3 合宿中の逢引きを高梨華に見られ、翔之介の二股疑惑が発覚し別れる

 3学期が始まって、部活に行くと翔之介が近付いてきた。

「マリ、この間はごめん!今日部活が終わってから、話ができないかな?」

「そうだね、このままじゃ中途半端だね。いいよ、いつものように待ってる。」

 私は許す気になって、練習後にグランドの奥で彼を待っていた。彼は走ってやってきて、土下座をする勢いで謝罪してきた。

「ほんとに、ごめんなさい。マリを傷付けるような事を言ってしまって…。」

「謝るのはそれだけ?私の噂って何よ?翔君はそれを信じているの?」

「それは、思わず口に出てしまって、皆が言っているだけだから…。」

 何だかんだと言い訳に聞こえたが、彼の誠意が伝わって来た。


 高2の最後の春休み、サッカー部の合宿があった。2泊3日の合宿は、校内の同窓会館に宿泊する。昼間は1日中グラウンドで過ごし、他校との練習試合も組まれていた。夜は食事が終わるとミーティング、入浴で1日が終わる。マネージャーは練習のサポート、部員のユニフォームの洗濯、食事の準備と忙しかった。入浴も部員たちが入った後で、シャワーだけを浴びた。

 初日の就寝前の自由時間に、翔之介に私は呼び出された。そこは、グラウンドの奥で、桜の木で人目を避けられる所だった。

「エリ、仕事終わった?お疲れ様、俺がねぎらってあげるね!」

 彼は私の肩を抱いて、唇を重ねてきた。

「翔君、誰かに見られたらまずいよ!」という私の制止も聞かず、キスをし続けた。しかも、トレーナーの下から手を入れて、胸に触ろうとしてきた。私が嫌がって拒んでいると、誰かが近付いてきた。

「先輩!何してるんですか?合宿でこんな事をしたら、駄目ですよ!」

 声を掛けてきたのは、1年生の高梨華だった。私達は言い訳もできず、その場を跡にした。翌日の朝、顧問の先生に呼ばれて部の風紀を乱す行為だとお説教され、その日は二人とも活動停止になった。

私は深く反省して部屋にこもっていると、高梨がやって来た。そして、高梨が翔之介と付き合っているという衝撃的な事実を告げられた。しかも、冬休みに告白して、セックスをする関係だとも言っていた。私はショックで、その日は夕食も食べずに部屋にいたが、夜になって寝ている所を高梨らに襲われた。それは1年生の男子部員で、高梨の磯巾着みたいな連中が私に布団をかぶせて、いたずらしようとしてきた。大声で叫んだため被害は特になかったが、何もかもが信じられず嫌になった。


 私と高梨と二股を掛けて、彼女と関係を持っていた翔之介が許せなかった。しかも、高梨と関係を持って置きながら、私をだましていた事、合宿中に私を呼び出してキスをした事などを考えると、許されるはずはなかった。また、先生に告げ口したり、私を襲わせたり、高梨の姑息な行為も許せなかった。

 私は部活を辞めようと心に決めていた。翔之介からは、合宿が終わって電話があったが、二股の事を問い質し、そして別れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る