第5話 自分の想い

「えー、佑二、またお前女つくったの?」

「そう」

「佑二、本当、女に飢えないよなぁ~。で?その子とヤっちゃったの?」

「まだそんな段階じゃないし」

「そうか」




あれから彼をゆっくりと向き合い一ヶ月を過ぎようとしていた。


好きにならないと思った私は日に日に彼の存在が大きくなっていく。




ある日の夜 ――――



「あーーっ!もーーっ!認めたくなーーいっ!」




カチャ

私の部屋のドアが開く。



「何、叫んでんだ?廊下まで丸聞こえだし」

「あー、ごめん」

「まあ、何となく予測はつくけど」



「………………」



私は倒れ込むと、すぐに起き上がる。




「アイツ女心分かり過ぎだしっ!マジムカつくっ!」


「トコトン好きになって思い切り傷ついて一層の事ボロボロになれば?」


「酷っ!そんな事になったら恋するの怖くなるし」


「出来るって!」

「いやいや、無理だよ!」

「恋人が死ぬよりマシだろう?」


「えっ?」


「ずーっと…待ってても…もう…戻って来ない」

「…尋斗…それって……」

「誤解するな!俺じゃねーぞ!そういう友達がいたから」


「えっ!?友達?」

「そう!友達。まあ、何かあったら俺が傍にいてやるから」


「……尋斗…」

「だから思い切り泣きたい時とか愚痴こぼしたい時とか俺が傍にいてやるよ!」

「うん…」



そして尋斗は部屋を出て行った。



それからも彼とは付き合っていたんだけど……




「志須霞ーー、どうよ?彼氏とラブラブ?」


「ラブラブって……どうかな?」


「不安だらけの毎日だよ! "いつフラれるんだろう?" とか…"どんな所を目撃するんだろう?" とか…実際にどれだけのショックを受けんのかな?って……もう、色々不安ばっか募って、いつもビクビクして……」



スッと私を優しく抱きしめる尋斗。



ドキン



「大丈夫!言ったろ?俺が傍にいてやるって!だから何かあったら俺に言いな。些細な事でも良い。俺がいるし聞いてやるから。だから思い切り彼氏にぶつかれ!志須霞」


「……尋斗…」

「なっ!」

「うん…ありがとう……尋斗」






どうしてだろう?


同級生なのに


何処かしっかりしてて


頼れる存在で


落ち着く




ねえ…


尋斗……


約束だよ


私の傍にいてくれる事 ―――






―――― ある日の事 ――――



「俺さ、お前の事、日に日にマジになっていくんだ」


「…佑二…」


「お前以上にイイ女いないよな?」



スッ

頬に触れる佑二。



ドキッ



≪わ、わ……これって≫



顔を近付けて来る佑二。



ドキン…


ドキン…




もう少しの所で……



♪~♪~



佑二の携帯が鳴り響いた。



携帯を取り出し、電源を切った。




「えっ?ちょ、ちょっと電話……急用だったら」

「平気。君との時間が大切だから」

「い、良いよ!電話出なよ!」

「志須霞」

「ねっ?」



「………………」



佑二は渋々、電話した。



「分かった。後で行く」



そして、電話を切った。



「ごめん」

「行って良いよ」

「えっ?」

「女の人でしょう?」

「志須霞?」


「噂では聞いてたけど、あんたの事、マジになって行く自分がいて最悪と思った。でもさ、不安ばっかで、いつ別れ話切り出されるんだろうとか、いつ、女連れてる所目撃すんだろうって……正直、色々過ってた」



「………………」



「どうして私だけ見て来れないんだろうって……私、嫌なのっ!自分だけ愛してくんなきゃ……だからこれ以上あんたとは付き合えない」


「……志須霞…それマジで言ってる?」


「マジだよ!だって他にいるんでしょう?何人いるか知らないけど…彼女は不安なんだよ!」


「志須霞…」


「私…こう見えても神経図太くないし、意外に肝っ玉小さいんだよね?愛して愛されて…それが私の恋愛だから。自分の想い無駄にしてるみたいだし……嘘つけないから……ごめん……なさい」


「そうか……」


「じゃあ…」



私は別れを告げた。



その日の夜。


「別れた?」

「うん…何か勢いつーか何つーか…でも……スッキリしたようなしないような」

「複雑な感じ?」

「うん…これで良かったのかな?」

「自分の意思で決めたんだから良いと思うけど」

「それは…まあ…」


「だったら良いと思う。だって、お前不安だったんだろう?後悔するもしないもズルズルのまんま付き合う位なら別れた方が良いと思う」


「そうだけど……」


「何か引っ掛かってる感じ?」

「う~ん……」


「毎日不安の中で生きて来ても良い気しないって。ビクビクして恋愛なんてしてられないじゃん!不安とか幸せを天秤かけてフィフティフィフティが恋愛楽しめると思う」



「尋斗…」



「想いが強い程、不安になるのも恋愛だったりするんだよなぁ~。やっぱり自分の想いが大切だったりするのかも。でも不安にも限度があるかもな。まあ、深く考えんな!お前らしくすれば良いじゃん!」



「…うん…」


















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