3 真莉愛は恨みを持った華に襲われるが、花純の兄に助けられる

 生徒会の活動は、生徒総会、文化祭の準備で忙しかった。ある日、帰りが遅くなった真莉愛が、近道である側道の暗がりを歩いていると、後ろから来た何者かに突き飛ばされた。顔を見ると一人は高梨華で、もう一人は茶髪の見知らぬ女子だった。ガタイの良い女子で、上から抑え付けられ身動きができなかった。そこを華が太股に蹴りを入れて、すごんできた。

「あんたのせいで、私の高校生活は滅茶苦茶だよ。焼を入れるから覚悟しな!」

 真莉愛は自分の危機を察知して、思い切り叫んだ。華に頬を殴られた所で、バイクが近付いてフラッシュが光ったかと思うと、男の人が駆け寄って来た。その人の怒鳴り声と同時に、二人は逃げて行った。

「大丈夫か?警察に連絡して!」とその人は真莉愛を保護しながら、もう一人の男の人に声を上げていた。

 警察が来た時には、真莉愛は落ち着いていて、気丈に事件を報告していた。病院に連れて行かれ、殴られた所は赤くはれていたが大事には至らなかった。診察室から出ると、両親が驚いた顔で待っていて、警察に被害届を出したと言っていた。真莉愛を襲った二人組は直ぐに捕まり、もう一人の人が撮った写真が証拠となり、未成年者による暴行傷害事件として処理された。華の親は示談を申し入れてきたが、真莉愛の父は断固受け入れず、二人は保護施設に送られた。当然華は退学となったが、もう一人の女子は無職少年として送致された。


 後日、事件を知った杏達4人は真莉愛を見舞った。後始末の詰めが甘かったために、真莉愛をこんな目に合わせたと言って反省し後悔していた。

「私はもう大丈夫だよ!皆ありがとう!あの時、二人の男の人が助けに来てくれなければ、どうなっていたか分からないけどね。今度、両親とお礼に行くつもりだよ。二人は大学生みたいで、バイクで通り掛かったんだって。」

 真莉愛が心の内を明かすと、花純が遠慮しながら言った。

「実はさ、あの時の大学生は、私の兄とその友だちだった。黙っててごめん!」

 5人は一堂に驚いていたが、真莉愛は殊の外感動していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る