ページ16『交渉』

「住む所、土地、食事、居場所、凶器、情報...?はぁ...?それ、勝手にアンタが決めていいの...?土地とかアンタが買うの?食費も増えるのよ...?チームに関してはアンタのとこのリーダーに聞かなきゃなんなくない...?凶器だってあたしの好きなやつ買ってくれるのよね?すっごい高いやつとかでもいいの?」


ゆぴは少し笑みを浮かべ、手を前に出して広げた。ハプは表情を変えずにそれを見ていた。


「土地に関してはスルーリー家が余分に持ってる土地があるからそれをあげる。そこに好きなような家を建てればいいよ。

チームソルビ市に君の居場所を作るという点はほわが何とかする。

情報は簡単だよ。

食事に関しては、ほわの腕にかかればすぐだよ!」


「あれは?えーーっと、アンタ、何とかするって言ってるけど何するの?手立てはあるの?それってちょっと...猪突猛進過ぎない?」


「大丈夫だから。」


「あたし一応中立よ?それ以上の報酬を与えられたらあたしはそいつらになんでも情報与えんのよ?そんなやつをチームに入れるとか...あたおか?大丈夫?」


「チームに入るということは、中立じゃないよ。そうだよね?」


ハプは勝ち誇った顔をして手を差し出した。ゆぴはそのハプを探り深い目で見つめていた。


「そうだけど...!あたしが裏切らない保証とかある?アンタ馬鹿なの?脳内お花畑?大丈夫?ぜーったい頭おかしいだろ!ほんっと狂ってる!病院行きなさいよ、病院!」


ハプは黙ってゆぴを見つめていた。ゆぴは歯をギリギリしながら見ていた。


「わかった、わかったわよ、仲間になればいいんでしょ!しつこいわね、いい?これは仕方なく、だからね?し、か、た、な、く!でもチームのことに関してはアンタらのリーダー、キャリソンのやつに聞いてからじゃなきゃ駄目よ!いいわね!ということでさっさと情報を教えなさい!あいつの!」


ゆぴは顔を少し赤くしながら、ローブの人を指さしながら大声で叫んだ。


「待って、そんなに大きな声で指さしながら言ったら...。」


ハプがそういうと相手はこちらが気づいていることに気が付き、2人の方を見つめてきた。


「────待って、こっちみてる!?やばい、やばいわよ!どうすんのよ!ねぇ!スルーリー!...ほわ!」


「───え?ほわ...?なんで、ほわって...?」


「何よ、こんな大事な時に!呼び方なんてどーでもいいっしょ!?まだ違っても仲間になるんでしょ!愛称くらいあってもいいってもんよね!アンタが自分のことほわって呼んでっから、そー言ったのよ! べ、別にいいでしょ!」


ゆぴが目を逸らしてそう言った。

ハプは涙が出た。こっちの世界に来てから、ずっと「ほわ」とは呼ばれたことがない。

ゆぴが言ったのは「笹野 穂羽ほわ」のほわでは無いが、その名前は心にとても響いた。


「...うん、いいよ。全然いいの。いいんだよ。うん、いいの。...ありがとう、ゆぴ。ほわたち、仲間になるもんね...うん、ありがとう!」


それを聞いたゆぴは不思議なものを見るような表情でハプを見ていた。


「いや、礼言われるよーなことしてないと思うんだけど。ん、まあ、感謝は受け取ってあげる。

てかなんで泣いてんのよ。つくづくよくわかんねー奴。

ま、今はアイツ!あそこに立ってる黒いやつがこっちが気づいてることに気づいたわ。早く対処しなきゃなんねーっしょ。

────色々話して、感謝を伝えるのは全てが終わってからよ。」


相手にスナイパーライフルを向けて、ゆぴは言った。

ハプはその様子を呆然として見ていた。


「...ゆぴって、意外と優しい人なんだね。ふふ。」


「はぁ?...うっさいわね。これは特別なのよ!わかってんでしょうね!アンタが居なきゃ...っっっ、なんでもない!余計なこと言わせんじゃないわよ!」


ゆぴは狙いを定めて、相手に向かって弾を放った。何度も連撃して、周りにも銃を浮かせて連射した。それを見たハプはその隣に並んで、相手に向かって炎を投げつけた。


「ナイスフォロー!あたしらいー連携取れてんじゃない!?あ、アンタ炎タイプなのね。」


ゆぴは今度はナイフを投げ続けながら言った。


「炎...あ、そういえばステータスカードにそんなこと書いてた!そういえば、固有能力と固有魔法って何が違うの...?」


ハプはステータスカードを思い出し、「固有魔法」とは別にあった「固有能力」について聞いた。


「あぁ...何が違うのかあたしにもよくわかんないのよね。そういえば固有能力と固有魔法、戦闘タイプは何?アンタ。」


「ほわ?ほわは、ヒールタイプだよ。それで、固有魔法は料理。固有能力は能力合体、転換...?なんだろ、それ。」


それを聞いたゆぴはナイフを投げながら目を大きく開けてぱちくりして、こちらを見つめてきた。


「あら、能力合体とか珍しーもん持ってんのねー。──ハッ!使えるんじゃね!?能力合体!それ使えばさ、アンタの炎をあたしの銃に込めて...とか出来んじゃね?!うわ、すごいじゃん!やっぱ相性いい系?ナイスすぎる!」


「...よくわかってなかったけど、そういう使い方ができるんだね!うん、わかった!それで、どうすればいいの?」


ワクワクしながら、ハプはゆぴに聞いた。


「ん、待って。ちょっと待ってくれるとあたしは喜ぶ。...全部当たるはずなのに、なんで当たってないの!途中で弾が地面に落ちる!意味わかんないんだけど!あたし何発も打ってるわよ!今まで外れたこととかないのに!なんで!」


ゆぴは混乱しながら言った。銃を放り投げて、新たな銃を出して撃ちまくった。

しかし、その弾の全ては急激に角度を変えて地面に叩きつけられた。


「もしかして、軌道を変えれたりする魔法を使えるのかな...?あの人...。」


「それはおかしいでしょ。だって考えて?もし軌道を変えれるならさ?わざわざ地面に叩きつけなくね?あたしらの方に弾を向けてさ、あたしら攻撃する方が普通じゃね?」


「それも...そうだね。」


ハプが必死に考えて出た結論だったが、その考えは一瞬にして崩された。


「ねぇ、ほわたちさっき地面に叩きつけられたり、ゆぴや凶器を落とされたりしてたよね?もしかして、下に落とす魔法が使えるのかも!」


ハプは勝ち誇った顔で言った。

それを聞いたゆぴは、閃いたように呟いた。


「───重力魔法。」

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