第13話(挿絵有り)
「ところで、12時の部屋にいる飯田さんを殺害する方法が、一つ思い当たります」
篠崎はそう言って説明を開始した。
部屋に配備されているのは、銃とメモ用紙と、長い紐が3本。そしてテープであった。各部屋と部屋の間の壁は結構広い。どのくらいかというと、5分、または5秒分の目盛りの槍が設置されていて、すくなくともその分の幅は確保されている様であった。
中央の柱から伸びる時計の針が、部屋の天井を通り過ぎる仕様により、各部屋の天井と壁には隙間が空いてある。だが部屋と部屋を仕切る目盛り分の分厚い壁によって、その隙間から銃で撃ち抜くことは不可能と思われる。
「ですが、その天井と壁の隙間はまさに、針の高さに加えて銃一丁分の高さほどある。つまり」
篠崎は具体的な方法を説明した。
まず三本の紐を用意する。一つは銃のトリガーに、もう一つは銃身全体に結びつける。そして最後の紐を使って、銃を分針か秒針に結びつける。この時、銃口は真下を向くように、さらに紐を引っ張ればほどける仕組みにしておく。
時計の針に結ばれた銃は、時計回りに部屋を移動する。針が被害者の真上に着いた時に、トリガーに結んでいた紐を引っ張って、発砲。その後、針と銃を結んでいた紐を引っ張って解いた後、銃身全体に結んでいた紐を手繰り寄せて銃を回収する。
「ただしこの方法には制限があります。針は時計回りに回っているため、被害者の右隣にある部屋からは実行が不可能です。また、部屋を一部屋以上跨いでしまうと、その間の部屋の人に銃が見つかってしまう可能性もありますし、そもそも部屋に配備している紐は、一部屋を跨げるほど長くありません。つまり……」
篠崎はある人物を見た。
「この方法は、11時の部屋である三村花音さん。あなたにしか実行できません」
篠崎の言葉に、三村は絶望しきった表情をしていた。黒髪おさげで眼鏡を掛けた、地味な女性であった。
「たしかに、彼女は女性だ。昨日の、篠崎さんが襲われた時に聞いた声が本当に女性の声だったなら、そういう点でも三村さんが怪しい」
大道が言った。飯田が死んでしまった今、残りの女性は篠崎と三村のみであった。
「じゃあ決まりだな。次はこの女を監禁するべきだ」
龍ケ崎が言った。
「で、でも! 飯田さんは監禁された状態で、にも関わらず殺されてしまったんですよ!」
三村は懸命に訴える。
「分かった。こうしよう。俺が12時の部屋に移る。そうすれば、三村さんの左隣には誰も居ない状態になる。針は時計回りに回っているのだから、これで少しは安全だ」
そう提案したのは、10時の部屋を使用していた大道であった。
挿絵『中央の部屋を介さずに殺害するトリック(1)』
https://kakuyomu.jp/users/violet_kk/news/1177354055393317668
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