ページ66『休憩時間』

「ケプナスーがひーとり、ケプナスーがふーたり、ケプナスーがさーんにん、なのです! 3人のケプナスが居たら、すぐに美味しいお料理を大量に作って、パーティの準備なんてチャチャッと済ませてやるのですのに! 」




 「無理。却下。許可できない。ケプナスが大量に増えるだけでも大変なのに、そのケプナス達がみんなで料理を作り始めるくらいなら、針の山の上で10分間寝る方がマシだよ! それと、パーティと言うより、後日談、が正しいかな」




 「前は、可哀想なケプナス様がつれさられたせいで、あまりじっくりと話すことが出来ていなかったのですからね」




 「そ、ケプナスが騙されて素直に連れていかれちゃったおかげで、やり直しだよ、全く。もう、馬鹿なんだから」






 ハプは、猛スピードでキャベツを千切りにしてボウルに入れて、置いてあった玉ねぎを切ろうとしながら言う。


 戦争が終わった時と同じように、みんなでパーティを始めようとしているチームソルビ市。今回はそこに国際魔術協力連盟、エイも一緒に。人数が多い為、セレインが本部のパーティホールを貸してくれるとの事。


 ハプは、本部の調理室で、パーティ用の料理を作っている。






 セレインは、料理人を雇って料理してもらうつもりだったらしい。しかし、ハプが「あのね、穂羽が作りたいの」と言ったことにより、全員分の食事をハプが作ることになった。


 ちなみに、ケプナスが調理室にいるのは、ケプナスも調理したかったから。もちろん、ハプは止めた。






 「連盟、とっても便利。調理室もあるし、パーティホールもあるし。国際魔術協力センターに改名したらいいのに」






 ハプは切った玉ねぎと人参を鍋で煮る。コンソメを取ってそこに入れて、ベーコンを入れる。この作業を10秒で終わらせながら、語る。


 ケプナスはその様子を、如何にも羨ましそうな目で見つめてくる。






 ◇◆◇◆◇






 「兄様も、チームの方々も、今回はありがとうございました。導き手を2人も討伐できた、これはとても大きな成果でございます」




 「お礼言いたいのはこっちだよー。元々、魔術神秘教団倒したいのは僕だしさー」




 「そんな、私の方こそ! 兄様には感謝をしているんです! 幼少の頃、初めに敵意を抱いたのは私わたくしなのでございます、だから私ら感謝を…」




 「初めに敵意を抱いたのが君だとしても、今の敵意で言うと僕の方が大きいと思うけどなー? だから実質君が僕の計画に乗ってくれたわけだよー。さ、僕の感謝を受け取ってよねー」




 「滅相もない! 私の敵意の方が大きいのでございます! 兄様は沢山役に立ってくださいました!感謝を伝えたいのです! 強制的に、受け取ってください!」




 「なら僕からも。強制的に、この感謝を…」






 2人は感謝を伝え合いたいだけのはずが、両側の遠慮により、謎の言い合いへと発展する。


 その会話を何となく聞きながら、大きなテレビで、ニュースを見ているエイ、ぺリィ、ゆぴ。






 「あーもううっさい。なんなのよ、あそこは素直にどういたしましてでも言っときなさいよ」




 「全く、よく君がそれを言えたものだねゆーか・ゆーぴぃー。そう言うのならば、君がまず素直になるべきだね」




 「2人とも、ねえねえ。戦争って、何? エイ、ニュース見てたら、まだまだ知らないことが多いんだってわかった」






 エイは2人の袖を引っ張って、画面を指さす。ゆぴは画面に目を近づけて、集中してニュースを見ようとする。






 「戦争ぉ? まーたどっかとどっかがが殺りあってるってんの?」




 「……そのようだね。しかも、ほら、拝見してご覧? 僕達が1度戦闘を交えた、あの国と来たよ。…トムガノ魔術国、だね」






 エイは2人を交互に見つめた。エイは戦争に行っていないのだから、知らないのは当然だ。






 「しかも、相手はカルタヴェルタと来た。無謀にも程ってもんがあるでしょうが。余裕で追い返されたらしいわー」




 「情報によると、トムガノは最近常にどこかの国に戦争をふっかけては攻め込んでいるようだね。相手の心内は計り知れずだね、流石の僕でも、好んで世界中に戦争を仕掛け続ける異常者の心情を知り得ることは出来ないからね」






