2 男子への関心が高まった櫻子は、春生を利用しようと考える
私は戸板春生の事を好きになった訳ではなく、ただ付き合えば男の子の生態あるいは性態を知る事ができ、私の興味関心を満たす事ができると思っていた。一方で、ネットの恋愛心理学や性の相談室、男子の悩みなどを検索して知識を深めていた。
部活仲間の鴫野芹菜は、バスケ部の先輩の舘岡颯翔とこの4月から付き合っていた。夏休み前の帰り道に、二人の関係が気になった私は、後を付けていった。堤防まで来ると、二人は土手に降りて行った。ばれない様にして様子をうかがっていると、先輩が芹菜の肩を抱いてキスをする所を目撃した。二人は手をつなぎ合ってしばらくそうしていたが、先輩の手が動いた。よく見えなかったが、その手は芹菜の胸の辺りで動いていた。刺激的だったが、自分がそうしてみたいという気は起らず、恋愛行動の表れとして頭の中に入れた。
夏休みになり、春生君とのデートは遊園地に行った。彼は女の子とのデートは初めてらしく、私もそうだったが、園内では距離を取って歩いていた。ジェットコースターなどの乗り物には、隣り合わせで座ったが、恋人同士がするように手をつなぐ事もなかった。それでもそれなりに、久し振りの遊園地を楽しんでいた。観覧車に乗った時には、私から隣に腰掛けた。
「春生君、楽しい?もうすぐ天辺だよ、キスするシチュエーションだね!」
「い、いや、それは…。」
「嘘だよ、冗談だからね!じゃぁ、手をつなごうか。」
私が彼の手を取ると、じっとりと湿っていた。しかも少し震えている。
「どうしたの?緊張してるの?前は髪に触ったり、胸にタッチしたり平気でしていたのに、最近はしないんだね。触りたくないの?」
「さ、さわっても良いの?」という彼の言葉を、「駄目に決まてるでしょ!」と一蹴した。彼はがっかりしていたが、チャンスとばかりに質問した。
「男の子は、女の子に何で触りたいの?触ったらどうなるの?キスしたいとか、エッチな事を考えたりするの?」
ベンチでアイスクリームを食べながら、真面目に彼の回答を聞いていた。彼は正直に、触ると興奮するし、エッチな事も考えると言っていた。ただ、キスとかエッチしたいとかには答えなかった。
夏休みが終わり、芹菜から相談を持ち掛けられた。どうやら先輩とは最後までいったらしい。非常に興味深い事ではあったが、詳しい状況まで興味本位で訊く訳もいかず、私の乏しい知識でアドバイスした。
「先輩が本当に好きなのは芹菜の体で、恋愛とは違うと思うな。これ以上付き合っても、芹菜にとって何の得にもならないよ。芹菜がそれでいいと言うなら別だけど。」
私のアドバイスは芹菜の心に響いたらしく、先輩と別れたとあとで聞いた。
春生君とは、3年生になってクラスが代わり会わなくなった。それまでは何度か会って、彼のというより、男の子の性態を知り得る事ができた。そういう対象として付き合っていたので、当然キスもしなかったし、身体にも指一本触れさせる事はなかった。
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