第10話
1日目の夜。中央の部屋の柱から伸びる日針がまだ1時の部屋を指している頃。篠崎は自室にあるベッドに仰向けになって、天井を見上げていた。
結局あの後は、篠﨑たちは飯田を監禁した後に、自らの手で吊り橋を落とした。何度も篠﨑は確認を取ったが、それでも参加者たちの意思は固かった。
――カチッ……カチッ……。
遠くの方から、秒針が動く音が響く。このクロックタワーは、中央の部屋の柱から伸びるそれぞれの針が、各部屋の中にまで伸びている。篠崎の部屋は8時の部屋なので、秒針は40秒経つ毎に篠崎の部屋の天井を通り過ぎていくし、分針は40分を指す度に部屋に留まり続ける。さらに時針は8時と20時の時に一時間もその部屋に留まり続ける。
日針を除く各針は、実際のアナログ時計の針と同じ挙動であった。秒針はカチ、カチと目盛りから目盛りへ素早く動く。分針と時針は、経過時間によって徐々に動いていくようであった。時針の針がどう動くのかは未確認である。
部屋は台形の、細長い造りであった。円形のホール内の、中央から外側に掛けて長い部屋である。ベッドは隣接する各部屋を隔てる壁に沿って設置されていて、その壁にはやはり時計の文字盤の目盛りのような模様が描かれていた。
――カチッ……カチッ!
針の音が、少しだけ大きく鳴った。5分おき、つまり分針が完全に別の部屋を指し示す時に鳴る音であった。
(それにしても、あれは余計だったかな。私のこと、既に知っていたみたいだし)
篠崎はそんなことを考えていた。実はテーブルに置かれていた犯人のメッセージを読み上げる際、最後のページは篠崎が予め用意していた紙であった。
篠崎はここに来る前から ”ゲーム” というワードをずっと気に掛けていた。もしここで行われることがゲームであるなら、何らかの形でルール説明が行われるはずだ。その手段の一つとして、紙にルールを印刷して伝えるという可能性が考えられた。
だから篠崎は、それを見越して自身の都合の良い内容を印刷した紙を用意していた。それが最後の一枚である。
”追記。またこちらで、皆さんの助けとなる探偵役を用意させて頂きました。セブンアイズ6位の篠崎瀬奈さんです。彼女は皆さんの味方であり、決して危害を加えることはありません。彼女を排除することは、皆さんがフリを被ることになりますのでご注意下さい”
これは、犯人からのメッセージではなく、篠崎の用意したものであった。篠崎はこっそりと、その紙を付け加えていたのである。
理由は、自身に対する信頼と、安全を得るため。万が一自分が容疑者となってしまった場合、捜査どこではなくなってしまうし、もしかしたら誰かが錯乱して排除しに掛かるかも知れない。篠崎が最も危惧していることであった。
――カチッ……カチッ……カコンッ!
分針が別の部屋を完全に指し示す頃、いつもより奇妙な音が響いた気がした。篠崎はスマホの時刻を見る。時刻は0時5分。時計の針が一周を過ぎたことによって発生した音なのだろうと、篠崎は気に止めなかった。
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