ページ42『魔術神秘教団』

「むむむむむっ。遊びの天才、ケプナス・スルーリー様の手にかかれば、逃げる隠れる探す追いかける!どーんなことでもちゃらんぽらん、なのです!今回は隠れ鬼で、ケプナスが鬼さんなのです!見つけ出してやるのですよピンクの髪の人!ムフフー、なのです!」


「ケプナス、もし見つけたとしてもそんなに大きな声で話してたら見つかって逃げられる。それじゃあ意味ないよ。だから、静かに探す。それで捕まえる。それだけ。」


「はいはいなのです。仕方なくなのですが、言うことを聞いてあげるのですよ中二病。全く。なんなのですか。ふーむ、こっちなのですよ中二病ぉ!わっーはっはっはなのです。さっすがケプナス様!こんなに早く場所を特定出来るとはぁ!」



ケプナスはリナの位置を直感で判断し、エイの忠告や自分の宣言を忘れて叫んだ。



「ちょっと、ケプナス。静かに。」


「だっ!そ、そうだったのです...。こ、こっちなのです。」



ケプナスはエイの手を引く。エイは怪しく思いながら着いていく。

それから突き当たりの角を曲がると、そこにはリナがいた。

エイは衝撃を喰らった表情になり、ケプナスはいかにも誇らしげな自慢げな表情になった。それからエイは後ろに隠れ、ケプナスが前に出る。

ケプナスはその場で3回ほど回り、左手を大きく振り上げてリナに向かって振り下ろす。



「ふふふふふ、ふっふっ、ふーっふっふっふ。見つけたのですよぉピンクっぽいの髪のみちびきて!残念だったのですねぇ...?この遊びの...いや、遊びと魔術と勉強と運動...いや、この全ての天才、国宝的存在のケプナススルーリー様に隠れ鬼を挑むとは!馬鹿馬鹿しいもいいところ!君はぁ、どれだけ自分に自信を持ってるのですかぁ?君はぁ、自分をどれだけすごい存在だと思ってるのですかぁ?ハッハッハ!」



ケプナスは決めポーズをいちいち決めながら、大声で叫ぶ。その様子に見ながら、ニコニコと笑ったリナは言う。



「貴方がここに来ることくらい知ってたわぁ。知ってたからこそ、ここに居るのよお。自己紹介、しなくちゃと思っちゃって。それとぉ、その言葉、そっくりそのまま返してもいーい?」



リナは手を合わせてケプナスに微笑むが、ケプナスは完全に無視してまたまた語り出す。



「ここで会ったが1億年目!我、ケプナススルーリーは!悪に染まりし魔術神秘教団の導き手、お前を討ち滅ぼす!」


「うーん、あなたにできるかしらぁ?まあ、いいわ。ならならっ。貴方にかけてみるとしましょう。貴方には、他の人には与えないヒントあげちゃおうかなぁ?」


「ヒント、なのです?」



ケプナスは目を光らせ、チャンスだと考える。手を後ろに回し、指で小さな円を作る。



「聞かせていただこうではないのですか。そのヒントとやら。この天才的頭脳をフルでぐおんぐおんさせて、お前の倒し方を見破ってやるのですよ。」


「いいわよぉ。私、今は嘘つかないわあ。まず、私の固有特権についてよぉ。」


「固有...特権?」



ケプナスは不思議に思った。聞いたことの無い単語が出てきたからだ。魔術師には、固有の魔法が使える。それは基本的に2種類ある。ランダムで産まれ持つ、『固有能力』。それから、その人の趣味や性格などで、攻撃方法などが変化する『固有魔法』。しかし、リナは『固有特権』と言った。そして、ハプと会話している時。ナルも、この言葉を口にしている。



「ええ、固有特権よぉ。初めて聞くかしらぁ?まあ、そうよねぇ。固有特権はぁ、固有能力と近い所も、固有魔法と近いところも、両方とも違う所があるのよぉ。まず、このこの固有特権って言うのはねぇ、生まれつきもってるものなのよぉ。」


「それは、固有能力なのです!」


「もうっ、固有特権のお話してるのに、急に固有能力のお話をするはずがないじゃないのっ。違うのは、それを持つことの出来る条件。あ、それと。必ずしも生まれつきでは無いってことよ。」



リナは先程自分の言ったことを完全に裏返す。ケプナスは頬を膨らませる。



「固有特権はねぇ、魔術神秘教団の導き手になる、資格のようなものなの。そして、それがを与えるのは、神様よぉ。」


「神さ...ニート・スペリクルなのです!?ま、まさか!」


「魔術神。」


「___え?」



予想外の言葉に、ケプナスは驚愕する。この世界において、『神』といえばニート・スペリクル。1番初めの魔術師であり、様々なものに魔力を与え、この世界を作り、管理している神___別名『作者』である。しかしまたもや、リナの口からはケプナスの知識を覆す言葉が発せられる。『魔術神』、綴りでも、最後にしっかりと『神』の字がある。この世界の神は『作者』であるニート・スペリクルのみである筈なのに。そもそも、魔術神とは?そんな言葉、何も耳にしたことがない。もちろんケプナスの読んだことのある子供向けの魔導書にも、魔術の歴史についてのテレビにも。更にはシアルやペリィの口からさえ聞いたことは無かった。



「魔術神、って。なんなのですか...?」


「魔術神はね、神様よ。」


「神様は、ニート・スペリクルだけなのです。他に、いるわけないのです。」


「貴方の知識が、一般の知識が。全てだとは思わないことねぇ。」


「.........魔術神は、どんなものなのです。」


「ニート・スペリクルの生み出した、神様よ。」


「なんのために、生み出したのです。 」


「この世界を、見守るため。ニート・スペリクルの代わりに、この世界を見守っておくためだけに、作られた神様。

作者スペリクルによって作られた、世界ストーリー見守よむるための、ね。 」


「ストーリー...を、読む...?」


「その辺の話はおーしまい。ついでに言っちゃうどぉ___私達魔術神秘教団の、信仰対象ね。」


「信仰対象...?」



ケプナスはまた驚愕する。リナには、驚かされてばかりだ。

その時、ケプナスははっと息を呑む。ケプナスはこの時、固有魔法『遊び』による『クイズ』を自然に発動していた。『クイズ』の効果は、単純に頭が良くなるのではなく、必死に考え、混乱した状態の時に、普段なら考えもしないような考えを浮かび上がらせる効果である。

ケプナスは考えた。『魔術神秘教団』という名を。単純に考えると、魔術の神秘を伝える教団や、魔術の神秘を見つける教団、そのように解釈する。しかし、魔術神秘教団にそのような活動は見られない。なら、なぜそのような名前なのか。ケプナスは、ケプナス達は。連盟も、この名を知っている者は全て。


___区切り方を、間違えていた。


普通の人間の考え方では、魔術/神秘/教団で区切る。しかし、そうではない。『魔術神秘教団』、その区切り方は。


魔術神/秘/教団。


『魔術神』 を信仰し

その『秘』密を守る

『教団』


___これが、魔術神秘教団。


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