ページ32『連盟長 セレインキャリソン』
「セレインちゃん、だね。セレイン・キャリソン...。ん?」
「ええ、セレイン・キャリソンでございます。セレインちゃんでもセレインさんでも連盟長でも、好きなようにお呼びください。」
ハプは話をして、彼女――セレインの名前を確認して、あることに気がついた。
『キャリソン』
彼女は、セレイン・キャリソンと名乗った。
ハプはこの名を、今までにも聞いたことがある。
そう、今ここにはいない、チームソルビ市のリーダー、シアルキャリソンだ。
苗字が同じ。これはリーダーシアルと、連盟長セレインに何らかの関係があるということ。この世界の構成から考えるに、キャリソンという苗字の家はこの世に沢山溢れるようにあるものでは無いはずだ。
なぜならキャリソン家は星五貴族。星五貴族はとても希少な存在だ。その上、星五貴族の中でもキャリソン家は、ペリィの言っていた英雄の弟子、ナルシー・ゴールドを倒しすことに協力した『アルロット・キャリソン』の子孫だ。
だからキャリソンの血筋は、キャリソンの性を持つ者は。限られているはずだ。
つまり彼女とシアルは親戚、もしくは家族関係に値する。
「キャリソン家...!?キャリソン家って凄すぎ?やばいわよこの家!チームのリーダーになることも難しいのに、連盟長とか!
てかあの英雄軍の子孫で1番活躍してんの絶対キャリソン家じゃない!」
「連盟長様ですか、まさかこのような形で会うことになろうとは。」
ハプが頭を捻って考えていると、ゆぴやペリィは自分の思ったことを口にした。
「...詳しいことをお伺いしたいのです。御三方、少し
ついてきてください。」
そう言ってセレインは背筋を伸ばし、スタスタと歩いていった。
その後ろからペリィもスタスタとついて行き、ゆぴはナイフ手を持って回しながら歩いていった。それを見たハプはいそいそと急ぎ足で後を追った。
それから本部内をかなりの時間歩き回った。連盟長の過ごす部屋にはそう簡単には行けないよう、それなりの工夫がされてあるらしい。
その間は、全員無言の状態だった。ペリィはともかく、ゆぴも無言なのは珍しい。おそらくセレインから発されるオーラのせいだろう。彼女は常に厳しい先生が出すオーラを放っているため、ケプナスでもない限りは無駄口を叩いたりできっこないのだ。
「着きました、こちらが
セレインにそう促されると、ゆぴとほわは自然に体がそさくさと動き、サッと椅子に座る。ペリィはいつも通りに、ゆっくりと腰掛けた。
それを確認すると、セレインも反対側の椅子に腰かけた。
「ではまず、そちらの質問にお答えしましょう。余程のことでは無い限り、返答はできると思われますので。...すみません、その前にお名前を。ハプ様はもうお聞きしました。スルーリー家ですので、元から知っていましたが。」
「えー、あたしはゆーか・ゆーぴぃー、よ。えっと、よろしく。」
「ペリィ・スリータ。よろしくお願いします。」
2人がセレインに自己紹介をすると、セレインが一礼した。
「えっと、聞いても、いいかな?セレイン...ちゃん。あのねあのね!さっき、ほわがゆっくりになっちゃったでしょ?あれは、セレインちゃんが、やったの?」
ハプは先程経験した、走っているけど走っていない、『スローモーション』状態のことを聞いた。するとセレインは頷き、答えた。
「ええ、その通りでございます。あれは
「時の流れを動かす...なんか、こう、すごいね!」
ハプが円満の笑みでそう言うと、セレインは目を丸くし、片手を頭に当てながら微笑し、呟いた。
「ハプ様と話していると、調子が狂いますね。
...次の質問はございますか?」
「なら、僕が。」
セレインが3人を見渡すと、ペリィが答えた。
「シアル様と、どう言った関係でしょうか。」
ペリィは目を細めて、上目遣いでセレインに聞いた。するとセレインは少し驚いたような表情で答えた。
「...彼を、知っているのでございますか。...チームソルビ市。なるほど。よくわかりました。お気になさるのは当然のことなのですから。
今の時代、『キャリソン』の性を持つ家は2家しか存在しません。
「なるほど、つまり..」
「兄弟!?」
ペリィが返事をしようとすると、隣からゆぴが口を挟んだ。
「なーんだ。夫婦かと思った。」
「ゆーかゆーぴぃー様、そのようなことは断じてございません。なぜ
ゆぴがしばらくぶりに口を開くと、セレインがすぐさま否定した。
「
「な、なるほど。言われてみればちょっと似てるかも。例えば、ほら。目とか。ちょっときっ!ってなってて、紫色でしょ?それと顔が整ってるの。びなんびじょ、ってやつ!あっ、それと。シアルは髪の毛紫でしょ?セレインちゃんも、ちょっと紫っぽい!髪はサラサラだから、髪質も似てる!それと服装!どっちも和風!」
ハプは気がついたように語ると、セレインは驚いて、笑った。
「ふふ、ありがとうございます...。」
「ところで?その従兄弟って言うのは?」
ハプが疑問を口にすると、セレインの顔が曇った。
「従兄弟の話は、したくありませんので。...次の質問は?」
「はい。あたしから。これであんたの質問の意味もなくなるわ。ケプナスどこよ。裁判がないってどういうこと?それならハプのとこに来たやつは誰よ。」
ゆぴはしっかり手を挙げて、そう言った。その途端、空気が変わった。セレインはそれを聞き、しばらく黙った。その表情は、
困惑していた。
「ケプナス様、ケプナス・スルーリー様のことでございますか?彼女とは面識はございませんが、彼女がどうかしましたか?」
ハプ、ゆぴ、ペリィはそれを聞き、驚き、一瞬前のめりになった。しかし、セレインのその表情、声色は、本気で知らないと物語っていた。
「う、そ...。これじゃあシアルの言ってたこと、全部違う...。連盟長の仕業でも、一般連盟員の反抗でもない...。そんな、こと...。」
「...ハプ様、どうかされました?」
「...牢屋って、ある?この、建物に。」
ハプは、か細い声色で尋ねた。セレインは理解が早く、すぐさま言った。
「...お連れします。ここの牢屋は檻ではなく、箱です。資格を与えた者だけが、その壁をすり抜けられる術がかけられています。貴方に資格を与えます。この地図を頼りに、行ってきてください。」
それからハプは地図の通りに進むと、そこは突き当たりの壁だった。その壁に手を当てると、手は壁の中に入っていった。ハプは目を閉じて、1歩を踏み出した。
するとそこには、真っ白な空間が広がっていた。
そこに、1人。真ん中に、人が俯いて座っていた。
それは、ケプナスではなかった。
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