4 3年生の春、私を助けてくれた坂上純人が好きになる

 新学期になって、私は生徒会室に行き、杏にサッカー部の事情を説明した。そして、いつもの5人で結束して、喫煙の現場を抑え、高梨華を追い詰めた。高梨と1年生の3名は喫煙行為で処分を受け、サッカー部を退部した。私も翔之介の事で嫌になり、サッカー部を正式に退部して生徒会を手伝う事になった。

 しかし、この件はこれで終わりにならなかった。私が帰り道に高梨に暴行を受けたからだ。その時に助けてくれたのが、大学生の坂上純人だった。

 

 花純の兄、坂上純人は大学4年生で、妹とは違って背が高く男らしい顔つきをしていた。私はあの時の彼の颯爽とした男らしい姿に、すぐに好きになっていた。でも、花純の話によると列記とした彼女がおり、私が入り込む余地はなさそうだった。それに、翔之介に裏切られた事がトラウマになっていて、男の人が信じられなくなっていた。それでも憧れは憧れで、機会があるごとに花純の家を訪ねていた。

「真莉愛は、お兄ちゃんのことが好きなんでしょ!でも、難しいよね。」

 花純からそう言われたのは、あれから半年が経っていた時だった。

「私が力を貸そうか?お祭りの日に浴衣を着て出掛けて、私は姿を消して二人だけにしてあげる。その後は、駄目もとで告白してみたら?」

「花純がそんな事を言ってくれるとは、思わなかった。嬉しい!」

 私は、花純の手を取って喜んでいた。

 お祭りの日、私はおめかしをし、浴衣を着て出掛けた。花純が算段をしてくれた通りに事が運んだ。彼と二人切りになって、私は思い切って告白した。

「純人さんの事が、会った時から好きでした。彼女さんがいるみたいですけど、私は2番目で良いので、付き合う候補に入れてください。」

「真莉愛ちゃんの気持は気付いていたよ。今の彼女は卒業して北海道に帰るみたいで、その事でもめて別れたんだ。でも、別れてすぐに真莉愛ちゃんと付き合うというのも、節操ないよね。」

「私は、全然構わないです!その人から奪う訳でもないし、付き合って下さい。」

 私の言葉に彼の心は動いたようだが、私が高校を卒業してその気持ちが変わらなければと約束した。その事を花純に報告すると、自分の事のように喜んでくれたのでほっとした気分だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る