第2話 彼は大事なお客様

「志須霞ーー」



ドアの前から私の名前を呼ぶ尋斗。



「待って!開け……」



カチャ

同時にドアが開いてしまった。



「きゃあっ!」

「うわぁっ!悪い!」



バタン

ドアを閉める尋斗。



私は制服に着替え中だった為、まさかの出来事に恥ずかしさと驚きを隠せなかった。




そして ――――



「もうっ!入る時位ノックしろっつーのっ!第一開けないでって言い終える前に開けるから!」


「悪い!まさか着替えてるなんて思わなくて……以後気を付ける!」




同じ学校に通う為、しばらくは登下校は彼が慣れる迄は一緒に登下校するように言われた。


通って1週間、最初は彼氏?と言われ、からかう人もいたけど今は理解してくれて良かったんだけど……



そんな尋斗は、女子に人気でチヤホヤされる中、気に食わない男子生徒がいて ―――




「なあ新谷ーー、良い御身分だよなぁ~」

「そうそう」

「帰国子女だか何だかしんねーけど女子にチヤホヤされてさぞかし毎日エンジョイしてんだろう?」


「ペラペラの英語で色々な女口説いてんじゃねーの?」




ガタン

席を立つ尋斗。



「ちょ、ちょっと尋……」


と、止めに入ろうとする私は席を立つ。



「な、何だよ!やんのか?」

「馬鹿しい。問題起こす気ねーし」



彼等の前から去り始める尋斗は足を止める。



「それ、嫉妬って言うんだぜ?」



そして、振り返り ――――



「言っておくけど、俺は好きで英語やってた訳じゃねーし、ペラペラ話せるからって自慢しようと思わねーし。将来の為に無理矢理海外に行かされた御身分なんだよ!変な言い掛かりはよせよな!」




ドキン



≪尋斗……≫



そう言うと教室を出て行く尋斗。


私は後を追う。




「ちょっと尋斗、何処行くの?すぐに授業……」



歩み寄る尋斗。


至近距離まで顔を近付ける。




ドキン



「トイレだよ!」


「…えっ?…ト…トイレ?」



スッと離れる尋斗。



「男装して、お前は侵入する気かよ?犯罪だぞ!」


「し、侵入って……しないから!」


「何処迄も着いてきますってやつ?言っておくけど俺はそこまで面倒みて欲しいと思わねーけど?小さな子供(ガキ)じゃあるまいし!それともお前はそういう趣味なのか?」


「ち、違いますっ!」




スッと顔をのぞき込むようにすると頭をポンポンとする。



ドキン



「安心しな。戻ってくるから」



私の前を去る尋斗。


そんな私も渋々教室に戻る。




「何だよアイツ……」

「本当だよなー」

「でも何か鼻に付くよなー」



バンッ

3人のいる机を思い切り叩く。



「うわっ!」

「何だよ!」


「あんた達さ何かあった時、責任取れんの?」

「えっ!?」


「傷でも作ってみなよ!私達家族が面倒見てんの!大事なお客さんなんだから!何かあった時、彼の家族に申し訳つかなくなるんだからねっ!それ分かって喧嘩うってる訳っ!?」



「えっと……」

「それは……」



「…………」



「男だったらハッキリと言えっ!口あんでしょうっ!?付いてるもん付いてるんだったら何か言えっつーのっ!それとも何っ!?責任取れる訳っ!?」



「………………」



「黙ってないで聞いてんでしょ!?責任取れるんですかっ!?」


「い、いいえっ!」

「だったら二度とすんなっ!」



「…………」



「返事はっ!?分かったのっ!?分かってないのっ!?」


「わ、分かりましたっ!」




私は彼等の前から去った。



「全くっ!」



その後、彼等は尋斗に意地悪するのも言うのも辞めた。













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