 ニュースを見ていると、感謝の押し付けあいを終えたキャリソン兄弟が、隣から除いてきた。






 「トムガノ魔術国でございますか…近頃あの国は、連盟を脱退したいなどと言ってくるのです。連盟脱退など前代未聞なのですが…」




 「そうなの? エイはよく分からない。戦争が何なのかも分からないけど。でも、そのトムガノさんは、何かした悪い人? 」




 「人じゃないよー。国だよ、国。ま、人をまとめた場所かな。僕はそれよりさー。カルタヴェルタ王国だっけ? あそこに思いっきり攻め込むトムガノがすごいと思うよー。僕なら、無理」






 みんながガヤガヤ話していると、その楽しい雰囲気に誘われて、ケプナスが寄ってくる。






 「なんの話ししてるのです〜? 」




 「トムガノとカルタヴェルタの一方的な戦争かなー。面倒なものだよー」




 「カルタヴェルタさん、聞き覚えがあるのです! ケプナス様のライバルが現れないかどうか、ネットで『つよい まじゅつ くに』って調べたら、カルタヴェルタさんが出てきたのです! ケプナスのライバルなのです! 」




 「ケプナスが、足元にも及ばない国だよね。とても強い」






 ケプナスが輪に入ったことで、さらに会話が盛り上がる。






 「今回の追い返し方も、興味そそられるよねー。何となくで調べてみたんだけどさー。敵軍が近づいてくることが分かるや否や速攻で第2王子とその配下達が国民全員を安全な場所に避難させ、シールドで防御。誰も居ない状態の村や町は素通りさせた状態で王城まで向かわせる。そこで攻め込もうとされると国王と第1王子自らが外に出て容易く相手を圧倒。からの交渉に持ち込み、自国に有利な契約を結んだらしいんだよねー」




 「よく分からない言葉が多いのです」


 「よく分からない言葉がたくさんある」




 「でも、確かに凄いですね、シアル様。作戦を考える身としても、是非とも見習いたい所です」






 ぺリィが胸に手を当てる。ゆぴはどこから出したのか分からないナイフを右手でクルクル回しながら、目を細める。






 「あたしも。トムガノの魔術師っつったら、おそらくマジシャンペア辺りっしょ。あたしも一瞬であいつらをぶちのめせるくらい強くなりたくて仕方ないったらないの」




 「ケプナス様は、もうそれくらい強いのですがね! だから、まずはケプナス様を倒せるように…」




 「あー、それなら一瞬」






 ゆぴはナイフをケプナスの首に当たるか当たらないか分からないくらいギリギリの場所に当てる。


 ケプナスは怖がって盛大に後ろに転がって、痛いのですー、と泣き出した。






 「それよりさぁ、ほら。ハプが料理運んでるの見えるっしょ! 待ちに待ったハプのディナーじゃん! 前食べた時ちょー美味しくてさぁ、もう虜。早く食べたくて仕方ないの! 」




 「なら是非ともケプナスの料理も…! 」




 「いちいちあたしに突っかかってくんのやめなさいよ、ケプナス。それに、無理。エイとの合わせ技なんだとしても、スープでナル倒してんだからね? そんなスープ作った人の料理をはいはい飲んでやりますなんて素直に言う馬鹿は居ないって」




 「そんなぁ…」






 ゆぴはパーティホールに向かって駆け出していき、その後をケプナスがドタドタ言わせて追いかける。ぺリィはケプナスによって汚れた部屋を元に戻しながら2人について行く。


 エイがシアルの服を上目遣いで引っ張り、その甘えに気がついてシアルはエイを背負う。シアルはそのままでついて行き、セレインも並んで着いていく。

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