、ねえ、今度、映画観に行こうよ!」
「はぁぁぁっ!?語学力ないお前と?」
「字幕出るから良いじゃん!」
「………………」
「……駄目?嫌?絶対に嫌?死んでも嫌?」
「…いや、そういう訳じゃないけど……」
「分かった!じゃあ良い!尋斗にあげるから誰か誘って来なよ!はい!」
私は尋斗の手を取りチケットを渡し、部屋を出て行こうとする。
スッ
ドアの前に尋斗が立ち塞がった。
「まだ、誰も行かないって言ってないじゃん!」
「………………」
志須霞は拗ねたような表情を見せてる中、俺を押し退け振り返った。
「そんな顔すんなよ」
「じゃあ行ってくれる?」
「ああ」
「本当に?」
「ああ」
「約束だからね!」
「はいはい」
「あー行けば良いんだろう?って返事」
「違うって!」
「絶対そうだ!」
「だから違うって!考え過ぎ」
「………………」
「じゃあ指切りする?」
「良いよ。指切りなんて」
「じゃあ、どういう約束の証しておく?」
「良いよ。行ってくれる……」
尋斗は私に歩み寄ると片手をドアにつける。
ドキン
私の胸が高鳴ると同時に頬にキスをされた。
「唇が良かった?」
ドキン
至近距離で言う尋斗。
見つめ合う私達。
「け、結構です!」
私は顔を赤くして尋斗の部屋を後に慌てて出て行った。
「おもしれー」
そして、出掛ける当日。
「女の子と出掛けるのどれ位ぶりだろう?」
「えっ?嘘だぁ~」
「本当だって」
「そうなの?」
「ああ、彼女と別れてこっちに帰って来て、お前と出会ってっていう流れだったからな。お前と出掛ける事もなかったし」
「そうかぁ~。確かにそうかも」
「だけど、語学力ねーお前と映画なんてありえねーな!」
「それを言うなっ!悪かったな!」
私達は騒ぎながら映画館に足を運んだ。
―――― そして ――――
「なあ、お前ってどんなデートしたいの?」
「えっ?いきなり何を言い出すかと思ったら。別に普通だよ。つーか聞いてどうすんの?」
「コミュニケーションだし」
「コミュニケーションね」
「何?誤解されては困るから前もって言っておくけど、お前に気があるとか、そういうの一切ないから」
「分かってます!大体デートって向こうと変わらないんじゃないの?遊園地とか映画とか…」
「まあ、一般的なデートコースだろうな」
「大人になったらドライブとか?ちなみに、尋斗の方はどうだったの?」
「俺は、向こうじゃ16歳で免許とれるから、フレンドリー感覚で出かけてたかなぁ~」
「楽しそう!じゃあ、尋斗の助手席第一候補者!」
「えっ?いやぁ~俺の候補者は沢山いるから」
「じゃあ何番目でも良いよ」
「一生乗れないかも」
「一生って……有り得ないんだけど!」
私達は騒ぐのだった。
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