私たちの春~鴫野芹菜編~

1 中2の時、芹菜はバスケ部の先輩、舘岡颯翔と付き合う

 中学に入学して、私はバスケットボール部に入った。小さい頃からミニバスが大好きで、活躍できる場所であった。両親は離婚して、母子2人の家庭だったが、母親は私のやりたい事を応援してくれた。

バスケ部の1年生は6人で、その中の白石櫻子とは特に仲が良かった。クラスは別だったが、勉強の事や好きな男子の事などを気軽に話せる仲だった。

「櫻子は好きな男子はいないの?」

「クラスの中にいるけど、向こうは私に関心ないみたい。芹菜は?」

「私は部活の先輩が恰好いいなと思っているけど、ただのあこがれだよ。」

 櫻子は誰とは訊いてこなかったが、おそらく知っているようだった。


 中2の春、休日の部活動に参加しようと、早目に学校に行ってシュートの練習をしていた。そこにあこがれの先輩舘岡颯翔が来て、私に話し掛けてきた。

「おはよう!鴫野芹菜さんだよね。」

「おはようございます。何で私の名前を知っているんですか?」

 私の質問に「当たり前だよ、部活中によく見ていたから」と先輩は答えた。そして、シュートのアドバイスをしながら、お手本を見せてくれた。

「あまり腕に力を入れないで、膝を使うんだよ。」

先輩の指導は的確で、私は嬉しくて何度もシュートを試みていた。

 部活が終わり櫻子と校門を出ると、先輩が自転車に乗って出て来た。

「先輩、朝はありがとうございました。」

私が声を掛けると、近くに寄って来た。櫻子は察したらしく、「じゃあね」と言ってどんどん行ってしまった。私と先輩は一緒に帰る事になって、照れ臭くて会話がうまくできなかった。別れ際に先輩から、

「鴫野さん、誰か好きな人いるの?いなければ、俺と付き合ってほしい。」と告白された。私は迷う事なく返事をしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る