3 雄彦と別れたつもりの花純だが、執拗に付きまとわれる

 私は雄彦と別れたつもりでいたが、彼は何もなかったかのように付きまとってきた。一緒に帰ろうと待っているし、断ると後を付けて来るし、以前より増して執拗だった。

そんなある日、一人で帰っていると、後ろから来た自転車の男に長い髪の毛を引っ張られた。その男はそのまま立ち去ったが、私は恐くて走って家に帰った。その事があってから、杏には申し訳なかったが、帰り道を一緒に歩いてもらっていた。ある時、雄彦が私に近付いて来て言った。

「坂上さん、最近冷たいね!僕は別れたつもりないからね。明日の夜、公園で待ってるから、絶対来てね!来なければ、何するか分からないから。」

 

放課後の空教室に、いつもの5人が集まって、私の話を聞いていた。

「それはストーカーだよ!自転車の男は、見た訳ではないけど、雄彦に決まってる。しかも脅迫が含まれてるし、何とかしないと大変な目に合うよね。」

 杏が花純の話を補足しながら、皆を見廻しながら言った。

「そいつは、これまでに変な事はして来なかったの?」と真莉愛が訊いた。

「その時は気のせいかなと思っていたけど、今考えると、歩きながらお尻に手の甲が当たっていたような気がする。それが1回だけでなく、時々あった。」

「それって、親父らがやる痴漢と同じだよ。他にはどう?胸とかは…」

 芹菜が言うと、皆は真剣に聞き入っていた。

「髪の毛が綺麗だと言って、公園のベンチでは撫でていた。私の胸は小さいから、触っても仕様がないんじゃないかな。腿に触られたことはあるよ。」

櫻子は黙って訊いていたが、

「その雄彦っていう子、花純に変な事は言ってなかった?例えば、花純の男女交際の経験とか、一般的に女はどうだとか。」

 花純は少し考えていたが、思い当たる事があった。

「私が男の子と付き合った事があるかは、最初に訊かれた。その時にないと答えると、初めてかと笑っていたけど、別に変だとは思わなかったよ。だけど、1度学校の話をしている時、若い女の先生に怒られたと口惜しがっていた。さらに、その先生の事をあの女がみたいなことを言ってた。少し怖かった。」

「やばいね、そいつ。エリートにありがちな、女性への蔑視、偏見の持ち主だよ。そういう奴に限って、痴漢をしたり強姦したり、女を自分の所有物だと勘違いして、手に入れると乱暴になるんだよ。」

 櫻子の言葉に皆は同意して、雄彦が何を企んでいるかを考えた。

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