第7話
「では時系列に沿って説明する」
シャロはそんな切り出して、説明を開始した。
まず最初の停電について。真っ暗になった現場は、最終的にスマホのディスプレイの光で薄明かるくなった。
立体投影の演出の後、盛大に窓ガラスが割れた。犯人はその混乱に乗じて銃を発砲。ガラスケースを割った。
ここまでは篠崎と同じ推理である。
「銃を使ったのは間違いない。銃特有の硝煙の匂いがプンプンしている。私は鼻が良いから、爆弾の火薬と銃弾の火薬の匂いを嗅ぎ分けられるのだ。ガハハ!」
「マジかよシャロっち! 犬みてぇ!」
「シャロっちって言うな! それに犬とは何だ犬とは!」
フン、とシャロは鼻を鳴らした。
「それでだ。何故、銃を構えていた犯人の目撃者がいないのか。この時、客のほとんどが、スマホを掲げている。犯人はこれに紛れて銃を構えていた」
スマホで照らす行為が、犯人にとって色々と都合が良い、とシャロは説明した。
室内は停電によって真っ暗であったが、スマホの明かりで獲物が確認できる程度に、薄ぼんやりと明るくなった。犯人はその明かりのおかげで、獲物を確認できた。
もしこれが、警備員が装備しているライトで照らされていた場合。警備員が装備しているライトは指向性である。これではこの後に起きるガラスが割れる演出の際に、明かりが逸れてしまう恐れがある。
かといって停電させずに照明がしっかりと点いたままでは、銃を構えたらバレバレだ。
スマホのディスプレイのライトで薄ぼんやりと照らすのが、犯人にとって都合が良かった。
「さてガラスケースを破壊すると、次に犯人は手錠に向けて発砲した」
銃弾とぶつかった手錠は、その衝撃で台座の裏側に落ちた。警備員はその状態を見て、盗まれたと誤解した。
そして最後に、パンドラらしき人物がタワーから飛び降りた。手錠はこの時回収されておらず、台座の裏に落ちたままだという。
「ちょ、ちょっと待った! それでは獲物はいつ回収されたっすか!? 台座の付近に手錠は無かった。警備員も、怪しい者が近寄った気配は無かったと言っているっす!」
織田が言った。
「ああ。つまりそういうことだよ。怪しくない者が怪しまれないタイミングで台座に近寄り、手錠を回収したのだ」
シャロは言いながら、篠崎に近寄った。そして彼女の懐に手を伸ばして、そして今度は彼女の右手を掴んだ。
「それが可能なのは一人だけだ」
――カチャリ。
鍵を掛けられたような音が響いた。
「それは君だよ。篠崎君」
篠崎の右手とシャロの左手に、タルタロスの手錠が嵌められていた。
「展示室の照明が復旧した後、最初に台座を調べたのは君だ。恐らくその時に、手錠を回収したのだろう。だから君だけしかこの犯行は出来なかったのだ」
ニヤリ、とシャロは口を歪ませた。ギロリと目を見開いて、まるで狂ったかのように目を見開いた。
「捕まえたぞ。怪盗パンドラぁあ!」
シャロの叫びが展示室内に轟いた。
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