ページ14『星四の根気』

「あ、そうそう、あたしのことはみんなゆぴって呼んでるから、ゆぴって言いなさい、じゃぁ、これからあたしがアンタ達を思う存分遊ばせてあげるわ!?」


そう言って彼女...ゆぴはマシンガンとスナイパーライフルを先程よりも沢山浮かせた状態で、2人のいる方向に向けて弾を撃ってきた。一見は乱射しているように見えるが、その全ては的確にハプとシアルを狙っていた。

2人は何とかで防いではいたが、防いでいなければ全ての銃弾は2人に命中していた。


「シアル...フライパンがボコボコになっちゃう!この命中率やばいよー!」


「ハプー、かえのフライパンとかないの?こっちはこっちでギリギリなんだよねー、」


ギリギリと言いながらも余裕そうだったが、シアルのシールドはもうボロボロになっていた。ハプは換えのフライパンが出せることに気がつき、フライパンで銃弾を何とか避けていた。


「シアル!フライパン貸すね!防いで!」


「はぁ、フライパンで?まぁ、ないよりはマシかぁ。」


そう言ってシアルはハプの差し出したフライパンを受け取った。

シアルはフライパンの扱いにハプよりも慣れていないため、防げないものもあったがかなり緩和されていた。


「...チッ、フライパンで防がれるとか最悪。さすが魔力を込めてるだけあるわね。これは...武器変えるしか無いみたい。」


そう言ってゆぴは浮かせていた全ての武器を消して、モーニングスターを取り出した。

体勢を1度整えると、腕を1度大きく後ろにまわし2人目掛けて鉄球をぶつけてきた。ギリギリで避けるが、通常よりも振り回すスピードが早い。扱い方が尋常ではなく、コントロールもとても正確。

魔力は一切こもっていないのに、その威力は桁違いで、1度当たるだけでも致命傷だと2人は理解した。


「ハプ、下がって。相手が悪い。君ではどうにもならない。」


「はぁ、つまんないわね?2対1であたしが勝ってこその戦闘でしょ?そしたらあたしが最強なことが認められるじゃないの、わかってないわねー。ほら、立ち上がりなさいよっ!」


そう言ってゆぴは左手にもモーニングスターを持った。


「両手...?あれを...?あの人、...シアル!危ない!」


ハプは手に持っていた包丁をシアルの前に思いっきり投げた。ギリギリの所で鉄球に包丁は当たり、少し軌道が変わったことによりシアルは避けることができた。

それを見たゆぴは嫌そうな表情を浮かべてハプを見つめた。


「はぁー、なんで?包丁で防がれるとか最悪じゃない。名誉が傷ついたわ。なるほど、殺されたかったのね?わかったわ。そのお望みに答えてあげる。とても嬉しいお願いじゃないの。いいわね、いいじゃない!殺す、殺す、殺してやるわ!殺し合いましょう、お互いの命が擦り切れて無くなるまでね!」



ゆぴの目に、赤い光が宿った。その光は殺意で、その一瞬時が止まったような禍々しい空気になった。その次に、笑った。でも、その殺意は変わらなかった。

ゆぴの周りにたくさんの銃が現れて、ナイフや剣も空中に浮いていた。右手にモーニングスターをもって、左手に大剣。追加で地面に近いところには体力の銃火器を浮かせてあり、完全な戦闘態勢に入っていた。

ゆぴは動きながらモーニングスターを振り回し、動く度に周りの銃も着いて回った。その銃も常に2人に向けて弾を放っており、下にある銃火器も撃つことをやめてこなかった。大剣を振ることもやめずに、たまに大剣をほおり投げてきた。

それほどのことを同時に行いながらも、ゆぴは平然として動いていた。


「...くっ、なんでそんなに...動けるの...!ゆーかゆーぴぃー!」


ハプはフライパンで防いだり包丁で攻撃を切り裂きながら叫んだ。


「あたしはね、魔術師としては弱いから。だからそんなにすごい魔法は使えないのよ。でもね?魔力量は普通でしょ。あたしが使ってんのは浮遊術だけ。浮遊術はかなりの初級魔法じゃん?なら消費する魔力量も少ないわけよ。そしたらずっと動いてても結構平気なのよねー。それに特技の凶器を扱うことを組み合わせれば?はい、天才。こーゆー事ができるって訳よ!」


ずっと同じ行動をしながらゆぴは言った。でもなかなか致命傷を与えることができていないのが気に食わなかったのか、大剣は消した。次に左手に爆弾を持ち、次々に投げてきた。


「ははっ!やっちゃえやっちゃえー!あー楽しい。どれだけ耐えれるかな、試してみたいわ!スルーリー家とキャリソン家、星5貴族様々の実力、見せて頂こうじゃない!」


「うぐっ!シアル!」


「大丈夫だ、ハプ、僕は...。」


シアルは笑顔を崩さなかったが、もう限界のようでかなりフラフラしていた。


「スキありね、紫の方。そんなんであたしに勝てると思ったんなら、かなぁーり大きな誤解をアンタは持ってるわよ。死になさい、あたしの凶器ちゃん達を抱き抱えて!」


そう言ってゆぴはモーニングスターの鉄球シアルに向けて振り回した。

ハプはそれに気が付き急いでシアルの方へ走っていった。

その時ハプは、スローモーションで走っているような感覚だった。ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり。

シアルも避けようとする。何とかのところでハプはシアルの前に滑り込んだ。目の前には鉄球があった。全ての動きが遅く見える。


死ぬんだ。


そう思った時、シアルがハプを投げ飛ばした。シアルは笑っていた。

そして、その鉄球はシアルに直撃した。時間の動きが戻った。


「シアルーーーーーー!!!!!」


シアルは倒れて、気絶した。ハプがいた事により少し軌道がズレて胴体真っ二つまではならなかったが、かなり傷跡は深かった。


「シアル!シアル、シアル!起きて、起きてよ!」


シアルは黙っていた。ハプは必死に回復する。


「大丈夫よ?そんなに心配しなくても。アンタが邪魔して、そいつは気絶しただけ。殺すつもりだったのにな?馬鹿ねぇ、邪魔するとか。殺す標的がアンタになったんだけど...。」


「ひっ...。」


そう言って、ゆぴはモーニングスターを振り回し、鉄球はハプの所へ向かってきた。次こそ死ぬんだと確信した時、鎖に引っ張られ、鉄球の軌道がずれた。

前を見ると、ゆーかゆーぴぃーは地上に落ちていた。

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