ページ11『激突』
ニコッとシアルは笑った。レットはしばらくシアルを見つめていた。風が吹き、木々が揺れる。
「...はぁ、教える気はねぇな。お前。チームソルビ市リーダー、...シアル・キャリソン、だっけ?」
数分その状態が続くとレットは諦めて、額を手で押激突えながら言った。シアルはそれを聞き、「懸命な判断だ」と言わんばかりに笑った。
「そうだねー、僕はシアルキャリソン。知っての通りの君の御先祖様、ピグルットマジシャンの関係者の子孫だね。ふふ。」
くすくすとシアルは口元を押さえながら笑った。シアルのその態度は余裕そうで、煽っているようにも見えた。
「...なんなんだよお前、気味が悪い!本当に...なんで笑ってんだよ、気持ち悪い!わかんねぇよ、わかんねぇけど、...お前が怖い。」
「ふふふっ、君は面白いね?僕が怖い?そんなこと言われたことないねー。そっか、怖いか。ふふ、あはは。なるほどね?うん、それで?それで僕が怖くて、何?」
シアルはその時、笑っていた。でも、本当に笑っているのかどうかは分からなかった。
「...ねぇ、シアル?戦わなくて、いいの?この子を...戦闘出来ない状態にして、チームソルビ市の仲間を助けに行くんじゃないの?ほわ...もう、頭が爆発しそうなんだけど...。」
ハプは今まで黙っていたが、いい加減に訳が分からなくなってきた為頭を抱え込みながらシアルに言った。
「あぁ、そうだったね、ハプ。その通りだ。向こうで仲間が待ってるね。...レット君?止まっていた時間を動かそうじゃないか。」
「っ、待って!シア...うぐっ!」
その言葉を言い終わろうとした次の瞬間、レットはシアルの杖で切り刻まれていた。シアルは一瞬のうちに別の場所に立っていて、レットは気絶し、倒れた。
「どういう...こと?シアル、何を...?」
「大丈夫だよー。ある程度の魔術師だよ?その子も。ちょっと切り刻んだくらいじゃ死なないから。」
「ちょっと?!こんなに血まみれになってるのに!それと、どうやって...!」
そう言ってハプは急いで倒れているレットの方へ向かって、かがみ込んで治療をした。
「どうやって...?種明かしをするショーなんて、面白くないと思わないのー?優しいね、ハプは。さぁ、仲間を助けに行こ?」
ハプは黙って立ち上がり、走って戦場の方へ行った。
走っていると、途中で地面が爆発した。
「...爆竹?!罠だ!シアル!浮遊術で!」
「そうだね。上に...うっ!」
罠に気が付き、浮遊術で上空に浮いたシアルの隣を、銃弾がかすった。
「っとと、危ないなぁ。とっさに避けたから良かったけど、死んでたかもしれないんだよ?はぁ、やめて欲しいなー。」
ハプも浮遊術で急いでシアルの方へ近づき、かすった部分を治療した。
「シアル!大丈夫?」
「んー?大丈夫だよ、ありがとうハプー。なるほど?魔力センサーが仕掛けられてたなー。あれほど正確に当ててくるとは、なかなかだね?危ない危ない。卑怯だよ。」
シアルはやれやれ、と言った感じで前に進んで行った。進んでいくにつれ銃弾が飛んできたが、シアルはシールドで防いだり交わしたりしながら進んで行った。
「うーん、罠としては十分高性能なんだけどなぁ。所詮は罠だよね。こんなに規則性があったら良けれるに決まってるよー。人間に不規則なんて作れるわけないんだからね。」
「シアル..........すごい!」
ハプはその後ろから浮かんで、着いて行った。その時のシアルは、華麗に空中を飛んで舞う、真っ白な鳥のようだった。
「...着いたね、ここが仲間のいる基地だ。」
シアルは黒くて四角い建物の上空で止まって、スタっと地上に降りた。それに続いてハプも地上に着地した。
「シアルだよ、シアルキャリソン。」
そう言ってシアルは扉を4回ノックした。
しかし、応答は返ってこなかった。変わりに返ってきたのはその建物を傷つけないで木っ端微塵にするような大爆発だった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあシアルぅぅぅぅぅぅぅぅぅほわ死んじゃうぅぅぅぅぅぅ!」
「...落ち着いてハプまだ死なない。爆発したのはこの中だ。」
シアルは腕で目の前を防ぎながら足で暴風に吹き飛ばされないように耐えていた。
ハプは体勢を低くして風からの影響を少なくして、フライパンで飛んでくるものを防いでいた。
「...はぁ、はぁ。シアル、大丈夫...?」
「僕なら平気だよ。僕より自分の心配をするべきだと思うけどね、君は。それより、中に人はいる?仲間がいたはずなんだけど...。」
そこには無傷のシアルがたっていて、体に被った砂埃をはらっていた。
「そっか、待っててね!無事かどうか見てくるから!」
「うん、ありがとー。僕はこの周囲で敵を探すねー?」
その言葉を聞いて、ハプは急いで元々建物があった場所に向かって走っていった。
「おーい!誰かー!大丈夫?生きてる?起きてるー!?」
ハプは飛び散った建物の破片を浮遊術で飛ばして避けながら、人を探した。
「っ、居ない...もう既に抜け出してるとか?それとも...ううん、絶対絶対生きてる!死んでなんか居ないもん!誰かー!」
ハプは息切れを起こしながら探し続けた。しかし破片は多く、かなり積もっているためなかなか人影は見えず、魔力反応も感知出来なかった。
「まさか...本当に...?」
ハプはまだ他のチームメイトとは面識がなかったが、死んだという可能性を考えると涙がでてきた。
「うぅ...ぐすっ。なんで...遅かったっていうの...?!嘘...。そんな...。」
そんなことをいっていると、遠くの方に人影が見えた。
「...誰...。」
涙を拭き取って、真剣な表情で問いかけた。
「そんなにぴゃーぴゃー泣かれても困るなー。ここにはだーれも居ないんだよー?」
ハプの姿を見て、軽快なステップを取りながらその人は近づいてきた。
女の子のような声だったが、幼い男の子のようにも聞こえた。
「多分きみー、ツム国の人だー!どっかーーーんってなったけど、ダイジョーブ!ちょっとだけ前にここの人達ピューってどっか行ったから!それより、けぴの罠はどーなったのー?」
青髪でロングのストレートで、左横に宝石の着いた羽のような髪飾りをつけていた。瞳は水色で宇宙のようで、くりっとした大きめの目。服装は革靴にレットのローブを灰色にしたようなものだった。胸元に十字架と宝石をつけている、幼い少年がそこにたった居た。
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