第32話 そして、運命の議会へ──
その後、様々な場所を探したが、結局は見つからなかった。
議会の前日。今日もいろいろな場所を探したものの、手掛かり一つない。
そして、明日に備えて寝ることとなった時間。
明かりが消えたベッドの中、布団を掴みながら私はつぶやいた。
「どうしよう。結局見つからなかった……」
途方に暮れる私。ライナも、がっくりとした表情をしていた。しかし、センドラーの方にそんな様子はなく、腕を組んで外の景色を見ている。
その表情に、あきらめの様子は見られない。
(センドラー)
(何?)
(ハイド達と魔王軍の証拠の書類。わかったの?)
(完全にではない。けれど、おおよその目星はついたわぁ。明日の議会、私に任せてくれない?)
嘘っ。手掛かり一つなかったのに?
それとも、センドラーだけは何か手掛かりを見つけたとか。
とはいえこのまま私が議会に出ても、エンゲルス達に何かできるとは思えない。開き直って、どうにもならなくなるのが目に見えている。
それなら、センドラーにすべてを託した方がずっといい。
それに、隣でセンドラーを見てきたからわかるのだが、彼女は決して根拠もなしにそんなことを言ったりはしない。彼女には確たる証拠があるのだ。
(わかったわ。明日の議会、あなたに任せる。お願いね)
(ありがとう)
そして私達はベッドにつく。星空を見ながら、ただ今後の運命を考えていた。
翌日。
雲一つない快晴の空。
歯磨きをした後、一度窓へ移動して景色を見る。
とうとう議会の日になってしまった、結局、何も証拠を得られないまま。
机に戻り、朝食をとった後、ライナからコーヒーを受け取り一口だけ飲む。
頭を抱えながら、隣にいるセンドラーに話しかけた。
(私達、また追放されちゃうのかな。本当に大丈夫なの?)
(勝負は、まだわからないわ秋乃)
センドラーは真剣な表情で、腕を組みながら目の前を見つめている。
その表情から、あきらめや絶望といったものは感じられない。やはり、手はあるみたいだ。
(何も得られなかったのよ)
(──時期が来たらわかるわ。あなたは精一杯弁解とエンゲルス達が街に起こした被害を語りなさい)
(私から? 語りなさいってそれだけ?)
(ええ。時期が来たら、交代するわぁ)
(議会の人ほとんど私の敵なのよ。聞いてくれないわよ)
センドラーに、駄々をこねるかのように詰め寄る。
私だってわかる。そんなことをしても無駄だってことを。
(これは作戦なの。成功率を少しでも上げるための。だから、まずはあなたに行って欲しいの。お願い)
センドラーは私をじっと見てそう言い放った。その眼は、真剣そのもので、ハッタリや開き直りを考えているようには見えない。
何か策があるのだろう。
それなら、センドラーを信じよう。
(わかったわ。あなたを信じる)
(ありがとう、秋乃。絶対、無罪を勝ち取って見せるわ)
「センドラー様。そろそろ時間です」
「──信じてるニャ」
ライナが話しかけてくる。どこか、落ち込んでいる表情。ミットもだ。
今日のことを彼女達も理解している。私のことを、心配してくれているのだろう。
「じゃあ、行きましょう」
「はい、センドラー様」
着替えをし、荷物に正装への着替え完了。
そして私達はこの部屋を出る。
「いってらっしゃいニャ」
「みんな、私。絶対帰ってくるから!」
大丈夫。私は、絶対無罪を勝ち取ってくる。
さあ、行こう!
そして私は、運命の議会へ──。
キィィィィ──。
議会の入り口。
木でできた両開きの扉が開く。
中は伝統を感じさせる木でできた造り。広々したこの場にはいろいろな服を着た貴族の 人たちがすでに座り込んでいる。
その席は楕円形にセットされており、一方向を向くように出来ていた。
そう、中央にある発言者が発言する机だ。
そして──。
(うっ、やっぱり私敵なんだ)
私へと降り注ぐ、議員の人からのどぎつい視線。思わず怯んでしまう。
議員の人はほとんどが貴族の人。横のつながりが強く、私の情報が以前と比べ、他の人たちに伝わってしまっているのだ。
私も、ここにいる人たちも理解している。
今日は私が本当に裏切り者なのかを審議する場所ではない。
私を罪人として、みせしめに裁く場なのだと。
取りあえず私は自分の席に座る。左の端っこにある席。隣にライナ。
深呼吸をして、この場の雰囲気にのまれないようにリラックス。
少し時間が経つと、始まりの時間となる。
そして議長のおじいさんが中央の檀上に出て来た。
「えー、これから議会を開始いたします」
そして今日の内容についての説明が入る。内容はもちろん──。
「本日は、ハイドと手を組んでいたことについての議題だ。センドラー君」
「はい」
私は、ごくりと唾をのんで立ち上がる。緊張しながらも、ゆっくりと歩いていく。
壇上に立つ私。席に座っている議員の人たち。眉間に皺が寄っているのがわかる。
待ち受けていたのは、怒号の嵐。
「やめちまえ強権令嬢」
「そうだそうだ!」
私に向かっていくつものヤジが飛んでくる。
完全アウェーともいえる状況。この場の雰囲気にのまれてしまいそうになる。
それでも、負けるわけにはいかない。
私は精一杯訴える。
「待ちなさいよ。喋ってもないのにそんな言葉やめてよ」
「うるせぇ!」
「うるさいのはあなたよ。ちょっと黙ってなさい」
その言葉に私はカッとなり机をたたいて言い返す。一気にヒートアップしたこの場。さらに言い争いが激しさを増す。バカだの、しゃべらせろだの、いい加減にしろだの。
そこに一人の人物が叫んできた。
「早く罪を認めろ。バカ!」
そう言い放ったのは、自分をハメようとしてきた奴の筆頭。ハーゲンだ。
こいつ、言うに事欠いて──。
ちょっとカチンと来て、大の机を思いっきり叩いて叫ぶ。
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