第64話 【百合デート回】ライナと、ランジェリーショップへ!

 マリスネスでの出来事の後、私は一度ラストピアへと帰った。




「ふぅ。おめかしは、こんなもんでいいわね」


 私は洗面台の前で自分の顔を見る。

 令嬢の立場だけあっていつも身なりに気を使ってはいるのだが、今日はいつもより気合が入る。


(ちょっとぉ、もういいんじゃない? あいつといるんでしょう?)


 センドラーは嫌そうな顔で首をかしげている。


(なんでー、久しぶりのライナとのデートじゃん。きちっとしなきゃ)


 そう、何を隠そう今日はライナとの2回目のデート日だ。


 ライナは、私がマリスネスやバルティカに言っている間、業務を手伝ったり、私の代わりに仕事をしてくれた。

 それはもう──夜遅くだったり、ほとんど徹夜だったり。


 目に隈が出来ていて、良くあくびをしていた。そこまで身を挺して、私のために頑張ってくれた。

 今日は、その手伝ったお礼。


 ライナは手放しで喜んでいた。

 センドラーは本当に嫌そうだったけど……。



(秋乃。絶対に一線を越えちゃだめよぉ。わかったわね!)


(大丈夫大丈夫。ちょっとはライナを信じてあげなよ)


 センドラーは、いつもライナを警戒している。過剰反応だって、確かにライナ、ちょっと大胆で滅茶苦茶なところあるけど、大事な一線くらいはちゃんとわきまえると思うよ。


 多分……。


 そしてばっちり化粧を決めて、勝負服に着替える。


 白を基調としたワンピースにフリフリのついたスカート。

 鏡で見たけれど、清楚でとっても素敵な女の子だ。



 そして宮殿を出発し、待ち合わせ場所へ。



 歩いてしばらくすると、待ち合わせの場所だった繁華街の入り口に到着。

 そこに、ライナは立っていた。


 ライナもかなりおしゃれに気を使っている。

 薄い水色を基調とした服に、膝くらいまでのロングスカート。

 なんて言うか、お嬢さまっぽくて清楚でかわいらしい。


 ライナを見つけるなり、私は大きく手を振って呼びかける。


「ライナ、待たせた?」


「あっ、センドラー様。そ、そ、その──」


 ライナは私を見るなり顔を赤くしてどもってしまう。

 私から目をそらし指をツンツンしながら言葉を返し始めた。


「とんでもないです。私も今着いたばかりでした。あと、その姿──」


「私の、姿?」


「とっても素敵ですね。す、す、素晴らしいです!」


 ライナは私の姿を見て、完全にうっとりしてしまっている。すると──。


 何と鼻血を出してしまったのだ。

 慌ててポケットからハンカチを出して鼻血を止める。


「す、すみませんでしたセンドラー様」


「いいっていいって……」


 まさかこんなことになるとは。開始早々大変な事になっちゃった……。

 鼻血が吹き終わったライナ。再び私に視線を向けた。



 全身をくまなく、嘗め回すような目つきで見る。目の焦点が合っていない、ほぅとした表情。


「センドラー様も、とってもかわいいです」


 そう言って態度を変え、ぶりっ子のポーズで、目をハートマークにして言葉を返して来る。

 心の底から嬉しそうだ。よかったよかった。


 そしてライナは私に近づくと、ぎゅっと右手を握った。


「じゃあセンドラー様、デートの方行きましょう」


「──そうだね」


 そしてライナは繁華街の方へと手を引っ張っていった。

 それをよしとしないのか、センドラーはけげんな表情で腕を組んでいる。


(デートなんかじゃないわよぉ。くれぐれも友達同士として一緒にお出かけして遊ぶだけ  変な光をしたホテルに入ったりしたら承知しないわよぉ秋乃)


 センドラーの目がいつもより怖い。大丈夫だって、ただの友達同士なんだから、そんなことしないって。


 人通りが多い、にぎやかな通りを歩く私とライナ。


「どこか、行きたいところとかある?」


「センドラー様、私に任せてください。行きたいところ、あります」


 そう言って嬉しそうな表情でライナは私を引っ張っていく。

 今日は、ライナにお任せしよう。


 人通りの多い大通りを左に曲がり、ひっそりとした裏通りの道へ。

 おしゃれな格好をした貴婦人や子供連れの親子がよくいる通り。


「ここです」


 そう言って、とあるお店の前で立ち止まった。

 その店はほかの店よりキラキラした飾りがあって、おしゃれ雰囲気をしている。

 何々、ランジェリーショップ?


 確か女性向けの下着を売っている店だっけ。


「何々、下着を買いたいの?」


「はい。できれば、センドラー様と一緒に、同じものを買いたいんですぅ。だから、一緒に行きたいって、思ってました~~」


「へぇ~~。じゃあ入ってみようか」


 おそろか、これは面白そうだ。ちょうどブラがきつくなってきたころだし、寄ってみようか。

 ──が、センドラーの表情が今までになくらい引き攣っているのがわかる。



(秋乃。絶対に絶対に絶対に断りなさい。もっと健全な場所がいっぱいあるでしょ)


 警戒しすぎだよ。このくらい友達同士ならいいじゃん。


(大丈夫だって、変なことをするわけじゃないんだから。警戒しすぎだって)


「わかったわ。一緒に入りましょう。いい下着が見つかったらいいわね」


「ありがとうございます。じゃあ行きましょう」


(──もうどうなっても知らないわよぉ秋乃)

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