3分

「いいですね」

 話を聞き終えた女の明るい返事に、俺は少し腹が立った。

「は? 今の話の何がいいんだよ」

「いいじゃないですか。今がどん底ならあとは這い上がるのみですし、そしてそれだけの時間もある」

「簡単に言うんじゃねえよ」

 本当に、簡単に言いやがって。

 崩すのは一瞬でも、積み上げるのには膨大な時間と体力がいる。

 もう俺にはどちらも残ってねえのによ。

「でも、この世界は滅亡しませんし、きっとなんとでもなります」

 彼女の声はやはり明るい。

「だから何なんだよ、さっきから滅亡滅亡って」

 俺の言葉に、彼女は自分の腕時計を確認する。

「……そうですね。もう残り時間もありませんし、ネタばらしといきましょうか」

 そう言って彼女は缶ジュースに口を付ける。

「ネタ?」

「ええ、そうです。でも信じてもらえるかはわかりません」

「あ、なんだそりゃ」

 さっきからセリフの意図がわからず首を捻ると「ふふ」と女は笑った。

「じゃあ、私が」

 彼女と目が合う。

 綺麗な瞳だな、と場違いなことを思った。


「私が滅亡5分前の世界からタイムリープしてきた、って言ったら信じてくれますか?」

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