第4話
歩世は急いで玄関に向かうと、下駄箱から上履きを取り出して履き替えた。ほとんどの生徒が外にいるので、学校内はひっそりとしている。
上履きに履き替えると、廊下を小走りで進み、階段を駆け上った。また廊下に出て少し進むと、女子が着替えの時に利用する空き教室ある。歩世はその教室の前に立った。
(大丈夫。俺は怪盗パンドラ。こういうのは得意だろ)
自分に言い聞かせる歩世。まずは周囲を見渡して人の気配がないのを確認する。誰もいないのを確認すると、次にドア越しに教室内の気配を探る。そしてそっと、ドアを開けた。
そこには普段利用している教室と同様の景色が広がっている。奇麗に整列された机と椅子。ただ違うのは、普段点いている明かりが点いていない。窓から差し込む太陽光のみで教室内は照らされている。それでいて日当たりも悪いから、いつもよりも薄暗い。各机の上には女子が学校に来る時に着ていたであろう、夏用の制服が丁寧に折り畳んで置いてある。
(篠崎のは……あれか)
歩世はその整列されている制服の内、見覚えのある体操袋を見つけた。それは間違いなく篠崎の物で、制服の上に置いてあったことから、その制服も篠崎の物であると推測できた。
歩世は篠崎の制服へ近寄った。
(……何だか、背徳感がヤバいな)
良く知っている女子、それも好きな人が着ていた制服を歩世は見つめる。白いブラウスに、赤いリボン。その下には、紺色のスカートが置いてある。どれも皺がしっかりと伸ばされていて、清潔感がある。
歩世はまずブラウスを手に取る。折り畳まれた制服は重力によって崩れた。するとふわりと、果実のような香りが漂ってきた。洗剤の香りか、もしくは篠崎が普段利用している石鹸の香りか。
ブラウスに隠されていないことを確認すると、次にスカートを手に取った。紺色のスカートは、裾の方に白いラインが入っている。
歩世はそのスカートのポケットに手を忍ばせた。やはりプレゼントは見当たらない。
制服に隠されていないことを確認した歩世は、手早く制服を元通りに折り畳んだ。普段から怪盗を行っている彼は、服がどのように折り畳まれていたのかを瞬時に記憶し、それを再現することが出来る。
――カタン、カタン…………。
廊下の方から僅かに響き渡る足音を、歩世は確かに聞き取った。
(上履きの音。つまり生徒。音が軽いから、女子の可能性が高い。響く回数が多いから、二人くらいか)
そこまで判断した歩世は、女子二名の行き先がこの教室の可能性があることも考える。であれば鉢合わせる可能性もある。
(見られたらマズいけど、仕方がない)
歩世はすぐさまベランダに出た。二階のこの高さであれば、歩世は難なく着地できる。かくして歩世は、ベランダから飛び降りて無事に着地。誰にも見られていないことを確認すると、その場を後にした。
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