ページ23『この頃2人は』
シアルとケピとレットが激戦を繰り広げている最中に、ゆぴはハプを抱えて遠くへ、遠くへと飛んで行った。
「────フゥ、ここまで来れば大丈夫っしょ。
はー、こいつ大丈夫なのかしら。あたし治療魔法とか使えないから...ほんとごめん。
あたしにはアンタを治すことは出来ないのよ。
ごめんね、て思ってんのよ。あたしだって助けてやりたいのに...。」
そう言って、ゆぴは抱えていたハプをできるだけ汚れていないところに寝かせた。
それからその隣に座り、目を閉じて眠っているようなハプを眺めていた。
そうして口を開いて、呟いた。
「────助けてくれて、ありがと。
アンタに救われた。」
それをいいおわって、自分の言ったことに気がついたゆぴは顔を赤くした。
「な、何言ってんのよあたしい!そーゆー変な文章は、アニメとかドラマだけでいいっつーのー!
現実世界でこーゆー事言っちゃダメなのー!
バカね、あたし!何やってんの!
これさ!超絶恥ずいんですけどぉ!
もーやだぁ!誰もいないわよね!聞いてたら承知しないから!」
ゆぴが叫ぶと、奥の草むらがガサガサ、と音を立てて、人影が近づいてきた。
「なぁぁぁっ!誰かいる!」
「驚かせたようですまないね、僕だよ。」
ゆっくりと、落ち着いたトーンの声が聞こえてきた。
ペリィだ。
「みぎゃぁーーー!アンタ何でここにいんのよォ!
戦いは?どーしたってんの!?」
ゆぴは思いっきりたちあがり、ペリィを指さして地団駄を踏みながら言った。
「あぁ、僕はあの青髪の子に流されてね。津波に呑まれてここに流れ着いたというわけだよ。」
「はぁー!?アンタそれ大丈夫なの!?津波に呑まれたのに大丈夫なの!?」
「僕だって魔術師だよ?常人以上は耐性があるものだよ。
それにね、あの子は水タイプ、僕は風タイプ。風タイプは水タイプに有利だから、僕はダメージをあまり受けずに済んだんだよ。」
ペリィはゆぴとハプの隣に腰掛け、本を取りだした。
「あんたさぁ、もしかして、聞いてた...?」
ゆぴがハプを挟んで隣に座っているペリィを目を細めて見つめながら、問いかけた。
ペリィは本のページをめくり、答えた。
「あんなに叫んでたら聞こえると思うよ。誰だって。
できるだけ叫ばないようにして欲しいな。ケピ達に居場所が見つかり、またハプを連れて逃げ回る、という状態は避けておきたいからね。」
それを聞いた途端、ゆぴは顔を真っ赤にした。
ペリィは本を読んでいて、全く気がついていない。
「き、きききき聞いてたの?はぁぁぁ?聞いてたのぉ!?最悪ッ!
あのねぇ、あたしあんなこと思ってないから!
ちょっと、気が走って言っただけ!
か、勘違いしないでよね!」
「なるほど、これが世に聞く『つんでれ』というものだね。
好意を示している相手に対し、刺々しい態度をとり、自分が相手を好いているということを悟らせないようにする態度をとる人の事、だよね?
惚れていることを誤魔化すためにね。
具体的には『勘違いしないで』や『貴方の事なんて好きではない』という言葉を好意を示した相手に発するとか...。」
ペリィはまたまたページをめくり、本を見つめながら話した。
「そんなツンデレの説明の仕方初めて聞いたわ!
まるで辞書に載ってる言葉のように説明すんのね、あんた!
ド天然かよ!
はぁ、まあいいわよ。アンタならなんも言わなさそうだし。それより、こいつ、ハプは大丈夫なの?
こいつ、まだ気絶してんの?」
「気絶?してないよ!安心して!ゆぴ、ペリィ!」
ゆぴがそう言うと、ハプが
ガバッ
と起き上がって、叫んだ。
それを見たゆぴが、両手を 上にあげて飛び上がるように立った。
「みぎゃぁぁぁぁぁぁ起きてたのぉ!?
何?聞いてたわけ!?もしかして聞いてたの?
違う、違うのよ!勘違いしないでよね!」
ゆぴはあせあせして、ハプに問いかけた。
ハプは不思議そうな顔をして、少し考えて返事をした。
「────うん、大丈夫だよ、君は充分、ほわを助けてくれてるよ。
こうやって運んでくれてなかったら、ほわは今頃殺されてたかもしれないし、ここにこうしていられるのも、ゆぴのおかげなんだよ?ふふ。
お礼を言うのなんて、こっちの方だよ。ありがとう。それと、────ごめんね?迷惑、かけちゃって。」
「な、ななななな!」
ハプが話終わると、ゆぴはとても驚いて、ショックを受けてような顔をした。
「まさかぁアンタ!始めっから!起きてたってんの!?
あたしが、ごめんって、謝ってる時からァ!?
うわ、最悪じゃん。まじ最悪。
終わった、まじ終了...。
これはやばい、あたしの人生最大の危機!
と、というか!起きてたなら初めから起きなさいよね!ふんっ!
あ、別にあんたのこと心配してる訳じゃないんだから!」
それを聞いたハプは目をぱちくりさせて、俯いて言った。
「...そっか。そうだよね。大丈夫、ほわは大丈夫だよ。ゆぴも、自分や仲間の心配で忙しいもんね。
うんっ、大丈夫!ほわの心配なんて、しなくていいよ。」
「んなっ、そーゆー意味じゃ!確かに心配してないとは言ったけど!それとこれは別で!あーもー!」
ゆぴは焦り、ハプは少し悲しそうな笑顔を浮かべてゆぴを見つめていた。
「大丈夫。わかってるよ。
まだ仲間になったばかりの人を、心配しろって言う方が無茶だもんね。
あ、ゆぴも大丈夫?」
「んぎゃー!何なのこいつ!いい子すぎる!返す余地がない!」
「...僕はなんの漫才を見せられているのかな、読書に集中したいんだけど。
2人とも無事そうだし。それとゆぴ、あんまり叫ぶなって言ったよね。
見つかると色々と厄介なんだけど。」
ペリィはさっきまで読んでいた本を隣に置き、新しい本を読みながら言った。
それを聞いて2人は、ビクッとなって整列し、ごめんなさいっ!と叫んだ。
「シアル様は頑張って戦っているからね。」
「え、シアルが?な、なら!たすけに...。」
「待って、ハプ。」
ハプがシアルの所へ行こうとしたら、ペリィが引き止めた。
「シアル様は、1人にしてあげて。
『1人で戦う、巻き込まない』というのが、シアル様からの伝言だよ。」
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