2 芹菜と颯翔の交際は順調で、二人はファーストキスを交わす

 それから、部活帰りに待ち合わせて、一緒に帰るようになった。時間が許す時は、帰り道の堤防の土手に座って話した。母親が心配するくらいの時間に帰宅する事もあったが、部活が大変だとごまかして、先輩とのデートを楽しんだ。

 付き合い出して3ヵ月くらいに、先輩からキスをされた。

「セリ、好きだよ!キスしてもいい?」

この頃には、セリと名前で呼ばれていた。私は、初めてでとまどっていたが、自然とうなずいていた。そして、先輩の顔が近付いてきた時には、しっかりと目を見開いていた。しかし、先輩が目を閉じて唇を付けてきたので、あわてて私も目を閉じた。初めてのキスは、水羊羹のような柔らかさで一瞬に終わっていた。終わると同時に、胸の鼓動は高鳴り始めた。先輩の顔をまともに見られる状態ではなく、真っ赤になってうつむいていた。


 中2の夏休み、部活を終わって家に帰ると、母親と見知らぬ男性が部屋にいた。母親はあわてた様子で、男性を私に紹介した。

「ママのお友達で、高野さん。歯医者の患者さん。」

 母は歯科衛生士で、近くの歯科医院に勤めている。現在37歳、私が小4の時に離婚している。離婚原因はよく知らないが、浮気か借金のような事を言っていた。母は年齢よりも大分若く見え、それに比べて高野さんは老けて見える。会社員だと言っていたが、腕の金時計を見る限り、危険な大人にしか見えない。しかも、友達というのは怪しく、私が帰って来る前に何かをしていたのは見え見えだった。私は、男にこびた母の姿を見ていられなくて、部活帰りのジャージを着たまま外に飛び出していた。

 行く当てもなく街をぶらついていると、颯翔先輩に出会った。先輩は友達と一緒だったが、私をファミレスに連れて入り、話を聞いてくれた。母親とその男の事を話し終えると、親身になって同情してくれた。

「そうか、セリはすぐに帰りたくないんだ。俺の家に来るか?」と誘われた。私は

「うん」と言って、先輩の後に付いて行った。

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