第11話

 二日目。日針が2時の部屋を指し示した朝。11時頃。


 篠崎を含む参加者全員が、12時の扉の前で立ち尽くしていた。


 ホール内には、絶望と、恐怖と、緊張感で包まれる。


 篠崎は12時の部屋に入って、それを確認した。


「死んでいます」


 ベッドに仰向けになって、穏やかな表情で目を瞑っているそれは、飯田操であった。彼女は額のあたりに、風穴が空いていた。そこから垂れた血液は、枕が全て吸い取っている。血液を充分に吸い取ったその枕は、真っ赤であった。


 死亡推定時刻は深夜の2時頃。死因はその額に開いた風穴だと思われる。篠崎はそっと死体を動かして、枕の下を調べた。するとやはり、各部屋に置いてあった消音器付きの銃の弾が発見された。


「事実確認をさせてください。昨日、22時まで彼女の部屋の前で見張っていたのは」

「俺だ」


 手を挙げたのは龍ケ崎であった。


「22時には部屋に戻りましたよね? その時、彼女は生きていましたか?」

「ああ。一応トイレに行かせておいたんだ。夜、あいつは出入り出来ないから、トイレに行きたくても行けないだろうと思ってな。それで戻ってきて部屋に入ったのを確認した後、俺は部屋に戻った」


 龍ケ崎の説明に、なるほどと篠崎は頷きながら、中央の部屋に置かれたモニターを見る。


 タッチパネル式のそれを篠崎は捜査して、昨日の朝からの録画を視聴し始めた。中央の部屋にはカメラが2台設置されている。これは中央の時計の針の柱の後ろが死角となってしまうための対策だろう。映像は二画面で映し出された。


「音は記録されていないんですね」


 映像には音が一切流れていなかった。映像は神楽坂の死体を発見する前日からの録画が倍速で表示されていく。やがて22時を過ぎてほとんどの人が部屋に入った後、龍ケ崎の供述通りの映像が映し出されていた。やがて中央の部屋には誰もいなくなった。


 そのまま映像は刻々と過ぎていって、日を跨いだ。やがて8時頃に大海原、龍ケ崎、大道がそれぞれ起きてきて、6時の廊下の方に向かった。恐らく洗顔や歯磨きを終えてきた龍ケ崎が、12時の部屋をノックする。しかし応答がない。やがて篠崎が起きてきて、色々を済ませた後に12時の部屋をノックした。この時点で11近くの時刻であり、不信に思った彼女はテーブルに置いてあった鍵を使用してドアを開けた。


 そして死体が発見された。


「おいおい、嘘だろ」


 映像を見ていた龍ケ崎が言った。


「不可能殺人ですね」


 篠崎が言った。12時の部屋に行くには、監視カメラに映っている中央の部屋からのドアでしか不可能である。日針は1時から2時を指しているので、部屋の窓は開放されていない。その上で監視カメラによると、22時以降から朝8時まで、中央の部屋を誰も行き来していない。さらに言うと、映像はテーブルの上部分も映っており、12時の鍵はカメラに映されたまま、最後に触ったのが篠崎本人であった。

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