第14話
三村は渋々、監禁されることに納得した。なので火道院、大海原、大道、篠崎の4人で12時の部屋の掃除をすることにした。
篠崎はスマホを構えて、念入りに現場の写真を撮った。
「それにしても、正気とは思えませんね。死体があった場所ですよ?」
掃除をしながら、大海原が大道に言った。
「そもそも篠﨑さんの言う通り本当に三村さんが犯人なら、右隣になる大道さんがやっぱり危険なんですよ」
と火道院が同調した。
「何を今更。俺らが頻繁に使用している中央の部屋だって、神楽坂さんの死体があったんだぞ。それに俺を殺したら、三村の疑いがますます高くなる。俺が死んだら、お前らは三村が犯人だと確信できる」
と大道。
「まあでも、おかげで三村さんを説得できました。ですが大道さん。もし三村さんが犯人であったら、彼女はもう詰んでいます。最後の悪あがきとして、あなたを殺す可能性もあります。念のため、ベッドに素直に横になることだけは控えて下さい」
と篠崎が釘を刺した。
「それにしても、この壁に描かれた時計の文字盤の目盛りの模様、結構便利ですね。掃除した後に動かした家具とかを、この目盛りに合わせて置くと、綺麗に並べられます」
床に飛び散った血痕を拭き取るために動かしたテーブルと椅子を並べながら、大海原が嬉しそうに言った。
「確かに。最初は不気味だったけど、結構オシャレな気がしてきたな」
と大道。
「そうだ篠崎さん。やはりあのトリックには問題点がありますよね」
そう篠崎に言ったのは火道院であった。
火道院がそんな切り出して語り出しで、件の殺害トリックの問題点を挙げた。
篠崎が説明したこの方法は、被害者がベッドに寝ていることが前提である。また、針に結んだ銃の位置と相手の急所がピッタリ重なっている必要がある。もし弾が足や腕などに当たった場合、被害者は起きて天井にある銃を見付け、すぐに逃げてしまうからだ。
しかし先ほどの説明では、銃と被害者の急所をピッタリ合わせる方法が不足している。これでは、確実性がないどころか、もし失敗したら方法を暴かれてやはり11時の部屋の者に疑いが掛かってしまう。
それを聞いた篠崎は、火道院を見た。29歳である彼は、篠崎を除く参加メンバーの中で最も若い男性である。龍ケ崎も36歳という年齢にしては若いが、それよりも若い風貌なのが火道院であった。
「その通りです。よく気がつきましたね」
篠崎はあっさり問題点を認めた。
「おいおい。それじゃあ三村さんが犯人とは限らないじゃないか」
それを聞いた大道が、篠崎に言った。
「ですが不明な点はそれだけともいえます。もし犯人が被害者の急所と銃の位置をぴったり合わせる方法を持っているとすれば、この方法で人を殺せてしまう。依然として、三村さんが犯人である可能性は高い。そしてこの方法でなくとも、中央の部屋を介さずに12時の部屋を殺すには、時計の針が使われた可能性は高いと思います。となると、時計回りの制限は必ず発生する。やはり被害者の左隣にいた三村さんが最も疑わしい」
篠崎は床に垂れていた飯田の血液を拭き取った後、皆に向いた。
「一つ言っておくことがあります。私の一番の目的は、少しでも人が死んでしまうことを阻止すること。犯人の具体的な殺害方法を特定するのが、目的ではありません」
篠﨑はそう宣った。
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