ページ31『強行突破』
「妹を、助けたいんです。」
その言葉を発したハプの顔は、真剣だった。しかしそれに負けず劣らず、相手も真剣だった。
「ないものはないんです。引いてください。」
「じゃあケプナスはどこ!?ケプナスを返して!」
「知らないものは知りません、本当に知りません。」
「あいつを返しなさいよ!どこまでふざけるの!?あたしらは真剣なの!」
「...そう言われましても、」
ゆぴとハプは感情的になり、必死に訴えた。その後ろでペリィは静かに言った。
「その予定表、見せて貰うことはできないかな?」
するとゆぴとハプは一旦黙り、相手は予定表を差し出した。
するとペリィは一礼して受け取り、ペラペラとめくった。
「ゆぴ、ハプ。彼の言っていることは事実。虚偽などひとつもないね。この予定表には、ケプナスの事など何も書かれていない。」
「...っ、ペリィまで!なんでそんなこと言うの?ケプナス...。」
「アンタ、本気で言ってんの!?見せてみなさいよね!」
そう言って、ゆぴはその予定表を奪った。それから予定表をめくると、急に青ざめた。
「...嘘、」
「ゆぴ、ハプ。ここは一旦引くべきだよ。落ち着こう。
ご迷惑をお掛けしました。」
そう言いながらペリィは2人を連れて去っていった。
◇◆◇◆◇
「あーもう!うっざい!なんなのよ!意味不明よね!?確かにあいつはここで裁判するって言ったのよね!?ハプ!」
「う、うん。絶対、言ったよ。ほわ、あんなこと、忘れたりしないもん。」
「これは何を言っても通してくれそうにないね。...直接、侵入するしか無さそうだ。」
ペリィは手を顔に当てて、ゆっくりそう言った。
ペリィがその決断を出すなんて、まず有り得ない。普段なら、まずはどうしてかを考えるだろう。しかし、今は時間が無い。
だからその決断になったのだろう。
「侵入、なんてちょこちょこしたことしなくていいじゃない。もうあの門破って正面からの強行突破よ!直接中で聞き出してやるわ!」
「だ、だめだよ!破ったら器物損壊ってやつになっちゃうし、侵入は不法侵入だよ!きっと、お話すればわかってくれるよ!まずは話し合いで決めないと!」
「もし正面から入って捕まったり、数で押されたらどうしようもない。それに話し合ってる時間なんてないよ。裏口を探して最適なルートを探し、防犯カメラを壊しながら行くのがいいと思うよ。」
3人はそれぞれの意見を述べて、話し合いを始めた。最終的にペリィは引いて、ハプVSゆぴの頑固な争いが始まるが、結局ペリィが「早くできる方がいい。」ということでゆぴの強行突破案を実行することになった。
「いい?僕がせーのって言ったらゆぴが爆弾を投げてその爆弾に向かってハプが炎を投げる。それで門を爆破させ、僕が風で炎を消したら全力疾走。攻撃が飛んでき次第シールド、前にいる人は攻撃。...ここからはハプの意見だけど、跳ね除けて怪我した人は瞬時にハプが走りながらの遠距離治療。いいね?」
「もっちろんよ!あたしがみんな跳ね除けてやるわ!」
「うん!1人残さず治療する!」
「うん、その意気だよ。行くよ、せーの...っ!」
そう言うとゆぴが手に持った爆弾を持ち前の命中力で門に投げつけると、ハプが小さな炎を爆弾に向かって発射した。すると爆弾の導火線についた炎はチリチリと燃えてゆき、爆弾は爆発し、煙が上がった。
「なんだ!」「何事だ!」「門の方だ、急げ!」
奥から次々騒ぎを聞きつけたに人が出てきて、対抗しようとした。
するとペリィは本を開いて掲げると、風を吹かせ、炎を消した。
それから3人は思いっきり地面を蹴りあげて、全力疾走して行った。
「うおりゃぁぁぁぉぁまってなさいあたしの部下!」
そう言いながらゆぴはモーニングスターを振り回し、相手を蹴散らしながら前へ進んで行った。
「おい!お前!お前は早く上の人に伝えに行ってこい!」
「了解!」
「お前達!何をしに来た!」
慌てた連盟員は、焦って慌てふためいていた。
段々と人が集まってきて攻撃が飛んでくる。それをペリィが防ぐ。ゆぴは相手を攻撃する。それから切り抜けたら、ハプが致命傷となっている傷だけを治していく。
「...これでは間に合わない。ゆぴ、もっと武器を用意。ハプももう回復はいい。攻撃に専念してくれ。」
ペリィは走って、防御しながら言った。しかし、ハプには罪のない人々を傷つけるなんてことは出来ない。
「な、ならっ。ほわは、攻撃とか、したくない、からっ!ゆぴとペリィが攻撃して!ほわはフライパンで、2人に飛んできた攻撃、防ぐからっ!」
ハプはオドオドしながら、しかししっかりとした意志を込めて、ペリィにそう言った。するとペリィと、隣で武器を用意しているゆぴも頷き、攻撃態勢に入った。
それからはただ、突き進むだけだった。ゆぴがモーニングスターを振り回しながら投げナイフを至る所に投げまくり、ついでに爆弾を投げた。
ペリィは本から霧状の全体攻撃を出し、ハプは素早い動きで飛んできた攻撃をフライパンで防ぐ。
「あんた、すごいわね。」
「良い子は真似しちゃ行けません。フライパンはこんなふうに使ったら行けません!」
数分が経過した。ほとんどの人々はひき、もう奥に向かって走っていくだけだった。
「あそこのエレベーター、乗るわよ!急いで、追っ手を乗せないように!ペリィ、裁判するとこはどこ?!」
「地図を見る限り4階。猛ダッシュ。急いで。」
そう言うと3人は飛び込むようにエレベーターに乗り、ゆぴが『4』と書かれたボタンを押して、閉じるボタンを押した。
「この建物にエレベーター、か。もう慣れたよ、この世界観。」
トビラはゆっくりと閉まり、3人だけが乗ることができた。
それから4階に着くと扉が開いた。そこには沢山の人が待ち伏せしていたので、ゆぴが爆弾を投げた。その爆弾でエレベーターの紐が切れて、落ちそうになり、急いで外に出るなどの大惨事を繰り返し、もうすぐ会場に着きそうになった、その時だ。ハプはその瞬間から、走ることが出来なくなった。
隣を見ると、ペリィも、ゆぴも。否。走っていた。しかし、走っていなかった。いわば『スローモーション』の状態になった。
「...何事!?」
「僕には理解できないな、ゆぴ。」
「あたしに振られる理由ないと思う。わかんないもん。」
3人が次々に口出しすると、前方に紺色の着物を着込んだ、黒髪の女性が立っていた。
「騒ぎを聞きつけてやって来ましたが、何方でしょうか。どう言った御用件で、此方に?」
女性がそう言ってこちらに向けていた扇を閉じると、動けるようになっていた。
「...固有魔法。」
ペリィはそう、呟いた。
「珍しい固有魔法を持ってる。つまり、星四以上の貴族かな。」
「それは間違いありません。
「うん、待って。その前に、君のお名前、聞いてもいい?
あっ、ほわはね、ハプ・スルーリーって言うの。よろしくね。」
ハプは会話に待ったをかけて、自己紹介をした。すると女性は扇を仕舞うと、一礼をして、言った。
「失礼、
――以後、お見知り置きを。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます