第2話
入場手続きはクルーズ船に乗る前に済ましている。クルーズ船は本数と一度に運べる客の数に限りがある。そのため、例えば料金が支払えない客などを船の乗員に含めないよう、入場手続きは乗船前に済ますのだ。
歩いて数分で城付近に着いた。城は湖の中央にある陸地に立っている。こちら側にある陸地から一本の橋が、城の門まで伸びていた。三人はその橋を渡る。
「さすがファンタジーアイランド。良い眺めだな」
篠崎が言った。彼女の言う通り、日常とはかけ離れた景色が広がっていた。湖は青く煌めいている。その湖には白鳥が数羽、浮かんでいる。城の周りには草木や花が生い茂っていた。
さらに遠くには、火山のようなゴツゴツした山が見える。天高く聳える山には、絶叫マシンが落下するためのレールが引かれていた。
「ふむ。あれにも乗ってみたいのだ」
シャロはその山を見ていった。
「あれはちょっと、怖すぎるなあ」
篠崎は嫌な顔を浮かべながら言った。
「うん? 篠崎はああいうのが苦手なのか」
「得意ではないね。ちょっとぐらいなら平気だけど、あれって高さ100メートルもあるんだよ。そんな高さからの落下なんて、私には耐えられないな」
篠崎は情けなく笑った。
三人は橋を渡り切った。すぐ近くに門があって、そこを通るとアトラクションの列があった。
「優先パスですね。ではこちらの列にお並び下さい」
スタッフが三人を所定の列に案内した。
「ふむ。近くで見ると、凄い迫力だな!」
シャロは嬉しそうに言った。城に纏わり付いている竜。その赤い眼光が、アトラクションの列に並ぶ人々を睨んでいた。
「私の調べでは、19時半に城と竜のパレードが始まる。予告状に書いてあった20時とは、そのパレードのラストシーンに当たるという訳だ」
シャロは列に並びながら解説した。
「そのパレードの内容なら知っている。確かラストシーンは、竜と勇者が戦うんだ」
篠崎が言った。
「ガハハ! その通りだ。そしてその竜が、あれだよ」
シャロは城に纏わり付く竜を見て言った。
「あの竜の紅い瞳は、特別な宝石で出来ているのだ。ほら、見てみたまえ」
篠崎と歩世は、その瞳を見た。その瞳は太陽光を、星形に反射させていた。
「へえ。言われてみれば、確かに。とても綺麗だ」
篠崎は感動した様子で言った。
「しかし、結構大きいぞ。あんな大きなもの、怪盗パンドラは一体どうやって運び出す気だろう」
歩世は太々しくも、疑問を言った。あの宝石は大きいだけでなく、銃弾を跳ね返す程に硬く、重い。例えスタッフであっても、運び出すのは至難の技だろう。それを怪盗パンドラは、大勢の人間を出し抜き、誰にも邪魔をされずに運び出すというのだ。
「さてどのように盗みだすのか、見物だな」
シャロは歩世を意味深に見つめて、そしてニヤリと笑った。
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